言の笹舟 web小説レビューサイト

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NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 125

 いきなりだが――殺虫剤の仕組みを御存じか?
 いや、成分がどうのこうのというわけではなく、その概念を。
 簡潔に言うならば、ただの毒である。
 当然、人間にとっても有害だ。だけど、虫除けスプレーを吹き付けられたって人は倒れない。種族の差、というよりサイズの差だ。人を昏睡させる程度の麻酔薬ぐらいじゃ象は眠らないように、人と虫には致死量に違いがある。結果、虫は死に絶え、人は生き残ることになる。
 品種改良等の努力をしている蟲使いにより、毒の効きにくい蟲は生み出されている。が――




「なっ。これは……どういうことだ…………」

 黒い雨を浴びながら、シノは驚愕の表情で呟いた。

 ――死骸だ。






 雨と見間違えるほどの亡骸だ、寄壊蟲の。
 チャクラによる繋がりを断たれた衝撃に、そして、身体の一部となっていた蟲たちの壊死に、シノはふらついた。頭痛目眩吐き気を堪え、相棒を死にやった金髪の少年を睨みつける。
 彼――ナルトは、爆風の中心地でただ立っていた。
 蟲の大群に襲われて、絶体絶命になったはずなのに、無傷で。

「何を……」

 落葉に降り積もった黒いゴミに、シノの拳が震えた。

「何をした……うずまきナルト!」

「チャクラだ」

 シノの追求に、素っ気ない答えが返される。
 正体不明の術の名残なのか、ナルトから硝煙のようなチャクラが棚引いている。けれども、全部の術はチャクラで成り立っているのだから、やっぱりどうやったのかわからない。
 理解――納得できなかったのを表情から読み取り、ナルトは付け足す。

「その蟲はチャクラを食らうのだろう? だから……」

 食わせてみただけだ、とナルトがうそぶいた。
 理屈はわかる。一棟分の米を詰め込まれたら秋道一族の者とて、死ぬ? かもしれないのだから。
 けど、手段がわからない。

「忘れたか? お前は、この術をすでに一度見ているはずだが……」

 そう言われたとき、シノの脳裏にふと浮かび上がってきた光景があった。アカデミーの講堂。倒れる男子。空間に満ちていた異質なチャクラ。それらが結びつき、ヒナタを中心にした騒動を思い出すことになった。
 一瞬にして、クラスの連中は倒れていった――

「これは、あの時の……!!」

「その通り。この辺りにチャクラの煙を漂わせた。人が吸えば、柔拳みたいに気絶させれる。幻術やそういった術にも転化しやすい。そして――蟲のように、チャクラ容量の少ないものが飛び込んできたときは破裂させる」

 治療忍術を数少ない例外とし、他人のチャクラは大なり小なり負担となる。精密なチャクラコントロールにより成り立っている人体に、想定外のチャクラはイレギュラーにしかならないからだ。少量ならなんともないが、量が多ければ気絶してしまうといった悪影響をもたらす。
 が、蟲のようにシンプルな構造の生き物だと気絶だけではすまない。しかも主人のチャクラを食べるのに、寄壊蟲の経絡系は外気に接しているのだ。濃厚な霧となっているチャクラを吸い込み、限界以上に食らってしまうためにぼんっと破裂してしまうことになる。チャクラを溜め込むのには、器があまりに小さすぎる蟲たちだった。

「とくに名付けてはいないが、これを『幻界』と呼ぶ奴もいる」

 まさに異界の名に相応しい。異世界に迷い込んだ者は、真空や、この星とは違った大気成分に、死ぬしかない。

「お前の領域にいるヤツには届かない――安心しろ。が、もう使うな」

 シノは蟲使いだ。
 だが、ナルトはその蟲を封じ込めてしまった。
 ならばこの模擬戦の勝敗は決まったのではないか――と思えた瞬間、風が吹いた。
 木々の梢を撫でるように気紛れな突風が通り過ぎていく。チャクラとは関係のない、自然の息吹。
 だが、チャクラも動いていた――そしてシノも。

「ん? ……!」

 いきなり走りだした蟲使いがふっと消え、いや違う、地を滑りながらナルトの死角に潜り込んだ。そのまま左足で刈ろうとした両足は寸前で浮かんでしまう。シノの奇襲スライディングは躱されてしまった。
 が、不用意に飛び退いてしまったナルトの頭上から足が振り下ろされる。
 空振りした左足で地面を蹴り、180度開脚したまま上昇したシノの踵落としだった。柔らかい身体で、変則的な体術によってシノが襲いかかる。ナルトも防ぐが、チャクラで強化されてない腕の骨がきしむ。
 なにかに気付いたのか、ナルトははっと仰いだ。

「……そうか、風か」

 すでに述べたが、霧状に散布されたチャクラは近付く者を気絶させる。そのためナルトも油断していたのだが、肝心のチャクラが偶然吹いた風に流されてしまっていた。いつもならいくらでも補充できるのだが、現状では、これほどチャクラ消費の激しい術はそうほいほいと使えない。
 そのためシノは倒れなかったのだ――というより、風ですぐさま好機と見て取ったから体術で攻めてきたのだろう。
 反省点をすぐにナルトは洗い出した。そして、

