言の笹舟 web小説レビューサイト

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NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 122

 ――力が、失せる。


「……なっ」

 満月の度にあった脱力感に襲われ、ナルトの身体がふらついた。
 ちょうど教室左後ろの特等席に座るところだったため、そのまま手を枕に眠るように目蓋を閉じる。
 異変は唐突にしで前兆なく――だから、教室にいた連中は気付かなかった。
 いつもの居眠りではなく、様子のおかしい九尾の妖狐を探るためにナルトが意識を潜らせたことに。









 薄幸の少年ことナルトの腹に描かれた封印式――九尾のチャクラを汲み取りナルトの糧にする副作用付き――からの供給が途切れる。
 あってはならないことだった。
 九尾は、ナルトが赤子のときから封印されている。
 ナルトとて、赤子のときはただの人の子である。封印式を維持するためのチャクラがあるわけがなく、そのうち九尾に内から食い破られる運命にあった。けれど、そうならなかったのは四代目の遺した小細工があったからこそである。
 封印された対象自身のチャクラにより封印を強化する――そう珍しくはない発想ではあったが、その術式の精妙さは神の領域に届くほど。ナルトには負担をかけず、漏れだした九尾のチャクラを無害なものにする。九尾を封じるだけで大仕事なのにそこにある心配りは細緻、天才にのみ許された所業である。
 最後の仕上げをやったのは三代目火影だが、二重の四象封印なんていうのを思いつくのは"木ノ葉の黄色い閃光"と称された四代目以外にありえない。時空間忍術の術式を生み出すほどの彼だからこそ、これほど強固かつ自浄作用のある封印式を構築できたのだ。
 彼の術式でなければ、とっくにナルトの自我はなくなり――九尾に乗っ取られてしまってたはずだ。
 ともあれ、四代目の遺産によって封印を維持するだけのチャクラは賄われていた。なのにそれが途切れたのだから、ナルトは自分自身のチャクラを消費しなければならず――それが脱力感の正体であった。
 最大の問題は、何故いきなり止まったのか原因不明だということだ。

(イジメすぎたか?)

 あのファーストコンタクト以来、力の強まる満月ごとに九尾は接触してきた。どうにかナルトに朱のチャクラを使わせようと企んでいたが、いつもナルトはつれなく、ついには狂わされてハッピーになっていき――タマモに復旧されて、また次の満月のために力を蓄えるというのが、お馴染みのパターンになっていた。
 そろそろ説得を諦め、次の手を打ってきてもおかしくはない。
 というか、封印式が汲み上げているのは九尾が垂れ流しているチャクラである。それが無くなったということは、九尾がそれさえ意識的に溜め込んでいることになり――それなのにナルトと封印は維持するだけで消費していくのだから、けっこう不利な状況になってしまっている。
 もし蓄積したチャクラを爆発させられたら……封印に疲れさせられたナルトは耐えきれるだろうか?
 答えは、否。
 一ヵ月以上力を蓄えられたら封印は解かされるし、早めに対処しなければ手をつけられなくなる。すぐに対処しなければ九尾は復活すると思い、ナルトは九尾の領域に踏み込んだというわけだ。
 踏み込んだのだが、




「ムシイヤダ、ムシコワイヨ、チカヅカナイデヨタカラナイデ! ボクオイシクナイヨ、アア、シッポハヤメテヨイジラナイデ! ヤァ、ヤァ、ミミダケハイヤァ!!」

 出迎えたのは、半狂乱になった子供のような泣き声だった。
 あまりに九尾の牢獄には似付かわしくない声に、ナルトは思わずフリーズしてしまったとか。
 瞬間、頭を振って冷静になるが、さらに悲鳴は続いていた。

「ヤメテヨ、ヤダヨ、ノミガチクチクスルヨ! キカイチュウニハミハミサセナイデ、カユイヨ、イタイヨォォオオオ」

 聞き取りにくい声、だが仕方がないのかもしれない。
 牢獄のようなとこに捕らえられた九尾の妖狐には、真っ黒になるぐらいの虫と蟲がくっついていた、全身に。ここはナルトの夢じゃないから実体は映っているはずなのだが、ご自慢な月下の黄金のような毛は黒く染められてしまっている。
 いつもやっている"蚤の刑"だって、ここまでは酷くない。蠢くようになっているのは蚤の群れだろうが、なぜかナルトが今朝森で返り討ちにした虫が追加されてしまっているし……そもそも数が違う、十倍はありそうだ。

