言の笹舟 web小説レビューサイト

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NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 103

 ぐあお!

 白い虎が飛び掛かってきたとき、一番反応が早かったのはやはりナルトだった。チョウジの特大弁当箱を蹴り飛ばす――それを虎は器用に空中にくわえると、一度地面に置いて、君君と臭いをかんだり舐めてみたりしていた。
 二番目にチョウジが「ああっ!」と叫んだりしたが、それはおいといて、次に行動を起こしたのはシカマルだった。ウエストポーチから取り出した煙玉を投げ付ける。モクモクとした白い煙に取り囲まれ、大きな虎は見えなくなっていく。

「逃げるわよ! ほら、チョウジも弁当なんか拾わないで、さっさと!」

 機を逃さず、いのの掛け声がかけられる。

「ああー、まだ一口も食べてないのに~」

 食料に固執するチョウジを引きずりながら、三人と一人は駆け出した。







 そのまま、四人は三十分ほど走り続けた。
 どうやら虎は追ってこないようだった。


「……おい! そろそろペース落とさねぇと保たねぇぞ」

 そろそろ疲労の色が見えてきたシカマルの言葉に、全力疾走から小走りぐらいに速度がゆるむ。
 だが、それをきっかけに、酷使された身体が悲鳴をあげた。原始的な殺意を浴びることにより分泌されたアナドレリンの効力が消えかけているのだ。

「はぁ、はぁ、はぁ。ボク、もう歩けないよ……」

 そんなことを言っているチョウジだったが、それでも拾ってきたミカンの入った袋を手放さないあたり。実はまだまだ余裕があるのかもしれない。腰にくくりつけているとはいえ、けっこう走るのには邪魔になっていたはずなのだから。

「あー、どうしよう~。携帯篭置いてきちゃった、小遣いUPどころか減額よー」

 急に叫んだと思ったら、いのは悩みはそんなことだった。けっこう呼吸を乱しているのに、そんなことを心配する余裕があるとは、けっこう皆――顔色一つ変えていないナルトも当然含め――元気である。
 ちなみに携帯篭とは、網と針金で作れる組み立て式の篭のことである。行くときに邪魔にならないためチョウジが持たされていたのだが、昼食のとき脇に置かれ、そのまま忘れてきた。回収する暇などなかったが、いのにはくやしいらしい。
 その怒りを発散するため、きっとナルトを見据えるいの。

「ナ~ル~ト! あんたも知ってたなら、もっと早めに言いなさいよ。最初から説明してくれてたら、こんなに慌てなくて済んだじゃないー」

 まぁ、正論である。
 ナルトの説明が下手だったから、逃げるのが遅れたというのは事実だ。ナルトがいなかったら三人のうち一人や二人は今頃虎の腹の中だったりするが、それとこれとは別問題である。

「いや、水中に逃げれば安全だった……けど、言い忘れてたな」

 重要なことをさらりを喋ったナルトに、恨みのこもった視線が集中する。

「だから、そういう大事なことを忘れないでよ! はぁ、そんな顔してどっか抜けてるわねぇ」

「『釣りしねぇなら死ぬかも』ってのは、そーいうことかよ……」

「……あぁ、ボクの弁当~。トラさんに食われちゃったのかなぁー」

「悪かったな。オレも焦ってたらしい。今度は、最善を尽くす」

「もう、お願いだからね……」

 色々と思うことはあったが、謝りさえすれば水に流すのが三人のやりかただった。うじうじ責めないことはいいことである。

「それはいいとして、アレはなんなんだ? ここらへんに猛獣はでねぇと地図にあったんだかよ?」

「あれは、はぐれ王虎だ」

 シカマルがずっと疑問に思っていたことを尋ねると、予想以上に凶悪な答えがナルトから返ってきた。

「あーそりゃ、たしかにめんどくせーな」

「ああ、猫なのに可愛くないのは許せないな」

「いや……オレそんなこと言ってねーよな?」

「三毛ならともかく虎柄ではな。殴りたいところだが、いささか相手にするには分が悪い」

「まぁ、そこんとこだけわかってんならいーけどよ。あーあ……変なやつと知りあっちまったなぁ」

 嘆くシカマルだったが、顔が笑っている。
 とまぁ、妙な知識だけは長けている二人では「王虎」の一言だけで通じ合っていたのだが、普通のアカデミー生にはさっぱりなわけで。

「だからー、どういうことよ? そこ、二人だけで会話すんじゃないわよ――私たちにも説明しなさいよぉ」

『…………』

 もう二人にしては終わった事柄の説明を求められ、互いに眼と眼を見合わせると、肩を落として溜め息をついた。なぜかぴったりと動作が同期しているだけに、こうも「やれやれ」とやられると神経を逆撫でする。

