言の笹舟 web小説レビューサイト

 ここでは私の趣味嗜好を基準にネット小説をご紹介させてもらってます。
人気小説・ランキング上位のもの・捜索依頼されているものなどを読んで、気に入ったもののみレビューします。
2013年はこのブログだけでなくやる夫スレでも頑張っていきますよー!



スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。




 

  



魔法開発物語 03



 俺の名前は、リセン・ダ・バッソンソン。
 代々スリランサー家に忠誠を誓ってきたバッソンソン家の長男だ。

 学園に入るとなるとこの家名と歴史を自覚することが多くなってくるだろう……嫌だなぁ。








 正直、別にスリランサー家の中に嫌いなやつがいるわけじゃないのだ。
 執事長の息子というポジションのおかげなのか、旦那様と奥様にはたいへん可愛がっていただいたし、その息子のライルとは友人といっていい間柄。
 年頃になるにつれ、ほとんど話さなくなったものの二人の娘さんにだって、とくに嫌われるということはない。

 けどなぁ。
 そういう親しみやすさってのは、スリランサー家とバッソンソン家だからこそありえるわけで。
 他の貴族にとっちゃ、俺なんぞというのはたんなる使用人の子供ということになる。
 だから来客のときなんかはやたらと気を遣うわけよ。
 俺はガキだったからお客さんきたときだけ態度を取り繕っておけばよかったんだが……ストレスだったな。
 親父の跡継ぎになる道を選んだらそんなのが日常茶飯事になるのだ。ゾッとする未来だ。






 だいだいなぁ、俺は学者肌の人間なわけよ。
 お偉い貴族さんの顔色をうかがっている暇あったら研究していたいタイプ。

 そんなわけで今はその研究成果の実験をするために訓練場にきている。
 とはいったってスリランサー家の敷地内なんだが。
 貴族っていのはだいたい魔法を学ぶもんだからそういう設備を用意してあるものなのだ。
 今回やってきたのはその中でもとくにボロい屋外設備。
 ちょっとした広場になっているだけの場所。近くには、的として置いておけるような木材を保管してある小屋があるだけのところだ。
 主に使用人たちが魔法の腕を鈍らせないための場所になっている。
 嫌なお客さんがきたあとは賑やかになる、そういうとこ。
 
「さーて、うまくいくかな」

 俺は抱えてきた数枚の木片をそこらにごろっと置いた。
 この木片は、魔法陣を彫ったあとに溶かした銅を流し込んだ簡易マジックアイテムだ。
 実験用のものまで外装を凝っていられないから一見薪と変わらないが……どうでもいいよな、そんなこと。
 一応はカラフルな塗料で見分けがつくようにしてあるからまったく問題はない。

 とりあえず、離れたところに木の枝でがりがりと丸っこい円を描き、木片を置いたところに戻ってくる。
 いちいち的なんか用意していられない、めんどくさい。
 だからちょっとした攻撃魔法の練習くらいならその円を目指して放つことにしている。
 今回試すような≪マジックアロー≫くらいならそれで事足りる。






 今回の実験に大きく関わることになるので、≪マジックアロー≫とはどういう魔法なのかを再確認することにする。
 基本的にマジックシリーズと呼ばれているのは、『魔力を疑似的に物資化させる』という構文を含んでいるという特徴がある。
 さらにアロー系は、『右手の魔力を左手の方向へ発射する』という照準用の構文を持つ。

 故に≪マジックアロー≫の雛形たる刻印は四つの構文から成り立つことになる。

『魔力を疑似的に物資化させる』
『右手の魔力を左手の方向へ発射する』
『魔力を矢の形状になるように変形させる』

 この三つに、左手を巻き込まないための『物質化は左手を通過してから発動させる』という構文を追加したものだ。




 魔法の雛形とは、名前がつけられている魔法を最低限設立させる構文の組み合わせことだ。
 普通の術者はこれにいくつか独自の変更を加えている。
 まぁ、パンという基本のレシピをアレンジして、ハーブや果汁を混ぜこんだり、惣菜パンや菓子パンにするようなものだ。

 で……攻撃魔法の基本たる≪マジックアロー≫にはいくつか有名なアレンジ方法がある。

 追加オプション≪クロスボウ≫――
 これは『魔力を溜め込み、発射の勢いを強くする』という構文を追加して、発動までにタメ時間はいるものの、飛躍的に貫通力を上昇させるもの。

 追加オプション≪バリスタ≫――
 クロスボウのさらなる発展形で、『魔力を矢の形状になるように変形させる』を『魔力をジャベリンの形状になるように変形させる』に入れ替え、その上で『魔力を溜め込み、発射の勢いをかなり強くする』という構文を付け足したもの。

 追加オプション≪ダブル≫≪トリプル≫――
 矢が分裂して、『矢の本数を増やす』という構文を追加したもの。
 分裂するタイミングを調節する構文は必要になるけどそのちょうどいい難易度からアレンジ方法の練習にされることがある。

 他には、追尾性能を持たせる術式はあるようなんだけど、とある名家に秘匿されているから詳しくはない。


(後は、あー、どっかの伝説の傭兵が、命中直前まで魔力を実体化させないことで風やら重力やらの影響を受けない≪マジックアロー≫を数百単位でばらいまいて無双していたっていうけど……ありゃどうやってるんだろうな。数は魔力が馬鹿ほどありゃどうにでもなるがよ。命中直前っていうのをどういう構文で判断させるいるのかわからねぇ。物質化にだって時間はかかる。だっていうのにちょうど当たるときとほぼ同時に物質化を終えるって、どうなってんだ?)

(生き物が内包している魔力を感じ取って? んなセンサー機能を一つ一つに? いくらなんでも力技すぎる)
 
(俺だったらどうする? ……ってか、そんなオプションはつけないか。物質化させるタイミングを自在にコントロールできる構文があるなら、打ち上げるときは重力無視して、魔法維持できる限界の高さから重力を味方につけんのに物質化させるよな。けど、そこまでいくとアロー系とは言えないな。なんでその傭兵は≪マジックアロー≫にこだわったんだ。何かそこにからくりが……――痛っ!)

「ッ――誰だっ!」

「僕だよ」

 ジンジンする頭を押さえながら振り向いた俺を出迎えたのは、笑顔のライルだった。
 俺の幼なじみで、スリランサー家の跡継ぎ。
 そいつが、最近気に入っている青を基調としているゆったりとした神官服みたいな衣装を着て、木片片手に、満足げに笑っていやがる。

 どう見たって、落ちている簡易マジックアイテムを拾い、俺の後頭部に一撃喰らわせた犯人だった。

「おはようって挨拶しているのにシカトするからだよ。挨拶は人づきあいの基本だよ?」
 
「その応用編には撲殺があるのかよ? だったら人づきあいなんてごめんだね」

「ああ。殴ったのはたんなるその場のノリだよ」

「なおさら悪いわ!」

 声を荒げるが、我が幼馴染みはニコニコとまったく気にしていないようだった。まったく……。

 だがまぁ集中しまくって何も耳に入らない状態になっていた俺にはこれ以上は言えない。
 暴力というのは理不尽だ。それを一方的に振るったライルのほうに非はある。
 けれど非だのなんだのというまえに隙をみせた俺が悪いのだ。

 そう、自分を納得させようとしたところで。

「リセンは学園にいくって聞いたよ。そのあとは家を出ていくってことも――ね」

 ちょっと話をしようか、というライルに俺はうなづくしかなかった。




 
前へ目次次へ


関連記事


 

  



コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://kotonosasabune.blog45.fc2.com/tb.php/265-d9e88374
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)






FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。