言の笹舟 web小説レビューサイト

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NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 126

「ん。――遅かったな」

 結局、罠は仕掛けられてなかった。が、散々警戒しながら追ってきたシノを出迎えたのは、けっこう腹立つ発言だった。
 なにも告げずにいなくなった張本人のくせに、と思ってもしかたない場面だったが、シノは無言のままだった。口を開くことさえ惜しみ警戒をしているのか、手裏剣ホルスターに手をかけたまま半身になり、あらゆる攻撃に備えている。
 だが、ナルトはなにも仕掛けなかった。水面から突き出た石に立ち、ナルトは口元を拭っていた。まさに水飲んでましたといった様子でまるっきり戦闘体勢になっていない。というか、待ち伏せするつもりはもとからなかったようだ。

「もう水分は補給させてもらったぞ」






 ナルトは悪気のない無表情で言ったが、シノの眉は跳ね上がった。
 まぁ、戦闘中にいきなり消えたとおもったら「水飲みにきました」では馬鹿にしている、ということになっても仕方がない。シノは理解のあるほうだが、理解できるだけに味わう精神的苦痛もある。

「うずまきナルト……ひとつ聞いていいか?」

 ナルトはとくに断る理由もないためうなずいた。
 別に「答える」と約束したわけではないので聞くだけならタダだし、減るもんじゃないからだ。
 シノはそのことを承知しつつもわずかな望みを込め、尋ねた。

「手元にある情報から推測してみたが、今のお前の言動でまたわからなくなった。――なぜ、この場所を選んだ?」

 障害物となる木々のなくなる川だが、ここは子供二人が両手を伸ばしたほどの幅しかない。戦術に組み込むにはいささか小さすぎる。シノは水面歩行の術ができるし、そのことはナルトも手合せした感触から承知しているはずなのだからなおさらだ。
 つまり、林よりはナルトに有利になったが、それでも戦況を覆すほどの地の利にはならないということだった。
 だが、同世代とは考えられないぐらいの実力者たるナルトに「ただ水を飲みにきたわけではない」と否定してもらいたい、という気持ちがシノになかったわけじゃない。誰だって、失望したいわけではないのだ。
 だけど――もちろん、というか当然。

「水を汲むなら、川だろ」

 至極当然といった口調で、当たり前のことを、ごく普通にナルトは答えてしまった。
 それで。
 シノはなぜか一度首を振ると、手裏剣を投げた。
 無言の、だけど力強い投擲だった。
 放物線をばらつかせて四方八方から襲いくる手裏剣群を一瞥すると、ナルト君は――

「ん……」

 ――倒れた。
 いきなりふらついて足元を滑らし、ぽしゃんと。
 腕をつくこともせず、水飛沫をあげながら横倒れに。水深の浅いところだから半身だけしか沈んでいないが、それでも手裏剣を躱したことになっている。しかし、そのために倒れたにしては無様すぎるし危険すぎる。

「うずまきナルト?」

 訓練用――角は丸められている――とはいえ物騒なものを投げ付けたシノが、心配外に名を呼んだ。
 が、ナルトは倒れたままピクリともしなかった。




『――ぬし』

 闇で、呼ばれた。

『宿主よ。大丈夫か?』

 聞き慣れた美声。人には発せぬ、豪邸と比べられるような名器たる楽器に通ずる――そんな喉が歌を奏でるでもなく、ただ一人を呼ぶために使われていた。闇に沈んだ意識を優しく導いていく。

「ん」

『起きぬと、白目の小娘にちょっかいかけるぞ?』

「献立から"狐"と"稲荷"の文字を消す、か」

『なにっ!?』

 悲鳴のような声。
 ふと、いつのまにか人一人の気配が闇に生まれていた――いや、目覚めていた。
 眠っていたとは思えぬ冷徹な声で、ナルトはガンの告知に等しい――タマモにとっては――宣告をくだした。

『あっ、ああ……あんまりな! そんな、未遂なのにっ!!』

「撤回してもらいたいなら、情報を寄越せ――なぜオレは倒れた? まだチャクラの残高はあったはずだが」

 闇夜と異なる、無の黒色があふれる空間。視界0の世界は、常人の精神をむしばむが――ナルトは慣れているのか、淡々と、姿の見えぬタマモを脅しにかかった。いちよう取引という形になっているが、これは揚げ命のタマモには脅迫に他ならない。
 うめくような気配があったけど、あっさり食い意地娘は折れた。

『――拒絶反応、じゃ』

 重苦しい声で告げるが、食い気をまんまとダシにされたことに変わりない。
 兎に角、わかりにくい説明に一瞬思案したナルトは確かめる。

「チャクラか……もうオレは、純粋すぎるものに耐えられなくなったのか?」

『そういうことじゃな。もう宿主の身は――』

「わかった。で、九尾の様子はどうだ?」

『切るな! ……はぁ、まぁ、宿主が聞かぬでいいならいいがのう。九尾だったら、今晩ぐらいには蘇るぞ』

「ん、じゃもう聞くことはないな。ということ、で」

 一方的に尋ねていったナルトはあっさり意識をさらに持ち上げた。なにやら「うどんと寿司はどうなったのじゃ!?」と喚いているタマモを置き去りに、ナルトはいつもよりメモリ不足な精神世界から去ったとさ。




