言の笹舟 web小説レビューサイト

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NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 131

 森の中を駆け巡る、三つの人影。

「あったぞ!」

「よっしゃあ、貰った!」

 いや、少年少女たちというべきか。山道を俊敏に駈けていく様は素早かったが、背丈的にまだまだ未発達だった。そして、目指していたのは、少し開けているところに立っている旗。赤色の布地が揺れている隣には、一人の女の子が。

「守り手がいるぞ!」

「ヒナタだけだ! アミ、取り押さえておけ!」

「わかったわ! 地面に這いつくばらせておくわよ!」

「「っておい、それは……」」






 トビオ、キバ、アミ、男の子二人の順で叫び、三人組は女の子に襲来した。ヒナタは女繋がりでアミが足止めにかかり、その脇を擦り抜けるように、男の子たちはフラッグに手を伸ばした。
 が。
 並走していた子犬――赤丸が「ワンッ!」と吠えたがすでに遅く。

「ご、ごめんなさい!」

 ヒナタが謝ったところで、


 ザワワワ パキキ ギュキキキ!


 草むらに潜んでいた寄壊蟲が三人に襲いかかった。

「わっ」

「きゃっ」

「なんだよ!」

 キャン!

 圧倒的の数にたかられ、各々が絶叫する。
 当然、この場にいる――隠れていたシノが木陰から現れた。

「お前たちは無謀すぎる……三人全員で突っ込んでくると見ていた。ならば、罠を仕掛けておく……これが上策だ」

 憎たらしいぐらい落ち着いた声音。勝ち誇られているわけじゃないだけに、余計キバを苛立たせる。

「てっめぇ、ハメやがったな!」

「戦術とはこういうものだ……忍術もまた然り。いずれにしても、騙されたほうが悪いことになっている」

 チャクラを食わせるのは秘伝なので使わず、寄壊蟲の体感重量を増やす『蟲地蔵の術』を行使していた。身動きできなくなった三人と一匹を見回し、サングラスを光らせる。分身がいないことだけは確認したようだった。

「ヒナタ、囮役ご苦労だったな」

「う、うん。でも、わたし立っていただけだし……」

「今回はそういう役割だったというだけのことだ。チームプレーは、己の役割を果たしていれば、それでいい」

 無表情のままヒナタを励ますシノ。そんな二人を睨み付け、まだ暴れる者がいた。
 アミという女の子だ。圧倒的に人気度で劣っているヒナタにここでも負けるのが許せないのか、

「あんまり調子乗ってんじゃないわよ!」

 クナイを投げ付けた。ヒナタの近くにいたため、そして他二名より力はないため、寄壊蟲はあまり割り当てていなかったことが裏目にでた。さすがにここまで直接的な凶行に走るとは思わなかったため、ヒナタも咄嗟には反応できない。
 色艶からして、訓練用の丸く柔らかい特別仕様(重さだけはそのまま)ではなく、本物のクナイだ。しかし――
 群青色が巻き付き、止める。

「旗ぁ?」

 トビオが言ったとおり、その群青色の布地は棒に括り付けられていた――つまり彼らのチームの陣地にあったはずの旗だった。それがここにあるということは、意味することはひとつしかない。
 三対三のはずなのに、ここにいなかった人物。

「返すぞ」

 冷ややかに、そして閃く。
 稲妻が走ったと錯覚させる速度で、からみついていたクナイを投げ返す布。どういう操作をすれば、ただの旗でそこまでの操作が可能なのか、アカデミー生たちには想像もつかなかった。
 己が投擲した半分の時間で戻ってきたクナイに反応できず、アミは棒立ち。その顔をかすめるように通り過ぎ……そして一房の髪束が落ちる。忍にあるまじき長さだったのが、左側だけ耳の高さで切り裂かれたのだった。

「なお、戦闘続行を望むか。いいだろう、もうひとつの勝利条件『敵チームの全滅』も満たしてやる」

 棒術の要領で、ナルトは旗の棒を突き出した。咄嗟に身動きするアミだが、左脇――腕と胴体の間に差し込まれる。そして、

「忍の武具は千変万化……いかようにも変化する」

 シノの解説通り、旗は生きている蛇のごとくアミの左腕にからみつく。あとは、柔術の基本のまま重心をずらし、シノが寄壊蟲を避難させたスペースに背中から叩きつけるだけだった。
 なにをされたのかわからなかったのか、受身はみっちり稽古させられているはずなのに、中途半端なものだった。あれではしばらくは目を覚まさないだろう。人を傷つけようとした報いとしてはまだ軽いほうだが。

