言の笹舟 web小説レビューサイト

 ここでは私の趣味嗜好を基準にネット小説をご紹介させてもらってます。
人気小説・ランキング上位のもの・捜索依頼されているものなどを読んで、気に入ったもののみレビューします。
2013年はこのブログだけでなくやる夫スレでも頑張っていきますよー!



NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 003

 斑目瓜坊という品種のイノシシは、木ノ葉隠れの里付近だけに生息している。
 かつて忍豚を作ろうと品種改良されたが、思いの外成果のなかったイノシシが野に放され、それが野性化したあげく交配を繰り返した結果生まれた品種だという。
 その名の由来は、イノシシの子には背中に瓜の縞に似た斑紋があるものだが、それを残したまま大きくなることと、それとは別に牛のような濃淡が模様があることだ。ほかに特記することといえば、珍しいために多少高額で毛皮が取り引きされることだろうが――ああ忘れていた、品種改良で夜目がきくようになったために夜行性になったことは特記に値する。
 まぁ、そんなことはどうでもいいのだが。
 ナルトにとっては――


 食えるかどうか。


 ――大事なのはそれだけだ。






 それは、斑目瓜坊には不幸なことだった。
 この湖のふちにて水を飲もうとしてしまったのだから――憎むなら、危険を察知できなかった己の本能を。場所が、日が、時間帯が、相手が悪かった。
 自然界では弱肉強食なのだから。
 いや、なにがあったかというと、ただの狩り。
 斑目瓜坊が水に口をつけた瞬間、湖面から突き出されたのは人の腕。
 それは万力のような怪力により顔を鷲掴みにすると、そのまま力任せに湖に引きずり込む。ぷぎぃーっ、と響く悲鳴。毛が散乱する湖面。ややして、自分より三倍は体重ありそうな斑目瓜坊を背負って陸地に這いあがるナルト。
 それ、人の狩り方か?
 疑問はさておき、そんな行動が面白くない者もいるわけで。

「……それは、人に心配させときながらすることかの? 宿主よ」

 不機嫌な――不機嫌極まりない声が、ナルトの背後で鳴り響いた。
 そこに、天女のイメージから一転して修羅となったタマモがいた。鬼の金棒のごとく、紅の飾りがある鉄扇を握り締めている。その迫力に、騒ぎを聞き付けやってきた獣は逃げ出し、眠っていた鳥の群れはバダバタと飛び去った。

「…………」

 ナルトは、無言。
 黙ったまま、淡々とクナイで毛を切り取っていく。

「……宿主よ、弁明はなしか?」

「…………」

「……儂とて、心配したというのに呑気な――」

「…………」

「むっ、まさか怒っとるのか? あの程度を気にするとは、男らしく――」

「…………」

「いい加減に――」

「…………」

「う~」

「…………」

「あー、間がもたぬ……とにかく、なんか喋らんかっ!」

 痺れをきらしたタマモが掴み掛かろうとしたとき、ようやくナルトが振り向いた。その顔を見た瞬間、タマモは喋れなかった理由を知った――が、素直に受け入れられない。言葉を失うような光景があった。
 怒気を抜くように、深く、長く、タマモは深呼吸を繰り返す。
 信じられない、という目をしたまま。
 ようやくの努力で呼吸を整え、己を鼓舞するようにバシッと鉄扇を打ち鳴らし、そうやってようやくナルトに怒鳴り付けれた。

「魚なんぞくわえておるな!」

「(ふぅ、やれやれ)」

「なんじゃ、そのリアクションは!」

「(ウルウル)」

「奪わぬから、泣きそうになるな! はぁはぁ、はー。さっきから面白くないから、もう突っ込まぬぞ……」

 力なく、タマモはうなだれた。
 そこに最強の妖魔たる威厳など欠片もなく、美貌があるだけに虚しかった。それだけやってようやく気が晴れたのか、ナルトは魚を手に移し、近くにあった枝から大きめの葉をむしりとる。
 絶妙な力加減でくわえられていたのか、葉っぱの皿に置かれた魚はピチピチと跳ねたりして。その横に、まずは一匹、そうやってズボンのポケットから取り出した魚を並べていく。

「宿主よ、アレからずっと潜っていたのか?」

「ああ。身の危険を感じたから」

 ちらりと皮肉りながら、ナルトが答える。鉄扇でドツかれたおでこには、大きなタンコブができている。それは脳にはダメージがないということだが、痛々しいし、綺麗な金色の前髪がチリチリと焦げていたりもする。被害は甚大だ。
 ちょっと落ち込みながら、小さめの三匹目と四匹目を置く。

