言の笹舟 web小説レビューサイト

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NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 004

「――見事だ」

 時間の無駄だな。
 白々しい賛辞を聞き流しながら、彼はそんなことを考えていた。
 見慣れた教室には、四人の人影があった。卒業試験を受けたばかりの受験生たる彼、試験官が二人、なぜかいるアカデミーのお偉いさん――役職と名は忘れた――と、本来より邪魔者が一人が多い。
 先生方に囲まれているのは彼は、少年だった。白い袖なしジャンパーと黒いハーフパンツを着ている。その露出度の高い服からはしなやかに鍛え抜かれた筋肉がのぞき、とくに筋肉質というわけではないが力強さを感じさせる。余分な筋肉をつけず、質を高めることに専念した鍛練をしてきたのだろう実戦的な体躯だ。

「いやいや、本気で感服したよ」

「この教室を埋め尽くすほど、分身するとは」

「さすが、三代目火影様の再来とうたわれた天才」

「我々に教えることなどなかったかもしれんな」

 延々とエンドレスに繰り返す言葉を断ち切るように、

「それで」

 鋭く、彼の声が割り込んだ。






「どうなんですか。オレが聞きたいのは試験の合否だけです」

 氷のような眼光で睨まれて、ようやく二人は押し黙った。
 彼は、唯一おべっかに参加しなかった試験官のイルカに顔を向けた。この中で一番信頼されるという栄誉を受けたイルカは、彼に黙って木ノ葉マークつきの額当てを巻いた。

「合格だ、日向ネジ。卒業……おめでとう」

 それだけ聞くと、にこりともせず彼は退室した。


 ……くだらない。


 孤高の天才。
 そう彼を呼ぶ者はいる。
 下忍最強の男。
 そう彼を呼ぶようになる者もいるだろう。
 だけど。
 そう彼を呼ぶ者は認めたくないだけだ。


 彼に黒星があることを。


 ……勝敗の定められた勝負があると、オレは思い知らされた。
 心の底から、負けを認めさせられた。何度挑もうと、どれだけ鍛えようと、勝つことはできない運命にあるのだと悟ったのに。


 ……そいつが落第なんて、認められるか!


 ふざけるな。
 運命という名の流れで、なぜ留まる!
 まだ逆らうというのなら、嗤って、あとは忘れられる。
 なのに。
 足を止めてどうする!?
 認めない。
 オレに勝っておきながら。
 そんな生き方をするというならば。
 首に縄を括り付けてでも、無理矢理歩かさせてやる!
 だから。
 ……まずは見つける! 白眼!!




 忍者学校、通称アカデミーには裏門というものがある。木ノ葉の里にある岩壁――火影の顔岩がある――方面に向かってあり、いつも寂れていて使用者は皆無に近いが、閉鎖されているわけではない。
 その皆無といいきれない原因が、アカデミーの裏口から歩みでてきた。一人で、黙々と裏門に近付いていく。

「ん。誰だ?」

 不意に、柱の影に隠れていたのか、少年が姿を現した。

「待たせるな、うずまきナルト」

 ……いや、約束もしてないのに文句言うな。
 そんなナルトの心境など気にすることなく、少年は無意味に偉そうだった。
 なぜか不機嫌そうだ、とわかったぐらいでナルトは少年のことを知らない。無視しようかと思案するが、もっとこじれそうだから素直に尋ねた。

「で。おまえ、誰だ?」

 ピシッ!
 瞬間、少年の目のあたりに血管が浮いたようだったけど、なんだろう?

「――ふっ……」

 やや間を置いて少年は小さな笑いを漏らした。

「とぼけるな。忘れたとはいわせない……」

「覚えることが必要だ、忘れるには。悪いが――興味ないことは記憶しない主義だ」

 悪怯れることなくナルトはきっぱり言い放った。
 これは本当のことだ。
 色々と、嫌なことが多い人生を歩んできたナルトは忘却回路が発達している。そのため、常人ならば覚えて当然のことでも――必要と感じさえしなければ――三歩歩いたときには忘れているという鳥頭になってしまっているのだ。
 とくに人間関係の記憶力など、最悪の一言に尽きる。
 そんな事情、少年――ネジが知るわけがなくて。
 思わず、拳を開いて殴りかかってしまうが。
 ナルトは、表情を変えずにすっと身体を沈め、そのまま手を掴み取り、背負うように投げ飛ばす。身長差が有利に働き、あっけなくネジは宙を飛んだ。
 そのままネジが突っ込んできたのに上乗せされた勢いで、ネジは地面に叩きつけられる。
 それだけのことをしておきながら、ナルトは、ネジを放置したまま、

「これで、お別れだ」

 とだけ言い捨て、ナルトは立ち去ろうとする。
 てきとうに綺麗にまとめ、さっさと帰りたいという本心が見え見えだった。
 ――しかし。

「ま、待て!」

 ふらふらと、つらそうにしながらもネジは立ち上がり、声だけは元気にナルトを呼び止めた。
 ナルトにとっては残念なことに、ネジはしぶとかったらしい。


「だから、まず用があるなら名乗れ」

 自分が投げ飛ばした(元)クラスメイトに向かって、当然のようにナルトは自己紹介を要求した。それも、背を向けたまま。

「日向ネジだ。なぜキサマは下忍にならなかった? 答えろ……」

 さすがにもう殴りかかる余力はないから、ネジは名を告げた。そして、さらに余計なことをいわれるまえに聞きたかったことを問い詰める。

「…………」

「なぜだ、なぜ……このキサマの実力があれば受かって当然の試験だったはずだ! 力あるものが忍になる、それが運命だ……なのに流れのなかキサマは留まった! なぜだ!?」