「やりやがったな!」

 味方をやられたキバが吠える。だが、これではただの負け犬の遠吠えだ。

「そう、わめくな……寝てろ」

 ふっと沈むようにして距離を詰め、旗のない方――槍でいう石突きでキバを気絶させる。心配げに駆け寄ってきた赤丸には手出しせず、そのまま見過ごす。赤丸もまたキバを舐めているだけで、ナルトには歯向かおうとはしない。

「さて――」

 ナルトはどこか不吉な感じで見やり、残った少年――トビオを震えさせる。

「お、オレは、ほら……もう身動きできてないだろ?」

「すまない、忘れていた……『解』」

「解くなよな!」

「チームは仲良くするべきだ。この情況で一人逃げ延びるのはよくない」

 シノが逃げ道を塞いだ。術を解くのに全部の指を交差させる印を結んだまま、いわれのないトビオの抗議に反論する。
 群青色の旗が死神の鎌に見えているトビオは必死に頭を回転させ、とても頑張った。結果――

「そうだ……参った、参りました。これで勝利判定の条件は満たしただろ? 気絶させる必要ないよな? なぁ?」

 必死だったが、ナルトは無情なもので。

「トビオといったか……なぜか、おまえだけは殴っておきたいのでな。許せ」

 そう言うなり、胸を当て身で打ち抜いた。

「え!? オ……オレなんかやった…………?」

 打撃音のしない軽い突きに見えたが、トビオは不自然なほどパタリと倒れ、ピクリともしなくなった。泡とかは気のせい目の錯覚だろう。なんか、いつもより多めのチャクラを送り込んでしまったせいでナルトにもよくわからないのだが……
 まぁ、旅立ったりはしないだろう。上には。




 ――旗取り合戦――

 この模擬戦闘訓練は、訓練施設をひとつ丸ごとをたった六名で借りるという贅沢なものだ。
 それだけに、たまにしか行なわれず、成績に与える影響も少なくはない。
 ルールは簡単。各三名のチーム二組がそれぞれに五つずつ与えられる陣地のうちひとつを選び、旗を立てる。一度立てれば変更は許されない。そして、開始時間になってから相手の陣地に攻め込んで、先を旗を奪ったほうの勝ちとなる。
 または旗を取れないように、相手チームを全員捕虜にすれば、それはそれで勝利ということになる。
 当然、相手チームの旗がどこにあるかはわからず、闇雲に探しているだけでは五分の一から始まることになる。戦術と運、そして各個人の総合力を試すにはちょうどいいゲームだった。アカデミーではこの旗取り合戦を例年執り行っている。
 ナルトはもう数回経験していたため、手慣れたものだった。だかしかしそれだけで片付けるには、開始三分で終了というのはちょっと前代未聞だった。これまでのレースレコード、うちはイタチの七分を大幅に上回っている。
 この完勝を成し遂げさせたのは――




「……作戦勝ちだったな」

 のんびりと、茶をすすりながらつぶやくシノ。
 ここは、ナルトの部屋だった。しかもどっかから拾われてきた(そのままの意味)ホットプレートがテーブルを陣取っている。ナルトにとある誰かさんの手料理を食べさせたいという某幼馴染みの工作の結果、戦勝の喜びを分かち合うお好焼きパーティーを開催することになったのだ。
 顔触れは、ナルトチームだった三名だけだが。
 ちなみにあれだけ手料理を嫌っていたナルトだが、いまや焼き上がるのを待ち構えていたりする。無表情だが、なんとなく嬉しそうだ。野性の生き物はやはり餌付けされやすいということなのか。

「えっ、作戦ってあったの?」

 いかにも初耳です、という感じで聞き返したのはヒナタだ。
 さっきまで野菜や生地の準備に追われていたが、あとは焼くだけという段階になると手も空いてきたっぽい。

「攻守の役割分担をすることも『作戦』の一部だ、ヒナタ。当然偵察もそういうことになる……」

 説明好きのシノは、時計を睨んでいた。どうやら時間頼りに引っ繰り返す頃合いを決めるらしい。ヒナタは料理で鍛えてきた勘で、ナルトは野性の勘で、それぞれのその時を待ち望んでいる。

