言の笹舟 web小説レビューサイト

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人気小説・ランキング上位のもの・捜索依頼されているものなどを読んで、気に入ったもののみレビューします。
2013年はこのブログだけでなくやる夫スレでも頑張っていきますよー!



【ネタ】 このあと、吸血鬼っ娘にさくっと消されました(ネギま)



 ――コーギトー・エルゴー・スム。

 このラテン語を覚えているのはなんでだっただろうか?
 なにかの漫画に記されてあったような……いや、ラノベエロゲだったか。
 思いだせない。
 けど、日本語に訳したときの意味だけははっきりと覚えている。

「『我思う、ゆえに我あり』」










 図書館島に出かけている日のことだった。
 私は最近、小遣いをこっそりと貯めてようやく買えたノートパソコンの関連書籍を求めてやってきていたのだ。

 ここ麻帆良は笑いたくなってしまうほど技術力が発展している。
 その科学力を押し上げている一因になっているのは間違いなく充実している技術書の類だと思う。
 欲しがったプログラミング関係だけで大きな棚五つ分が置かれているのだ。
 あんなに迷うことになるとは。
 わかりやすい解説のものを探すのにはたいへん手間取った。

 ――どの言語から学んでいくのがベターなのか。
 ――理論からしっかりと覚えていくべきか。
 ――それとも、サンプルとしてついてきているゲームをちょっとずつ弄りながら習得していくべきか。

 けれど、その手間がとてつもなく面白かった。
 パソコンの購入費用を貯めるのにかかった2年間の間、いろいろと情報は集めいていたけど、いざとなるとやっぱりと考えてしまう。
 昨晩はセットアップに徹夜したためなのか妙に眠くなってしまい、図書館の机で昼寝して、そのあともまた選ぶぐらいには時間をかけてしまった。
 あまり接したことのない先生に起こされたのはかなり恥ずかしかったが。
 結局分厚い書籍を含めた7冊の本に持ってきた鞄をパンパンにさせて私は寮に帰った。

 で、愕然とした。




 部屋が。
 私の部屋が。

 私の部屋が消し飛んでいたのだった。




 頭が真っ白になった。

 寮の外から見上げただけでわかるほどの損傷。
 爆発物に吹っ飛ばされたみたいに窓側の壁一面が消えてなくなっている。
 壁の断面は黒ずんでいた。
 ガス爆発でもしたのだろうか……いや、昨日と今朝はパソコンに集中するために火の使わないものしか作っていない。
 まったくもってわけがわからなかった状況だった。

 ぽかーんと口を空けたまま何分突っ立っていたのだろうか。
 
 正気に戻った私は慌てて受け付けにいた寮母に詰め寄っていた。
 いったいなにが起こったのかと。

 しかし。

 彼女の返答はまったくの予想外なものだった。
 
 曰く、

「なにもなかった」

 らしいのだ。




 そんなわけがないと声を荒げた私に向けられたのは「なに言っているの、この子」という視線だった。
 面倒くさげに説明してくれた彼女の言葉をまとめるとこうなる。

 Q:あの爆発したみたいになっている部屋はなんなのか?
 A:爆発なんてしていない。ただ、老朽化してきた部分をリフォームしているだけ。

 Q:だったらなんで部屋主の私に断らなかったのか?
 A:あなたの部屋は○○○号室じゃないじゃない。△△△号室でしょ。

 頭がおかしくなりそうだった。

 そして、どういうわけか、私は鍵をなくしたことを言いだせなくて下手な言い訳をしていることになっていた。
 鍵代の500円を支払わされ、△△△号室の鍵を渡された。

 なんでだ。

 私の手元にはまだ○○○号室の鍵がある。
 けど、私の部屋だった場所にいってもその鍵とあう扉はなかった。

 扉すらなかった。

 天井は煤けて壁はぼろぼろに傷つき。
 置いてあった私物や備え付けの家具などはどこかに運び出されてしまっているようだった。
 瓦礫の破片などと一緒に片づけられてしまったのか。

 信じきれないけど、私の暮らしていた痕跡はなにひとつ残されていない。

 私はふらふらと浮いているような足取りで△△△号室に向かった。
 かちゃりと鍵が回る。




 そこが、私の部屋になっていた。


 カーテンが、ベッドシーツが、カーペットが。
 私の趣味じゃない可愛らしい絵柄なものになっていた。

 机に置かれている真新しい教科書。
 中には書き込みはない。なのに後ろには私の名前が書き込まれていた。

 引き出しにはノートや筆記用具がびっしりと詰め込まれていた。
 書きこまれていないページ。
 袋に入ったままのシャープペンボールペンに一本すら減っていないシャープペンの芯。
 まったく欠けていない消しゴム。