「体術勝負は望むところ、だ」

 着地した途端、それだけ呟くとやり返すようにふっと消える。
 これも違った。
 ナルトは瞬間移動!? と錯覚しかねないスピードで詰め寄り、着地したばかりのシノに殴りかかったのだ。実は、攻撃を受けられたときに流し込まれたチャクラで痺れていたため、シノの反応がわずかに遅れる。
 だが、シノも戦いを挑んでくるだけのことはあった。

「…………!!」

 無言の気迫を込め、ナルトの拳打を左腕で振り払っていなす。相手の体勢を崩したところで、ぐんっと伸ばされた右腕が槍のごとくナルトの肩を打ち抜いた。純粋にリーチ差が現れた結果、小柄なナルトはそのまま突き飛ばされる。
 しかし離れぎわ、追撃しようとしたシノに後ろ回し蹴りを見事命中させ、反動をうまくつかって体勢を立て直してみせたナルトも流石である。体格の不利があろうと体術じゃ負けていない。
 が、ナルトは勝負を決めにいったのに凌がれてしまったのも事実。
 痛打を受けた腕をだらりとさせたシノは、拳を握っては開いて調子を確かめた。その動作にぎこちなさはなく、戦闘続行に支障はなさそうだ。
 無表情のままそれを見送っていたナルトに、シノは告げる。

「お前は物理攻撃を得意とする近・中距離タイプ。だが、オレとて接近戦が苦手なわけではない。なぜなら蟲使いはまず術者自身を狙ってくる者から身を守らねばならないからだ……」

 蟲を丸ごと駆逐しちゃうようなナルトは例外として、対蟲使い戦のセオリーは直接攻撃である。蟲をなるべく相手せず、森に潜んでいる蟲使いをいかに仕留めるか――そういった戦いになる。
 さらにそれに対抗するために――ジャンケン論議になりそうだが、そういったことで油女一族が接近戦にも力を入れているのなら、先程のアカデミーレベルではない体術もうなづける。かなりの労力と苦痛を支払い、ようやく手に入れた実力なのだろう。
 で、それを見て聞いて受けたナルト君は、

「悪いが、そういうことなら接近戦は避けさせてもらう」

 あっさりと、シノの努力を否定しやがった。
 いくら戦術的に間違ってないからといって、「体術勝負は望むところ、だ」なんて言ってた男の選択だろうかコレが? 絶対日向家当主と殴りあった奴のセリフじゃないよ。厚顔無恥すぎるよナルト君。
 そんな非難を聞きもせず――そもそも聞こえないけど――ナルトはいきなり呟いた。

「静かだな」

 突拍子もない発言。
 たしかに、蟲の羽音はなくなり、森の住人たちも争いの気配に遠ざかっている。戦いが止まっているときはたしかに静寂があった。ときたま葉っぱと葉っぱがこすれる音がするぐらいで、戦闘中なのがおかしいぐらいな呑気さだ。
 そして一人、シノだけが立ち尽くしている。

「逃げた――?」

 いつのまにかナルトの姿は消えていて、シノは思わずそう口にしていた。
 前兆らしいもののない、いつものパターンだった。シノもとっさに温存していた蟲たちを散開させるが、その広がった知覚範囲にもいそうにない。いないと断言できないのがナルト君の恐ろしいところだが、本当にいないのだろう。
 なぜなら、離れたところでナルト君の気配がふと現れたからだ。

「誘われているのか…………なぜだ?」

 置いていかれたシノは追跡しだすが、トラップを警戒しながらでスピードは遅い。そちらに意識を割きつつも、さっぱりなナルトの意図を推測してみる。
 とくに模擬戦につかう範囲は決めていなかったけど、油女一族の敷地から出ないことは暗黙の了解だった。ナルトの教えてきた場所はその範囲内だからとくに問題はない。が、なんの意味もなく移動したとは考えにくい。
 シノは脳内の地図に、感じた気配の位置を当てはめてみる。

「あそこは、川か……」

 一度だけシノも訪れたことのある。小さな、とくにたいしたこともない川が流れていたはずだ。記憶にある光景を思い浮べてみると、なんとなくだがナルトの考えが読めてくる。

「(接近戦は避けると言っていた。ペテンの可能性もある……が、障害物が減ってくると飛び道具は使い易くなる。だからといってそれを警戒しすぎれば接近戦に対応しづらくなる。なるほど、厄介だ…………)」

 おそらく、遠く微かにだが聞こえる水音にナルトはその存在を知ったのだろうが――そこに移られるとは。飛び道具の威力は林でなら半減するため、体術にさえ対処していけばよかったのに。
 油女一族の土地で、ナルトは地の利を得た。地理の重要性を知らないわけではないのに、みすみす移動させてしまったのはあきらかにシノの失敗だ。油断せず、畳み掛けるように仕掛けていればすでに勝っていたのかもしれないのだから。
 だが、シノは気配のある方角を見つめながら――呟いた。

「うずまきナルト……お前に挑んでよかった。なぜなら…………」

 なにやらまだ言っていたが、聞くものはいなかったとさ。




 
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