「体調が優れないのでな、悪いが――さっさと勝敗をつけさせてもらう」

 様子を伺っていたシノが意を決して川に入ろうとしたとき、ナルトはいきなり起き上がった。水面に突っ伏したまま十秒以上いたのに呼吸を乱すことなく、またもや突拍子のないことを言い出した。
 いや、模擬戦とはいえきっちり勝敗つけるのはおかしくないのだが……正気かナルト君?
 上半身を起こしたとはいえ、水中で片膝をつくような体勢。表面的にはまったく具合悪そうにないが、普段のナルトの動きを知るものならば、こんなだらしない格好は相当悪いのだとわかってしまうほどの不調。
 なのに――

「当然、勝たせてもらう」

 ――ナルトは、肩を落としたまま言った。シノは何も答えない。呆れたような、なんともいえない視線を送っただけだった。
 だが、ナルトがゆっくりと右腕を上げたとき――その標準のような動作に、半ば本能的にシノは飛び退いていた。手裏剣もクナイも握られていないと視認したのに、つちかってきた忍の勘は「逃げろ」とがなりたてる。

「いいのか? オレに、水を汲ませて――負けるぞ?」

 シノに向かって突き出された掌、そこに吸い込まれていった透明なボールがあった。
 手毬、ヨーヨー、そういった物を連想させるように跳ね上がったソレ、水の塊はぴしゃりと手に収まる。
 水が、掌と紙一重のところでふよふよと浮いていた。
 忍術としてはたいしたことのない児戯、だが、それは印を結んだときの話だ。アカデミークラスの水遁と根本的に異なる術を見せ付けられ、どうすることも出来ず、シノはいつでも逃げれるよう重心を傾かせたまま立ち尽くしていた。

「ギブアップしろ……それが賢明だ。オレに虚仮威しは通用しない。お前の体調不良はわかっている。ここは素直に負けを認めるべきた…………」

 そうは言いながらも、シノは自分の台詞の薄っぺらさを自覚していた。臆しているだけの言葉に、ナルトを退かせるだけの説得力はない。それどころが、ナルトに傾きつつあった流れを定着させてしまう。
 もはや、シノの敗北は決まってしまった。

「オレの奥の手を見せてやる、シノ――」

 水の玉が、渦巻く!

「……!」

 線でしか、シノにはわからなかった。
 言葉を途切れさせたとき、ナルトは術を解き放ったが――迅すぎだ。忍の超人的な動態視力でも追い付けないほどの神速で飛び出した水の弾丸は、シノに反応を許すことなく頭のすぐ横を通り抜け、木の幹に当たった。
 貫通し、その直後――弾ける。
 水の珠が音速を越えたことにより発生したソニックブームが、綺麗に刳り貫かれた木を打ち倒す。

「動かなかったのは良い判断だ。命中率は高いが、万が一ということもあるからな」

 ナルトの言に、ようやくシノはわかった。
 その予備動作から飛び道具系の術と推測できたのに、なぜ飛び道具に対するセオリーである「動き回る」ができなかったのか。なぜ喉元に切っ先を突き付けられたような緊張感を覚えたのか。
 全ては、ロックオンされていることを第六感で感じ取ってしまっていたため。

「〈神無〉と名付けた術、の応用――〈水神無〉だ。避けることも、防ぐことも、かなり難しいはずだ」

 水神無《みずかんな》は、信じられないことに棒手裏剣よりも迅かった。これでは、回避するのは至難の業。そして、その貫通力。貫いた木は一本だけでなく、振り返ってみたとき遥か遠くでまた木が一本倒れた。どこまで届いているのか、考えるだけ恐ろしい。
 ただ水を圧縮し、チャクラで回転させ、打ち出す――それだけの術なのに、そのシンプルさゆえ、ナルトのデタラメなチャクラを用いても暴走せず、溢れんばかりのチャクラをパワーとスピードに転換してしまった。
 単純明快な術だが、それだけに術者の力量を思い知らされる。

「…………」

 息を呑んでしまったシノは、その他諸共を計算し、

「わかった……この勝負、オレの負けだ。なぜなら勝ち目がなくなったからだ」

 静かに、敗北を受け入れた。たとえ幻界により蟲を減らされていなくてもどうしようもない、圧倒的な一撃を見せ付けられてはそうするしかなかった。
 どちらかというと悔しさより、ナルトから奥の手を引き出したという喜びさえあったから模擬戦には満足だった。
 力及ばず。
 だが、シノは明日からさらに強くなれることを確信し、ギュッと拳を握り締めた。
 そして戦ってくれた礼を言うために振り向くと。
 ナルトは――再び、倒れていたとさ。




 
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