「なんだ、アレは……?」

 九尾に課せられた責め苦は、まったくナルトには心当たりがないもののようだった。
 つい一週間前に"蚤の刑"はやったばかりだったけど、いつもはすぐ狂わせてしまっておしまいだ。明らかに人格崩壊やら幼児逆行を引き起こしているのに、それでも止めないのはナルトの流儀ではない。
 色々と疑問はあったけれど、

「久しぶりじゃのう、宿主よ?」

 どうやら解説役が現れたようだった。
 背後からかけられた声に、ナルトが振り向くと――そこには金髪の美人が立っていたとさ。




「つまり、自滅したということか?」

 一通りの説明を受けると、ナルトは呆れてしまった。

「そうじゃな。元々、九尾が狂うごとに"歪み"は出来つつあったのじゃがな――それが今朝の蟲によって昔の記憶と結びつき、トラウマとなって具現したのじゃろ。そして、あの様じゃ」

 のんびりと玄米茶を飲みつつ、タマモ。なぜか作業着――土木関係者が着るようなの――だったりするのは蚤対策だろうが、その服装と湯呑みという組み合わせさえ着こなしているのが面白い。
 タマモ愛用の"燃える鉄扇"は、オートで宙を飛び回りながら二人に近付いてくる虫たちを焼き払っている。けっこうな火力だけれど、扇の特性として風も操っているからタマモ自身に火花が降りかかることはない。
 それはいいのだが、疑問が残っている。

「何故、あの"蟲"が切っ掛けになったかわかるか?」

「封じられたとき、厄介な蟲使いがおっての。そのとき儂に仕向けられたのが、あの蟲じゃったのよ――寄壊蟲と呼んでおったかの? その印象が強かったのじゃろ、蟲に関するトラウマになったとき思い出すのも無理はあるまい」

 人事のように――まぁ、九尾の記憶は共有こそしているが別人格なのだから当然かもしれないが、けっこう白状な口調でタマモは説明した。九尾のためだけに生まれた人格だというのにそれっぽくない奴である。
 納得したようにうなずくとナルトは、

「筋は通るな――明日の朝、稲荷寿司にしてやる」

 太っ腹なところを見せた。ちなみに油揚げは、テウチの知り合いの信頼できる豆腐屋さんから購入している。ナルトが客になっているのバレたら迷惑かけるので、朝早くに気配消しつつ買わせてもらいにいっているのだ。
 ホントか!? と、目を輝かせるタマモ。成人女性の姿形をしているのに、油揚げに関するときだけは、童心になるらしい。普通の神経の持ち主だったらこの笑顔を見たいがために毎日五食はキツネと名のつくのを出しそうだが、もちろんナルトにはまったく効き目がない。たいていなんか働いたときだけ、褒美として出されるだけである。
 そうやって情報交換は終わったけど、

「人騒がせな」

「ほんとにのう」

 チャクラが途切れたのは九尾の企みじゃなかったらしい。
 このトラウマ状態に陥ったため、ナルトが渡るはずだったチャクラが蟲となって九尾に返ってきていて――自傷していたわけだ。これで力を蓄めれるわけがないから杞憂だったということだ。
 大山鳴動して蟲がいっぱい、まぁ平和である。

「イイコニスルカラモウユルシテヨ! チャントシャレコウベアタマニノッケテイッショウケンメイレンシュウスルカラサァ」

 繰り返すが、平和である。




「で、このまま放っておくとどうなりそうだ?」

 お茶菓子としてあった栗羊羹、その最後の一切れをひょいっと口に放りこむナルト。タマモは警戒していたけど、狙っている素振りを見せずにいきなり無拍子になんてやられると守りきれなかったようだ。

