言の笹舟 web小説レビューサイト

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NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 002

 ずっと一人だった。
 いや――たまに一匹二匹いたようだけど、それだけが身内というのも尊厳に関わるから、あえて数には加算しない。
 遠い昔、乳母と呼べるものはいたらしい――老い先短い爺さんに粉ミルクを三日に一度与えられただけ――が、それを家族と数え、育てられた恩を感じるべきだろうか?
 彼の口癖は、火影様の命がなかったら皮をひんむき塩ふって脳天に穴あけ逆さに吊し煙で薫製なったら切り刻んで酢漬けして地に埋めてやるものを、だったような記憶が残っているけど、それでも感謝していいのだろうか、人として?
 わからない。
 ――誰も教えてくれない。


 だから、オレは……。







 パシャン――と、水の跳ねたような音が響いた。
 魚だろうか。湖に浮かぶ少年――ナルトは、ずっと物音一つ立てずにいた。ぷかぷかと、ただ浮かぶ。海月のように。満月を眺めながらただある。
 いったい、ここでなにをしているのか。なにもしていないように見えるが、ナルトはチャクラでボードのようなものを背中に生み出していた。それ自体、修業になっているように思えるが、本質的にはなにもしていないことに変わりはない。
 湖面を撫でるように吹き付ける夜風は、容赦なくナルトから熱を奪っていく。たとえ無風になっとしても、肌を刺すような冷水に身体をひたしているのだ。体温の高い子供とはいえ、いやだからこそ冷たさは猛毒になっている。
 もしかすると自殺のつもりなのだろうか? いや、目を見開いたまま寝る人がいるように、とっくに呼吸しながら死んでいるのかもしれない。そんな馬鹿げた印象を受けるほど、夜の湖という一枚の風景画に溶け込んでいる異色。
 変わってるといえば、ナルトは服を脱いでいなかった。脚絆(靴)こそ陸地に置いてあるもの、白いシャツとえんじ色のスボンという格好のまま水に入っている。動きやすそうな格好だったが、水中では邪魔なだけの服装だ。
 もちろん、身体をふくタオルなどどこにも用意されていなかった。近くに人家はなく、ナルトの家までは遠い。里の境目から離れてはいるから大丈夫なのかもしれないが、通りすがりの暗部につい殺されても文句を言えないほど怪しかった。
 また、パシャンと音が鳴った。
 ナルトは唇――不思議なことに紫になっていない――を動かし、言葉を紡いだ。

「二ヵ月ぶりに会うというのに手土産一つ持たぬ、そんな客人は追い返されても文句を言えない。そう、思わないか?」

 誰に、問おうというのか。ナルトは、ほぼ湖の中央を漂っている。そこに人魚でもいないかぎり、声が拾われることなど、

「思わぬな」

 唐突に、現実は否定される。


 そこに天女が舞い降りた。


 艶やかな長い金髪に、切れ長の青い瞳。異常なほど整った顔に、スタイルのいい妖艶な体を真っ赤な中華風の艶やかなドレスで包んでいる。
 傾国の美女。
 そんなありふれた言葉では表現しきれないが、だからどの言葉が相応しいかというとない。いかなる形容詞とて、彼女の前では色褪せる。それは、人に許された美ではないのかもしれない。

「久しぶりの逢瀬とて、身一つあればいいのが美女の特権よ。男こそ、貢ぎ物がなければ、黙って抱き締めるぐらいはせねばな」

 人外の美貌の持ち主が、揶揄するような響きを美声に乗せる。言葉は、あまり深読みしないほうが吉っぽい。
 ナルトは水面に立つとその美女と向き合った。無造作に、無感動に。子供とはいえ、これほどの美貌を前に無反応とは――いいのか?

「恋人なら、それもいい」

「儂は違うとても?」

「歳を考えろ、狐」

 くっ、と美女がうめいた。外見的には二十代前半だが、なにやら自覚はあるらしい。それもそのはず。狐とナルトが呼んだことからわかるように、彼女は軽く数千年を生きた九尾の化身なのだから――いや、少なくともそうナルトは思っていた。

「儂に暴言を吐くとは、育て方を間違えたのか? 昔は、母様、母様と懐いておったのに……これが噂の反抗期なのか?」

「あのとき――オレは、とりあえず信じることの愚かさを学んだ。とても、いまさらタマモを母とは思えない」

 戦術を変えたのか泣き真似し恩にうったえようとする美女――タマモを、ナルトはあっけなく切り捨てた。
 効き目無しと見てとり、タマモが懐に目薬をしまった。まぁ、自在に涙の出し入れができる彼女にとっては必要ないから遊び心というやつかもしれない。本気で泣くような神経をしてないことは明らかだ。

「母とは見れぬ――つまり、儂に惚れたということか? ふむ、なるほどのう、儂の美貌を目にすれば当然の末路よ、では、さっそく、部屋に戻って……そして……」

 しかし、それを聞いたナルトは、

「手遅れ、か」

 ぽつりと呟いたりした。
 それは、手がつけられないくらい恋の炎が育ってしまったよ、というような情熱的なニュアンスとは違った。あえて言うなら、死を見取った医者が遺族に告げる「ご臨終です」という台詞のような、淡々としながらも同情と憐愍がにじむ、そんな言い方だった。
 ナルトが込めた感情を正確に読み取ったのか、陶酔から覚めたタマモの眉間がピクリと動く。

「……それは、どういう意味じゃ?」

「いや、小耳にはさんだが――孤独が続くと、妄想と現実を区別できなくなってしまうらしい。そうならば病的な欲求不満を解消しようと、幻想世界に愛を求めるのは仕方のないことだ」

「…………! 宿主よ、儂をなんだと思っとる!!」

「気にするな。満月の夜にしか話せない身、狂ってパーになろうと責めはしない。イカレ狐の妄言ぐらい聞き流す度量はあるつもりだ」

「嘗めるでないわ、こわっぱが! ちょっとからかってだけじゃ、本気にするでない! まだ筆下ろしもしてぬ猿なぞ、誰が相手にするものか!!」

「わかった」

 無表情にうなずいたナルトを、タマモは疑惑の目で見つめる。

「ほんとに、ほーんとに、わかったのであろうな!?」

「任せろ。オレは、同じ過ちを繰り返さない男た」

 肩で息するほど呼吸を乱したタマモに、ナルトは力強く告げた。

「だから安心しろ。このまま痴呆が進んでも、オレとサトリで介護する」

 ぼぐぅっっ! どっぽん。
 鈍くて不吉な音が響いた。
 それと、なにか大きいものが水面に落ちたような音も。


 それから百を数えたタマモだったが、湖面は静かだった。

「ふむ、さすがに『燃える鉄扇』はやりすぎじゃったかの? はて、どうしたものか……」

 金属特有の輝きがあるハリセンのようなものを握ったまま、タマモはとりあえず時間を数えてみたが……。
 さらに千を数えても、ナルトは浮かんでこなかったという。

「…………(汗)」

 きらりと流れ星が落ちたとさ。




 
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