言の笹舟 web小説レビューサイト

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魔法開発物語 02



 シスル国には、学校とはこうあるべきという法はほとんどない。
 当然、問題は起こらないように制度は定まっているもののそれさえ最低限守っていれば自由ということになっている。
 どの程度の年齢にどの範囲を教えるかは学校側が決めていいことになっているのだ。
 入学前に授業内容を十二分に説明する義務は発生するが。

 幼児に六年間教えるところもあれば、すでに働き手になっている大人にこられたときだけ教えるところもある。
 メイドを育成するところもあれば、いくつかの傭兵団と契約をして将来の戦士を鍛え上げてるところもある。

 というようにいくらでもある教育施設なのだが。
 俺たちにとって「学園」というのはたったひとつのところを意味している。

 ――聖ティンクル魔法学園。










「あの学園にはいくらなんでも無理でしょう。かの有名な、三年越しの受験システムがありますから」

 他ならともかくあそこに『通ってもらう』はありえない。
 まだ『行ってもらう』のお使いや『ついていけ』のライルの付添いなら理解できるけどな。

 聖ティンクル魔法学園は、貴族が通うことのある学校としては最難関の名門だ。家柄などは不問とされているものの、あそこに合格できるだけの教育を施せるのはほんの一部で、市井の身で入学を決めたのならばその者は紛れもない天才ということになる。そして、有名なのは通常ではありえないほどにめんどくさい受験方法。

 この学園はだいだい18歳からの4年間ほど通うことになっているのだが……受験はなんと15歳のときから始まる。
 さらには、個人個人によってどういう試験なのかは違うのだからメチャクチャだ。

 受験希望者は、半年に一度、学園になんらかの自己アピールをしなければならないことになる。
 日数のかかりすぎるものはダメというルールはあるけど、その内容は完全にフリーだ。
 一回一回に合否を決めていき、六回繰り返す。
 合格かどうかを決めるのは学園長ただ一人ということになっていて、六回中三回以上合格だったら受験合格ということになる。

 この自己アピールというのがほんと難しいのだ。
 例えば、学園側に筆記テストを用意してもらう場合はどういうジャンルでどのくらいの難易度のテストにするのか申請しなければならない。
 得意分野の激ムズ問題を半分わかればいいやと受けるのか、幅広い分野からの易しい問題を満点とるつもりで受けるのか。

 筆記テストに限っただけでこれほどの選択肢があるのだ。
 特技の馬術をみせればいいのか、しつけられたテーブルマナーを披露するために食事すればいいのか。

 二回目以降になると、前回と同じことをすればいいのか、まったく違うことをすればいいのか。

 受験生側にすべての選択権があるのが逆に悩むことになるらしい。
 生徒はもちろん保護者や家庭教師まで悩みに悩み、考え込んだあげく、毎年数人は「やらかして」しまうところも出てくるとか。

 ちなみに我が家の仕えるスリランサー家の跡継ぎたるライルはすでに四回受けている。
 全部、魔法の腕前の披露だった。もちろんすべて合格している。

「問題はない。先方から連絡のあったことだ」

「連絡?」

「ああ、お坊ちゃんの魔法の術式を組んだのはお前だから、それを自己アピールとして合格にすることはできるがどうするかと――とな」

「はぁっ!?」

 なんなんだよ、それは。
 青天の霹靂っていうか槍が降ってきたレベルの話だぞ。

「俺は入学願書を出した覚えはないぞ!」

「安心しろ。私もない――あと口調を気をつけろ」

「失礼いたしました。しかし、ライルお坊ちゃんのついでだとしても、まだ四回しか受けてないのに合格というのは……」

「お坊ちゃんは年齢制限のほうにひっかかっているだけだ。
 だが、お前はひとつ年上だから、最初のほうは欠席していたということにすれば規定の三回合格で合格資格を得られる」

 なんというか……説明をつけられるのかつけられなのか。
 いくら親父に言葉を重ねられたって騙されているような感覚がつきまとう。
 そのくらい学園というのは狭き門だったはずなのに。

「いやあの。
 いくらライルお坊ちゃんが私の術式だとおっしゃられたにしても本当に私の手によるものかなんて……」

「お坊ちゃんはわざわざそんなことは言わなかったそうだ」

「でしたら……」

「坊ちゃんの追跡調査によるものだ。それに、あの学園長だぞ?」

「うっ」

 学園長の名前を出されたら黙るしかない。
 古代文明の生きた化石、絶対戦力、真の支配者、魔法王――数千年は生存しているという正真正銘の化け物。
 教育を生きがいにしているからいいものの、万が一学園長が世界を滅ぼそうとしたら一言で終わるとまで噂されているのだ。
 ありとあらゆる魔法を極めているのだから入学希望者を調べあげることなど簡単だったことだろう。

「学園側の意向はわかりました。
 私という魔法開発の天才を取り込みたいというのも理解できる話です。
 しかし、それがスリランサー家への恩返しになるとは――私に何をお望みで?」

 それがさっぱりわからん。
 そのまま就職するのなら学歴と学んだことが役立つことはあるだろう。
 だが俺は家を出ていく。いったいどんなことをさせるつもりだ。

 何を命じられるのかと戦々恐々としながら親父の言葉を待つと――

「好きにしろ。お前に任せる」

「え?」

 あまりに意外な言葉。
 拍子抜けしたというか膝かっくんされたような驚きに間抜けな声を出してしまった。

 しかし。

「この先、学園が嵐の目となるだろう。
 この地からは見通せぬほどに重く厚く荒れ狂うことだろう。

 己の目と耳で状況を判断し、己の才覚によってスリランサー家に利をもたらせ――リセン・ダ・バッソンソン。我が子よ」

 そこらの占い師なんかはメじゃないほどの不吉な予言に、俺は、学園生活に不安を覚えるのだった。




 
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