「質問は、それだけか? くだらない」

 つまらなそうに、ナルトは答えていく。

「忍術を、オレは使えない。だから試験に落ちた――それだけのことだ。最低限の忍術を習得するまではアカデミーに居る」

 それだけ言い、ナルトは歩きだした。
 が。
 ネジはその背中に言葉を投げ付けた。

「恐いのか?」

 歩みが、止まる。

「オレに勝てるだけの力がありながら、まだ恐いというのなら……キサマは忍には向いていない。もう忍者学校に通う必要はない――忍者をやめろ!!」




「岩を砕いた衝撃により、魚は動かなくなる」

 唐突に、ナルトは振り向くと喋りだした。

 倒れそうなネジは、それでも少年の顔を見上げた。真意を探ろうと目をこらすが、ナルトの鉄面皮は揺らがなかった。なにを、言おうとしているのだろうか?

「そういった獲り方があると、聞いたことはある」

「さっき、チャクラを投げの衝撃に乗せて浸透させた。それで、おまえは動かなくなる――はずだった。だが、面倒なことに動いている」

「その類の攻撃には慣れているぞ、オレは。〈日向流柔拳法〉の鍛練でな!」

 体術に関する抜群のセンスを持っているネジは、投げられるとわかると自分から跳んでいた。受け身により衝撃を殺し、なおかつチャクラを放出することによりチャクラを相殺する。そうすれば、動けなくなるほどのダメージを受けることはない。
 それは言うだけなら簡単なことだが、とても難しいことである。
 天才と評されるネジでさえ、物心ついたときから似た攻撃を得手にする柔拳を叩き込まれていたから、どうにか立ち上がれたのだ。これが、もし他流の忍者だったら――上忍とて地に這ったままのはずだ。

「人の事情を知らずに、勝手なことをほざくな」

「なら……忍者になれ!」

 即、ネジは前言を撤回してみせた。
 憮然とした表情をしているナルトを見据え、さらに言葉を続ける。

「四時から、ロック・リーが特別試験を受ける」

「…………」

「そこにキサマを連れていく。先生方には、オレが文句を言わせない!」

 ナルトを睨み付けたまま、ネジは宣言した。
 虚無のみ映す瞳を見据えたまま、ふらつきながらも、力強く、ナルトの手を掴む。そのまま引っ張っていこうとするが、

「断る」

 たやすく振り払われた。
 ネジは諦めず、再び向き合うと告げる。

「キサマの意志は認められない」

 当たり前のことのように、ネジは断言した。冗談を言うような場面でも面でもないから、もしかすると本気でそう思っているのかもしれない。どうしてナルトに固執するかはわからないが、そうとうネジが頑固なのは明白だ。

「わかった」

「なら、ついてこい」

「いや――わかったのは、おまえの扱い方だ」

 疑問符が、ネジの頭に浮かぶ。
 言葉の意味がわからず、ナルトが続けるのを待ち受ける。
 しばらくして、ナルトは口を開いた。


「おまえ、うざい」


 あまりの暴言に、ネジは一瞬思考を止めた。それは、僅か一瞬だった。別段、落胆したわけではなく、ちょっと驚いたというだけだった。
 だが、ネジが気がついたときには、目の前にナルトがいた。そして、握り締めた拳をネジの鳩尾に突き立てている。
 ――殴られた?
 ゆっくりと倒れながらも、ネジは事態を把握できていないのか、惚けたように視線が定まっていない。
 ネシが膝をついたとき、ナルトが耳元でささやいた。

「力に屈する――それが、おまえの運命だ」

 ……違う!
 そう思って叫ぼうとしたが、言葉は形にならず、力を持たなかった。否定できぬまま、視界はブラックアウトし、廊下の冷たさを感じながらネジは気絶した。
 己の運命論に疑惑を抱えながら――。


 倒れたネジを見下ろしながら、ナルトは悩んでいた。

「やっぱ、面倒」

 最初は、動けなくするだけの攻撃だった。けれど二度目は、一晩は目を覚まさないぐらい容赦なく殴った。
 鬱陶しいから。
 というのもナルトの本心だったが、力ずくでくるなら力にて、運命を語るなら呪いにて、対抗するのが一番だと判断したための行動だった。
 これだけすれば――もうアカデミーで会うことないし――わざわざ訪ねてくるような心境にはなれないだろう。
 残った問題点は一つ、気絶したネジの扱いである。
 このまま放置しておくのは問題かもしれないが、身長のあるネジを運ぶのも面倒だ。
 ――どうするべきか?
 黙考するが、すぐにナルトはうつむいていた顔をあげた。

「まぁ、いいか」

 それだけ言い残すと、ネジを置き去りに帰ろうとする。
 そう決めた理由は、


「馬鹿だから平気っぽい」


 という曖昧なものだったらしい。




 立ちふさがったネジの印象が、ナルトの中でどう変動したかは狐のみが知る。
 だが、この日。
 ナルトが日向という存在を認識したことで。
 もし運命とやらがあるとすれば。
 これが分岐点になったことは、間違いなかった。




 
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