「あぅ――まぁいいかのう」

 タマモは名残惜しそうに頬張られた羊羹を見ていたけど、ややして諦めたのか、二つ目の羊羹を取り出す。
 嬉々としてクナイで切り分けてようやく、タマモは答えた。

「そうじゃな。まず間違いなく復活するであろう――そのときには蟲を恐れなくなっているじゃろうな。九尾はそうやって己の弱点を消してきたのじゃから」

 基本的に、九尾の妖狐はほぼ不死身である。蟲に苦手意識があるとはいえ死ぬわけがないから、あえて自分を逆境に追い込み、耐性を手に入れるのは理に適っているように思える。
 しかし、

「まずい……ヒアシがリベンジにきたら殺されるな」

 このままだとナルトは、ただの子供だ。まぁ、それでも上忍程度のチャクラはあるけれど――いや、八卦の封印式にチャクラを食われているだけ劣るから……中忍ぐらいのスタミナといったところか?
 そのぐらいの体力では、あの化け物を倒せない。というか、「さっさと本気にならんか!」と怒られ、ついでに殺られてしまう、絶対に。
 問題なのは、これではいつもの戦闘スタイルをできないことだ。下手にいつもの感覚で闘おうとするとチャクラがすぐに足りなくなって命に関わりかねない。もうちょっとコストの低い術によって戦術を組まねばならない。
 誤解のないように言っておくけど、ナルトはチャクラの節約が苦手なわけではない。無限に等しい九尾のチャクラがあるけれど慢ることなく、いつも無駄のない戦いを心がけている。
 けれど、それは封印式がもたらす九尾のチャクラがあってのこと――例えるならば、問屋さんでまとめ買いしたのをコツコツ使っているようなものなのだ。確かにコストは低くなるけれど、普通の資金(チャクラ)しかない者にはとうてい不可能な節約術である。
 ていうことは――結論、ヤバイ。
 チャクラだけは末恐ろしいほどあるけど、まったく忍術・幻術の使えない子供。いつもは体重差・リーチ差をチャクラでカバーしているけど、そんなことしていたらすぐ力尽きるから体術もダメ……弱っちぃなナルト。

「言っとくが、いつもの治癒速度をアテにするでないぞ。常人よりまだ速いとはいえ、チャクラが足りぬからいつも通りというわけにはいかんのじゃから」

 回復担当のタマモからの忠告。
 これで、ナルトの最後の強みが消え失せたというわけだ。

「いつまでだ? コレは」

「はっきりとはわからぬ……が、そう長続きはせぬぞ。最長一週間、早ければ半日もあれば、蟲の繭を破って新九尾が誕生するぞ」

「わかった」

 それだけ確かめると、ナルトがうっすらと薄くなりだした。
 用件が済んだから帰ろうという意志に世界が応えたからだけど――幽霊っぽいな。

「宿主よ、稲荷寿司を頼むぞ」

「ん。承知した」

 こうして、九尾の領域からナルトは生還した。


 ――けれど、


「目覚めたか」

 ナルトには、聞き慣れない声が待っていた。
 隣の席には不気味な男。クラスメイトか? と、まだ顔と名前を覚えてないナルトが記憶を探ったけれど、そのとき教室に漂う緊張感に気付いた。なんか多くの視線に囲まれているような――。

「ん。こいつ、どうした?」

 不思議なことに、なぜかナルトの机の横に寝転がるようにしてイルカが熟睡していた。時計を確かめると朝のHRが終わりかけの時間というのに、だ。
 疑問だったが、

「うずまきナルト……お前の仕業だ。なぜならイルカは起こそうとして、寝呆けたお前に裏拳を喰らったからだ」

 ご丁寧に件の男が解説してくれた。
 いきなり教師をノックアウトしてしまったら、注目の的になるのは当然である。

「なら、オレが起こすべきだな」

 殺さなかっただけでマシだと考えつつ、ナルトはイルカを爪先で蹴っ飛ばした。そのときイルカに微弱なチャクラを送り込んで意識を覚醒にうながしたから、けっこうな高等テクニックである。
 件の男は、ほぅと関心したようだった。
 だが、すぐに目覚めてしまっただけに蹴られたことがわかるイルカが「起こしてくれて、ありがとう」なんて言えるはずがなく、

「……窓掃除だ」

 プチ! と、頭の配線が数本キレてしまったご様子で、

「学校全部の窓を掃除してもらうからな、バカヤロー!」

 いつもより手間のかかる罰を命じつけたとか。




 
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