言の笹舟 web小説レビューサイト

 ここでは私の趣味嗜好を基準にネット小説をご紹介させてもらってます。
人気小説・ランキング上位のもの・捜索依頼されているものなどを読んで、気に入ったもののみレビューします。
2013年はこのブログだけでなくやる夫スレでも頑張っていきますよー!



マイスタイル・オンライン 3 ≪風:体術≫ってどういうもの?



 どうにかこうにか想定とは違った組み合わせになってしまったマテリアルを受け入れた。
 あとは精神を切り替えるだけだ。

 しかし、≪風:体術≫っていったいどういう効果になるのだろうか?
 まったく予想がつかないというのも困ってしまう。
 ここはちょっと発想を変換して、まずは属性と武器という大分類から考えてみることにしようか。
 そう認識することで、攻略サイトに記されていたβ版の有名プレイヤーの戦闘スタイルに当てはまるものがあることを思い出した。








 上空に無数の氷の剣を生成してそれをばらまくという広範囲攻撃魔法『氷雨の剣群(ひさめのけんぐん)』を十八番としていたトッププレイヤーの一人、ブルーヘアだ。微妙なネーミングセンスとは裏腹に、重力を味方につけている範囲攻撃をしのぐことは困難だったそうで、どうにか接近したって暗器のように掌から飛び出てくる氷の短剣に仕留められ、凍結の状態異常に陥ることになるのだとか。
 そのブルーヘアの主軸となっているマテリアルの構成は≪氷:剣≫にさらにいろいろとサブマテリアルをくっつけたものだったらしい。

 俺の≪風:体術≫とブルーヘアの≪氷:剣≫はタイプ違いだ。
 彼の"氷の剣"というスタイルを自分に変換しなおしてみると"風の体術"……"風の拳"といったところか。
 こうなってくるとだいぶイメージしやすくなるな。
 圧縮した空気の塊でぶんなぐる攻撃魔法あたりが初歩ってことになりそうだ。
 けど――それだけじゃつまらない。
 オリジナルスキルはSP(スキルポイント)の数しか作れなくて、SPは初期値の3と偶数のレベルになったときに貰える1SP以外の入手手段はウルトラレアらしいから、風のボールをぶつけるだけの芸のない技に費やすのはもったいない。もっと、レベルが上がっていったあとにも使えるような……「基礎にして奥義(キリッ」と言ってのけられるのがいい。
 さーてと、どうしたものか?
 やっぱ≪体術:風≫方面からのスキルとも相性を考慮しといたほうが美味しいかな。
 生命力と精神力の消費のバランスがいいものだとなおさらいい。

 ただ、現状最大のネックになっているのは、いわゆる「魔法剣士」のスタイルになってしまっていることだ。
 戦士でもなく魔法使いでもないという中途半端な状態というのは火力不足に繋がるのでこの手のゲームではあまり好まれない。
 だから、今後のマテリアルの取得によって「自分の武器への属性付与など補助魔法を覚えた熟練の戦士」を目指すのか「万が一の護身くらいはできる手練れの魔法使い」を目指すかっていうことになってくる。最初想定したのは前者なのだから迷わずにそちらへの道を選択すればいいのだけど、どうも、なにかがひっかかる。
 俺の中のなにかがもっと強くなれるスタイルがあるとがなりたてているような……

「あれか、次世代の勘っていうやつか」

 VR技術の発達とともにオカルト話のように広まっていった噂に「次世代の勘」というものがある。
 勘というのは、経験則や記憶の連鎖反応など、無意識のうちに脳が計算した結果のささやきだと言われている。起きながら夢をみてシミュレーションしたようなものだ。はっきりとは思い出せないくらいのあやふやな記憶やささいな五感の訴えなどを統合的に判断してのことなので直感というのは侮ることができない。ただし、直感と自分に都合のいい思い込みを区別できる人間じゃないと恐ろしいことになってしまうそうだが。
 次世代の勘というのは、この脳の無意識の計算に電脳が使われているケースだと言われている。
 ネットワークにアクセスすることで複雑な試算を代行させたり、辞書機能を参考したり。
 そうすることによって人間の枠を超えた閃きがごくまれにあるという現象が「次世代の勘」だと呼ばれている。

 さっきセバスチャンにマテリアルをもらったことで、俺はこのゲームの中で新しい権限を手に入れたことになる――その権限はどういうものなのかマテリアルには説明がついていないので俺にはよくわかっていないけど、無意識レベルでは、なにかわかってしまっているのかもしれない。これまでにVRゲームをやってきたなかではけっこうそういうことはあった。
 初見の武器を手にしたとき、まだ鑑定していないというのに「これは使える」や「カッコいいけど飾り物か」といった感想が思い浮かぶことがあった。
 触れた瞬間妙に嫌な予感がして投げ捨てたこともあった。別のプレイヤーが鑑定して「こんないい性能なのにもったいない。いらないなら俺が貰っていくよ?」と持ち帰っていったけど、実はそれは隠しステータスがデメリットだらけだったことが後日判明、なんていうことすらあった。そんなもんだから上級のプレイヤーほど勘というものを大事にしている。

 その「次世代の勘」は、体術や剣のサポートに魔法を使うだけではもったいない、というものっぽい。
 オリジナルスキルの手応えによるけど、ある程度は物理攻撃と魔法攻撃の両立を考えてみるのもよさそうに思えた。


 と、いうことをセバスチャンの説明を聞き流しながら俺は考えていた。


 セバスチャンの話していることは、承諾書みたいなものであとで「こんなこと説明されていない。訴えてやる」という裁判沙汰になったときに有利にするための確認ごとみたいなもので、ほかのゲームでのやつとほぼ共通している。とにかく退屈極まりない時間ではあるものの、俺は、これから始まるゲームについていろいろと頭を張り巡らせるこの瞬間が好きだった。
 学園祭ははじめるまでの準備のほうが楽しいようなものなのかもしれない。




 
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