「そんなに人の子は潜っておられるものなのか?」

「普通は、無理」

 即答しながら、大きめの五匹目を。

「なら――」

「九尾の器だから」

 銀色の六~八匹目、これはバター焼きにするとうまい。

「むぅ、それ、問答無用の説得力じゃのう」

「二十九分が限界」

 で、この刺身にできる淡泊な味わいな九匹目で終わり。

「なんじゃ? その半端な時間は」

「さて、肉切るか」

 タマモの問いなど無視して、ナルトは血抜きをはじめたりして。
 その後、山積みになった魚にタマモが驚いたりしたが、どうでもよく。
 明日の三食分を残しつつも、満足のいく夜食になったらしい。


 こうして、二人は朝日を迎えるまで語り合ったという。




 で、終われれば楽なんだけど。
 まったくといっていいほど、ここまで身がある話はなくて。
 以下、やや説明口調になるかもしれませんがご了承を。




「で?」

 そこらの枝に突き刺した肉に塩(脚絆と一緒に袋を置いておいたのを取りにいった)を振りかけて焼いただけだったが、夜食としては豪勢な食事に腹がふくれたときのこと。
 不意に、ナルトが口を開いた。

「なんじゃ、またつまらぬことか?」

 いきなりの「で?」発言に、タマモが投げ遣りに応じる。
 が、ナルトは真剣で。

「オレは、真面目に言っている。あるはずだ、話すべきことが」

 じっと、焚き火をはさんでタマモの目を見つめる。

「急に、シリアスに戻るでない。儂のテンションがついていかぬ」

 どこか疲れたようなタマモ。

「歳だな」

「だから、儂に鉄扇を振るわせるでない!」

「振るわなければいい」

「むぅ、距離がなければドツけたものを――」

 タマモが元気になったところで話は進む。


「オレは、お前が"九尾"だと思っていたが――違うらしいな」

 一周前の満月な晩、夢にてナルトは九尾と名乗る存在と出会った。タマモとは似ても似つかない性格なのに、あのとき確かにタマモ以上の"力"を感じた。だけど、それはタマモと"力"の種類だけは同じものだった。

「弁明を聞こうか」

 ナルトは、タマモが九尾だと信じてた。そう名乗られたし、言うだけの"力"は持っていたから。恨んでこそいないが、騙されてたとなると話は別だ。ナルトとタマモは互いに寄生する、ということで生きてきたが、それは最低限の信頼があったから成り立っていたのだ。
 その信頼にヒビが入ったまがいものだったとしたら――もう油揚げは買わないかもしれない。そんなことを思いつつ、ナルトは話しだされるのを待った。
 やがて、焚火に頬をほてらせたタマモは喋りだした。

「本体が、宿主の夢に乗り込んだと知ったときは慌てたぞ」

「――?」

「儂の正体を明かすまえに、まずは九尾について語ろうぞ。そのほうが、宿主にはわかりやすい」

 まったく初耳な本体という言葉に、ナルトの顔に「?」が書き足された。そんな反応を予想していたのか、タマモは長々と説明をはじめる。

「十一年前、木ノ葉隠れを九尾は襲った。色々と理由はあるがのう――そんなことに宿主は興味なかろう。大事なのは火影とやらに負け、九尾は封じられてしまったということじゃ。
 儂はな、あまり忍の術には詳しくないが、サトリによると封じられたとき物理的な肉体は消滅してしまったらしいの。充分なチャクラがあれば復活するのは容易いことじゃが、問題なのは、精神だけのまま人の子――宿主に閉じこめられてしまったということよ。
 精神だけという不安定な状態で閉鎖空間に閉じこめられては、さすがに九尾とて正気を保つのは難しい。いま、本体は糸の切れた凧のようなものじゃ。肉体を失った影響を受け、心が無防備になっておる。容易く、一時の感情に流され――狂ってしまうほどにな。それは、宿主も目撃したであろう?」

「ああ、あの末期症状なら」

 一息に語ったタマモの肺活量に感心しながら、ナルトはうなずく。
 あれから夢にはでてこないが、忘れないくらいには衝撃的な出来事だったから鮮明に覚えてる。あの当初と最後の精神レベルの違いは、そのためだったのかもしれない。けっこう納得できる説明だった。