「おいおい、地元のことだろ」

「一般常識だな」

「そんなんだから、サクラに筆記じゃ負けんだよなー」

「まぁ」

『勉強不足だ(な)(よなぁー)』

 ついには語尾以外をハモらせる二人に、いののこめかみがひくひくと痙攣した。

「シカマル……ナルト……あんたたち、いい加減にしないと――毒、よ」

『オレが悪かった』

 限りなくマジな気配を感じとり、シンクロさせて謝る二人だった。


「木ノ葉に生息する巨大虎のことは、立ち入り禁止地区を学んだときに説明受けたな?」

 とりあえずナルトが説明しだす。

「まーね、覚えてるわよ。あのウンナンメートルもあるって――でも、そんなの子供脅かすためのお伽話でしょー?」

 いのとチョウジも習ったことはあるが、あまり本気にしてなかった、

「いや、実在する。しかし、あの虎はそれよりかなり小柄なのに、その巨大虎を打ち負かすという。そのことから、虎の王者、つまり王虎と呼ばれている。天然の種としてのスペックは猫族最高だろうな。身体能力だけなら上忍に匹敵する」

「虎ってのは短距離走専門なもんだから、逃げきってしまえばいーんだけどな……王虎だとどこまでも追い掛けてきやがる。ったく、めんどくせーことになりやがった」

 シカマルの補足説明に、嫌なことを思いついたいのが言葉を詰まらせる。

「じゃあ、もしかすると……」

「ああ、まだ狙われているかもしれない。ほかの獲物を見つけないかぎり、追ってくるだろうな」

「いちおう煙玉にゃ鼻を麻痺させる成分も混ざってるけど、とっくに効き目は切れてるな」

「…………」

 次々と明かされる最悪な条件に、いのは絶句した。王虎がどうのより、まだ狙われているかもしれないということを解っていながら気楽な二人の態度に……。
 ちなみにチョウジはミカンを食べていた。
 呑気といえば呑気である。

「まぁ、そういうわけだ。だりぃけど、また走るぞ」

 シカマルの意見に従って、また四人は山道を駆け足になった。


 不意に、ナルトが小枝を踏み潰すと立ち止まった。

「ここで、お別れだ。……あとは、まっすぐ行けばいい」

 三人は迷いきってしまっていたため、ナルトに案内してもらっていたのだが、まだ見知った道に出てないというのに放り出されそうになっていた。

「あと十分もかからない。王虎とて、人里には近付かないから大丈夫だ」

 と、それだけ言い残すと別の方向にナルトは歩きだした。

「……これで、いーのかよ?」

「そうよ、この道で合ってるんでしょーね?」

 シカマルといのが確かめる。

「ん、問題ない。しかし――」

 言葉を区切ったナルトは疲労が見え隠れする三人を見回して、

「もう疲れているのか? 忍者を目指してるにしては情けない――鍛錬が足りないな。もっと精進しろ」

「うっさいわねー」

「はぁ、はぁ。こんなに走ったのに息切れしてないナルト君のほうが変なんだよぉ」

「ったく、わかったよ。精進とやらしてやろうじゃねーか」

「あら、あんたがヤル気になるなんて珍しいわねー。やっぱ、こんなチビに負けてるとあっちゃ男のプライドやらが刺激されるわけ?」

「いいだろうが、どうでもよ。採れなかったんだ、もう帰るぞ」

 シカマルは背を向けて歩きだしたが、疲れているのか、その顔は苦しそうで。

「さくさく帰るわよー、ナルトも道案内ありがとねー」

「また今度どっかで遊ぼうねー」

「じゃあな、ナルト……またな」

 こうして三人は別れを告げ、立ち去って。

「…………またな、か」

 それを見つめていたナルトだったが、ややして勢い良く走りだした。


 一方、シカマルも急いで斜面を駆け下りていた。

「どうしたのよー、シカマル。そんなに虎が恐いの? 大丈夫だってナルトも言ってたじゃない」

「ねぇ、待ってよ、ねぇったら。そんなにボク速く走れないよー」

 ついていけないいのとチョウジが呼び掛けるが、シカマルは黙ったまま、とにかく足を動かす。

「どうしたのよ、シカマル。あんた、変よ……?」

「いつも帰りなんか、だらだらって歩くのがシカマルなのに……」

 少しずつ、疑惑が深まる。

「……いつもは王虎なんかいねーからな」

 ぽつりと、シカマルが呟く。

「だから、虎は撒けたじゃないの? もう追ってこない――」

「ああ、追ってこないよな。そのためにナルトは行ったんだからよ」

 いのの言葉を遮って、シカマル。

「ちょっと、それ!?」

「ナルト君、自分ちに帰ったんじゃないの!?」

 静かにシカマルは喋りだす。

「仕方ねぇだろ。あいつしか、生き延びれる可能性あるやつはいねーんだからよ。オレたちにできることは早く報告して、忍者を連れて戻ってくることだけだ」

「シカマル、あんた……わかっていてナルトを行かせたわけ!? ナルトと友達になったんじゃなかったの!?」

 バン!

 激突音。
 拳が、木の幹に減り込んでいた。つっ、と血が腕を伝う。

「できることなんか、今のオレたち程度にはねんだよ!! あいつはな、はっきり足手纏いだって言ったんだ!」

 殴り付けたまま、シカマルは叫ぶ。

「オレたちを逃がすのに、あいつは……それなのに、なんて言えばいいんだよ! どんな言葉をかければいい……死ぬほどやばい囮になりにいったナルトによっ!!」

 血を吐くような慟哭が、そこにあった。




 
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