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NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 124

 規格外な存在なのだ、蟲使いは。
 これは歴然たる事実である。
 断言するけど、蟲使いの下忍と名門と言われる一族の下忍が戦えば――蟲使いが勝利すること間違いない。
 集団戦や暗殺のときこそが蟲使いの真価を発揮するときなのにだ。都市一つに壊滅的被害を与えることだって可能だというのだから、他の忍者と彼らを同列に扱うわけにはいかない。
 独りにして、万軍の役割を果たすのが蟲使い。


 ――だが。


 その万軍を打ち破ってこそのナルト君である。









 シノに申し込まれてからは早かった。
 いや、あえてナルトが急いだということがある。
 パワーダウンを自覚しながらも申し込まれた翌日――アカデミーは休みだった――に待ち合わせたのは、いい訓練になると思ったため。九尾からの供給が途切れるなど滅多にないが、九尾の器を狙ってくる敵がそういった繋がりを絶つ術を使わないって保障はない。将来を見越せば、貴重で大事な経験になるためにこのハンデ戦を望んだというわけだ。
 そして、その十一歳らしくない二人の戦いの場は油女一族の私有地になった。
 蟲使いという職業上、油女一族には日向一族の十数倍の敷地が与えられている。木ノ葉の隠れ里の由来となった大森林のうち、油女の占める割合というのはけっこう大きい。それだけ土地があるため、派手に暴れたって騒ぎにならないところを用意するなどシノには容易だったことだろう。
 ここは、冬期になると蟲を寝かすための土地らしく、現在は使われていないとシノは説明をした。そのためどれだけ暴れようと――流石に、大火事などの災害クラスになると不都合あるけど――問題にはならなくて済むらしい。
 数十本くらいの木々ならへし折ったって平気な土地を選ぶあたり、シノはわかっていると言えよう。
 学校ではまだセーブされ隠されている、ナルトの実力を。




 戦いになるのはすぐだった。

「オレは油女一族。戦うとき、蟲をけしかけることに躊躇いはない……全力で行く!」

 シノが宣言してすぐに聞き覚えがある音が響き、霧のような黒いのが彼から広がる。
 それは、ナルトが昨日食おうとした蟲たちだった。
 蟲の羽撃き――思えば、これがノイズの正体だったのだろう。
 数百数千の羽音を聞かされてしまうことにより、ナルトの獣じみた聴覚は狂わされたのだ。皮肉なことに、チャクラの減少によって聴力が落ちているため耳鳴りはしなくなっているが、ちょっとずつ感覚を狂わされているのも確か。
 まだ九尾は直っていない(道具扱い)。
 正直、シノの相手をするのはしんどいのだ――現状のナルトだと。

「蟲か――対多のいい訓練相手になる」

 まったくそんな素振りは見せようとはしないけど。
 ナルトはゆっくりとクナイをホルダーから引き抜き、

「だが、蟲にばかり付き合っていられない」

 投げた。
 いきなりだった。
 突拍子もない行動とはこういうものなのだろう。ナルトの投げ放ったクナイは意識の合間を縫うようにして飛び、シノの首筋に突き刺さった……ように見えたが貫通した。
 シノを形作っていたものが散らばり、蟲となる。

「――分身か。面白いが、見破られてすぐに火遁をやられたら厄介だぞ」

 とくに驚いた様子もなくナルトは淡々と指摘した。
 蟲分身だとわかっていなければナルトとて、敵対してないクラスメイトの急所を狙っていくわけがないと信じてみるのが吉かもしれない。
 ともあれ、これがただの分身だったとしても会話能力を与え長時間持続させるのはアカデミークラスの技量ではない。さらに蟲という要素を加えながら、なぜナルトが見破れたのか疑問なほどの化け具合とは――総合力では、サスケなどよりシノのほうがよっぽど強いことを証明している。
 なにより〈何でもあり〉だからといって初っ端から分身にしておくという、シノの戦術というのは子供のレベルではなかった。学校の演習だけでは満足できず、ナルトに挑むことになったのはそういう事情もあったからだろう。

「奇襲するつもりだったが、お前には通じないようだな。中々……興味深い」

 独白しながら、右手の茂みよりシノが出てくる。
 いつもの黒眼鏡――そこには無論ペテンにかけようとしたことの謝罪はなく、なかなか面の皮も厚そうだった。
 忍者を目指すならこうでなくなはならないが、それをやり、やられ、平然としている十一歳同士の戦いというのも珍しい。

「お前を殺さないようにはするが、蟲への手加減など知らない――犠牲を埋めるだけの力を得ろ」

 手加減できないから蟲は殺す、ではなく、まだ慣れてないから蟲を殺す、ナルトはそう言った。慣れさえすれば、この無数にいる蟲一匹一匹を殺さずに勝てるという自信があってこその発言は挑発になっているが、

「では……その見破り方を教えてくれるのか?」

 熱することなく、次の分身に生かすためシノは尋ねる。
 このあたりの機転と成長しようとする心構えがあってこそ、シノは強くなってこれたのだろう。
 ああ、とナルトは呟くと、

「狂っているぞ、像が――な!」

 吐き捨て、そして上半身を捻った。
 そのままクナイを振るって、伝わってくる衝撃を受けとめる。
 ギギギと噛み合う音を響かせる二つのクナイを挟み、ナルトとシノの力比べとなっていた。純粋な腕力・膂力等ならナルトに軍配は上がるけど、やや体勢の不利さがあるため絶妙なバランスにより拮抗している。

「……ザザザ」

 背後で、茂みから歩んできたシノの身体が崩れ、蟲の集合体という正体をさらした。
 あたかも本体のように登場としたシノさえ、蟲分身だったのだ。分身体に話させて注意を引き付けたところを狙った奇襲――決まれば、最高の先制攻撃になっただろう。初手からこれだけの策を張り巡らすシノも凄いが、それさえ見破って対処してみせたナルトの強さが際立つ。
 その見破った理由というのは――

「歩くとき、重心移動がおかしい」

 戦闘時の忍というのはつねにどの方向にだって動けるようにするものだ。その上、戦うのか守るのか逃げるのか、相手とどれだけ離れているのか武器はなんなのか、どうなのかによって重心の配分というのは刻々と変わってくる。一歩ごとに変動しているといって差し支えないほどのペースで。
 だというのに、分身2は出てきたときからナルトに近付いたときまでずっと同じだったのだ。体術のエキスパートであり、相手の動きを利用する投げを得手とするナルトがその不自然さに疑いを持たないわけがない。
 ふむ、と納得したようにシノはうなずき、ナルトのクナイを跳ね返そうとする力に乗って後ろに跳んだ。
 黙って、それをナルトは見送った。

「さすがだな……だが、オレの攻撃はまだ終わってはいない」

「囲まれた、か」

 いつから狙っていたのか。シノの本体と分身二人を結ぶと三角形になり、ナルトは内側に閉じこめてしまっていた。辺をなぞるようにして蟲達が広がり、逃がさぬように万全の包囲網を敷いている。

 ザワワ……

  ザザザ……

   ザガガ……

 轟音と化した羽音の群れというのは本能的な恐怖を引き起こす。
 九尾が発狂するのも無理はない……無理はないが、

「因果応報か――いいだろう、格の違いというものを見せ付けてやる」

 シノへ、というよりいまだ内にて蟲と蚤にたかられている九尾の妖狐に向けて、ナルトは不敵な宣言をした。
 すぐに掻き消された呟きを聞いていたかは関係ない、ただ成すのみ。
 そして、

「行くぞ……うずまきナルト!」

 騒音の渦があったが、シノの唇はそう読めた。




 
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