 備え付けの本棚には私の買いそろえていたジャンプの単行本はない。
 漫画でわかる歴史の本と古臭い少女コミックがあった。

 家電はけっこういいものが揃えられていた。
 私は特定のメーカーに統一しているのにそんなこと関係なく取りそろえられている。

 クローゼットには微妙にサイズの合っていない衣服。
 なぜかスカートだらけだった。
 タンスには趣味に沿わない下着があった。




 吐いた。

 ぴっかぴかの便器に私は反吐をぶちまけた。




 これは私以外の生徒の部屋じゃない。
 すべて用意されたものだ。
 同世代のセンスじゃなかった。
 ある程度年齢のいっている大人がチョイスしているものだとすぐにわかった。

 大人の考える女子高校生の部屋っぽいものに仕立て上げられているのだ。
 だからそこにパソコンは含まれていなかったのだろう。
 まだまだ学生にまで普及しているとは言い難いから。

 私のこれまでの生活は。
 なにひとつの説明のないままに。
 代えられていた。

 あんなに重みが嬉しかった鞄がとてもつまらないものに感じられた。










 体育の時間には世界記録が塗り替えられる。
 電車の込み合う時間帯には箒などに乗って空を飛んでいく人たちがいる。
 購買ではすぐに売り切れるはずの人気商品が一人分だけ誰にも見えていないかのように取り残されている。
 大きすぎる樹がある。
 毎日ポーズの変わっている銅像がある。
 更衣室のロッカーに銃器を仕舞いこんでいく生徒がいる。
 独り言をつぶやきながら黒猫が横切っていく。
 季節外れに桜が咲いた。
 クラスメイトが三億円の宝くじを当てた。
 小学生を轢いたトラックが天高く舞い上がった。
 休み時間に刀を磨く生徒がいる。
 人間大のロボットが走れる。
 グレープフルーツを片手で握りつぶせる女の子がいる。
 露出狂の脱ぎ女が出る。 
 重傷人が一晩で良くなる。








 ――世界は偽りに満ちている。

 けれど、所詮は虚偽なのだと疑ってかかっている自分だけは本物のハズなのだ。

 ハズだったのだ。


 反転する。


 ――世界には真実のみがあり。

 疑ってかかっている自分だけが嘘っぱちだというのなら。

 そんな欠陥品に意味はあるのだろうか?

 ないのだろう。

 だから私は身を投げた。












「フォフォ……まだまだ若いというのに不憫じゃのー」

「ええ、不憫すぎます。

 この地にいるための身分証明書代わりに引きうけた教師という職とはいえ、彼女は僕の生徒でした。
 学園長、なにか彼女にできることはないでしょうか?」

「ふむ……
 幸いにも魔法先生による発見が早く、魂魄ははがれきっておらんかったのー。
 これじゃったら幽霊にすることができるハズじゃ。
 あの彼女のように学園生活をおくらせてあげることにするかの」

「ありがとうございます! 学園長。彼女もきっと喜んでくれますよ」

「しかし、認識阻害の結界の影響によって彼女の喜ぶ顔を見れないのは残念じゃのう。

 ああそうじゃ。ふらふらと麻帆良の外に出られてはなにかの拍子に悪霊に襲われるかもしれん。
 彼女の呪いにからめて出られんようにしておくかのー。
 もしすると登校地獄の影響も受けるようになってしまうかもしれんが彼女にとっては無問題(モウマンタイ)じゃろ」

「ええ、彼女は遅刻一つしたことのない子でしたから」

「そんないい子なら卒業するころには満足して成仏してくれるハズじゃ」

「僕たちにできることはこれくらいですね」

「ではこの話はこれで終わりじゃ」

「僕はこれから葬式の手配がありますので失礼させていただきます」

「よろしく頼むぞ」












 出席がとられている。

 何故に私はここにいるのだろうか。
 どうして『我』は途切れなかったのだろうか。

 ……私は馬鹿だったみたいだ。

「自分はなぜここにあるのか」

 そう考えているかぎりは自分の存在を証明してしまうのだ。
 消えるわけがない。

 わかっている。
 これはまっとうな理屈じゃないことは。

 けれど異常が常になるこの麻帆良に地においてはそんな理不尽もまかり通ってしまう。




 ああ、死にたい。




 それだけが私に残された願いです。




 
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