「でも、ナルトくんが早かったおかげでなにもすることなかったよ?」

「"白眼"と"寄壊蟲"で旗のありかはわかっていたからな。最短で行けた」

「それにしても早すぎる……赤丸もこちらの位置を把握していたのだぞ……」

「あいつらは、森を知らなすぎる。どうということもない」

 と、ぽんっと引っ繰り返したナルト。日々散歩しているキバより、日々暮らしているナルトの方が"森"に馴れ親しんでいるのは道理だ。そして身体能力自体、圧倒的な差がある。相手の倍の速度で往復するなど、まだ手抜きしていたくらいだったのだ。本気になれば、キバチームが陣地から三歩歩いた時点で全滅させれる。
 殺すことになっちゃうけど……
 と、ふと――

「これで成績は確保できた。しかし、ナルトに聞いておきたいことがある」

 シノがナルトを見据えながら口を開いた。

「今年は卒業できるのか?」

「無理だ」

 即答だった。
 冗談とかじゃなく、確信を込められたセリフに、ヒナタのコテを動かす腕が凍り付いた。

「卒業課題がどの術になろうと、試験に落ちることになる」

 オレは忍術を使えないからな――と、ナルトは淡々と宣言した。いや、宣言するようなことじゃないけど。そして、かつおぶしと青ノリを一振り。熱々のお好焼きに食い付いていった。
 対照的に、ヒナタは意気消沈としていた。

「じ、じゃあ、ナルトくんと一緒に卒業できないの?」

 鉄板から立ち上る湯気の中、ヒナタは涙目になっていて。相当、師匠と共に下忍になれないことが心細いらしい。それを見たシノが「うずまきナルト……」と睨んできていたりする。
 ……なんか、シノ、キャラ変わっていないか? 

 閑話休題。

「手が無いわけではない」

 女の最終兵器に心持ち膝を屈したナルトが「特別試験がある」と言った。
 特別試験とは、何らかの事情により卒業試験を合格できなかった者が、それ以外の手段で下忍に相応しい実力があると証明するチャンスのことだ。前年度のロック・リーは、一切忍術・幻術を使えなかったが体術だけでこの特別試験を受かってみせた。
 基本的に、一芸に秀でた者が受ける。そのまま大成すれば、特別上忍――各分野のスペシャリストになったりすることが多い。というか、ナルトの実力はすでにこの特別上忍の域に達していた。たかが特別試験、それで受からないはずがない。
 ただし――

「受けられるのか? 特別試験は、教師三名の推薦を必要とするが……」

 シノが口にした条件を満たされたのなら、の話だ。それからだ、全ては。
 まず一人はイルカでいい。お人好しのあいつならまさか断ってくることはないだろう。確実に引き受けてくれる。
 が、

「無理だな。揃わない」

 爪弾き者のナルトにあと二人を揃えられるはずなかった。

「そ、そんな……」

 一度止まった涙腺がゆるむと、シノも再びサングラスを光らせた。ナルトが焼き焦げそうになった二人の分をひょいひょいと取り皿に移してやると、わーっという泣き声になってしまった。満腹の腹に飛来した、なんともいえない罪悪感……
 そういえば、このヒナタの親戚――ネジが特別試験を受けさせるとき、「先生方に文句を言わせない」と約束していたが、日向家の権力というよりアカデミーの天才児という、己の力による裏付けがあってこそのものだった。同じポジションには今現在サスケが居るけど、話を通してもらうようなことは出来そうにない。
 通常の手段は出し尽くした。

「ん。脅せば――脅しさえすれば、どうにかなる」

 ヤるなら猿より教師だな。ナルトは声にせずにそう思った。
 しかし、前半部分だけでもヒナタには聞かせるべきではなかったらしく。

「だ、ダメだよ……そんなこと。ナルトくん、ちゃんと勉強しようよ」

 と――言われてしまった。
 もう最近、師匠なはずなのにすっかり逆らえなくなってきたナルトくんが拒めるはずなくて……
 まあこうして勉強会が開かれることにになったのさ。




 
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