「それだけのことを話すのに、これだけの時間は必要だったのか?」

 けっこう九尾関係は重要な話なのに、ナルトはさして興味を示さずにいた。朝日がのぼるまでに魚を干物にする準備していたりして。彼から聞いたはずなのに……。

「ふぅ、もとから今日は全てを話すつもりじゃったのに。宿主がさしてうまくもないものに関わっているから、もう手短に話すしかないではないか」

 ビシッ! と空気が凍った。

「…………だと」

 ナルトが、怒っていた。

「なっ、なんじゃ。そこで、怒るようなことあったか?」

 拳は強く握り締められ、ワナワナが震えていた。ゆらりと立ち上がり、怯えたように後退りするタマモに詰め寄るナルト。

「うまくもないもの、だと!?」

 珍しいことに、強い語調がナルトの怒りを明白に表していた。どんなボケた行動をするときでも無表情なのが持ち味なのに、どういうことなのか。

「……オレはな、余計に消費されるカロリーを補おうとな、いつでも動物性蛋白質狩ったりタダな木の実拾ったりすることを考えている。それなのに、うまくもない、だと? 食費浮かせて油揚げ買ってるのに? なら、うまくもないものばかりを食う気持ちを味わえ」

 どうやら、金と美味の板挟みに悩んでいるところをタマモは触れてしまったらしい。

「わ、わかった、儂の失言じゃった。だから、油揚げだけは食卓に――頼む!」

「言葉は選べ。一度目は許す、二度目はない」

 それだけ言うと無表情に戻って、落ち着いてしまうのがナルトなわけで。
 まったく、訳わからないダブーワードを持つ変な男である。


「ふぅ、もう疲れたわ。一息に説明するぞ、いいな? 儂の正体なんぞ、もうちょっと演出を考えたかったのに……うまくいかんわ。
 儂は、本体が狂ってしまったときの安全装置よ。いつもは宿主の中に眠っており、命の危険にさらされることないよう力を貸すのが役目じゃが、本来は違う。本体がダメになったら干渉し、自我を調整するために生み出された人格よ。そのために、宿主が幼いときに植え付けられた。九尾とは繋がっておるが、儂とサトリは人に近い存在よ」

 まぁ、そういうこともあるかもしれない。封印式には隙間があるから、そこから微妙なチャクラを放出し影響を与え、自分が生き長らえる仕組みを用意しておくことなど、海千山千の九尾ならやっていてもなんらおかしくはない。
 けれど、ちょっと聞き捨てならないことをナルトは聞いた気がした。

「待て……それは無断でオレの脳に住み着いているということか?」

「そうじゃ。宿主は多重人格でな――つまり儂とサトリは別人格、宿主の一面ということになる。わかっとると思うが、この姿は幻術よ」

 衝撃の事実――動揺にナルトの足元がふらつくが、こらえた。

「なぜか、知りたくもなかったマニアックな知識があると思っていたが――お前らの仕業だったのか……」

 ナルトには身に覚えがないのに、なんか意味不明な夢を多くみたのは、その影響だったのだろう。たぶんタマモら経由で九尾本体の知識も流れこんでいるから、九尾の妖狐事件という言葉を聞くと激しい戦場が思い浮かぶのだ。それだけならまだしも、美少年ばかりを集めたハーレムなんていう悪夢はどう考えたってタマモの影響だ。
 美女に化けるという九尾の戯れ、そこの部分ばかりを抽出されたのがタマモだ。ナルトをベースにしてもそういう性格になるのは仕方ないかもしれないが、同じ脳をつかってるからといって僅かずつ個性が侵されていくのは生理的な嫌悪をともなう。

「やっぱ油揚げ抜き、一ヵ月」

 脳の摘出手術はできるかな、と物騒なことを考えながら、ナルトは冷酷に告げた。無理に多重人格を治そうとすると統合され、自分を失うことになるから、それくらいしか仕返しできないからピンポイントで責める。

「…………ぁ、あぅ、それだけはぁ……」

「駄目だ、飢えろ」

「うぅ、儂の数少ない楽しみが……」

 にべもなく、拒絶する。しかし、タマモ――そんなことで涙目になってどうする? 外見の美とは方向性が反対になってるぞ? 子犬のようになんて表現、狐の眷属としてのプライドに触れないのか?


 で、九尾の秘密が明かされたわけだが。

「ああ、なぜこんな優しくない性格に育ってしまったのじゃ」

「化け狐モドキに育てられたのだから、当然だ。性根の一つ二つはヒネくれる」

「それは自分で自分に言うことかの?」

「ん。二ヵ月な」

「や、やめい! もう言わんから、なっ、なっ、なっ!?」

 なんだかんだ、ナルトとタマモの仲は変わらなかったという。




 
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