言の笹舟 web小説レビューサイト

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NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 118

「……わぁ」

 朝日が昇りはじめた時間帯、ヒナタは二大怪獣大決戦が繰り広げられていた場所に来ていた。
 ならされていた地面は、いくつもある摺り鉢状のクレーターで跡形もない。まだ倒木などは除去されていなく、一晩のうちに風が吹かれて転がってきた小枝やら石ころなどがあたりに散乱している。
 いつもの早朝訓練にと来たヒナタだったが、これではもうちょっと遠い訓練場に足を運ばなければならないようだった。







 あの二人の戦いは、三日目の夕方にはナルトの勝利という結末で終わりを告げた。飲まず食わずの徹夜二晩はヒアシもこたえたらしく――それでも化け物じみたタフさだったが、スピードは落ちてきていた――て、ナルトに首を掴まれながら無数の膝蹴りを浴びせられて沈黙したのだった。
 まぁ、体内に永久動力を抱え込んでいるナルトとそれまで殴りあえただけで人間の範疇を越えているのだが……それから今だに意識は取り戻していないが、まったく怪我らしい怪我はないというのだから人間ではないのかもしれない。ナルトに負けたというより、歳と眠気に負けたといったほうが正しそうだ。
 観戦中、ときたま抜け出しては食事したり寝たりと生理現象を済ませていたヒナタだったが、そのときナルトのための食事を母に頼んでいた。また、最低一品はヒナタも作っていたけど――結局、勝負中だったため六食+おやつは食べてもらえなかった。
 そして、ついに決着がついたとき夕食に誘おうとしたヒナタだったが……まごまごと言い淀んでいるうちに、ナルトは「疲れた」と行ってしまった。
 がっかりとしたヒナタを気にせず、年寄りとは思えない旺盛な食欲を発揮した三代目がいたりして……たいそう恨めしそうな目でヒナタに見られたとか。というか、図々しく二人前(ナルトの分含む)も食うなよ三代目。
 まぁヒナタが観戦していられたのは、三代目が火影の権力でアカデミーに「三日ほど休ませる」と連絡しておいてくれていたからなのだから、文句は言えなかったのだが。


 とまぁ、火影の好感度が下がったりするイベンドはあったが、ヒアシが倒れたわりにはごく普通に昨日は終わった。そうやって失意のままヒナタは眠り、いつものように五時には起きると朝練に来たのだが、

「にゃあ」

 不意に、猫の鳴き声がした。

「ね、猫さん……?」

 この敷地は広いから、当然猫の一匹や二匹がいたとしても不思議ではない。だが、視界を横切った三毛猫をヒナタは見たことがなかった。
 興味を引かれ、そっと忍び足で追跡しはじめたヒナタだったが、

「えっ!?」

 すぐに驚愕した。
 日向家の敷地には広い林がある。そして、ヒナタが辿り着いたとある木の根元には……ナルトが寝ていた。
 ぐっすりと、だけど大勢の猫に囲まれてながら。左脇には白い猫、右脇には黒い猫、そして腹の上にはとっぷりと太った二毛猫――と多種多様な野良猫がナルトを寝所にしている。

「…………ぅぅ」

 まったく予想もしていなかった光景に絶句するしかないヒナタ。
 だけど、いつも無表情なナルトの穏やかな寝顔があったりして……でも周囲は猫ばっかりでヒナタの入り込む余地はなく、そことなく悔しいのか、

「猫に嫉妬しちゃう私って……」

 そんなことを呟いてしまうヒナタだった。
 しかし、確かにナルトは「疲れた」とだけ言って立ち去ったわけだが……そこから三分ほどの場所で眠っていたとは。ちゃんと白眼で調べておけば家に持ち帰るチャンスだったのに……、と後悔する日向宗家がいたという。
 それは、さておいて。
 ふとヒナタは気付いてしまったが……ナルトは七匹の猫に囲まれていたが、それを踏まずに近付ける箇所が一つだけあった。
 頭である。
 猫も頭は気持ち良くないのが、そこだけは敬遠していた。そして、ナルトは野ざらしになにも枕にせず寝ていて――それを見た心優しいヒナタが膝枕をしようと思い至ったとしても不思議はなかろう。
 起こさないよう、ゆっくりと近付いていくヒナタ。
 寝息の聞こえるところまで近寄り、音を立てないようにして座る。そうして、男の子とは思えないほど綺麗な金髪の頭を持ち上げ――ようとしたところで、
 パチリ、とナルトの目が開かれた。

「「…………」」

 情況を把握しようとするナルト、硬直するヒナタ。
 気まずい静寂。それで、先に動いたのはナルトだった。

「ヒナタ、どうした?」

「え、あああああの、ナルトくん、今おきで……?」

「ん?」

 どもりまくったヒナタの声に不思議そうにナルトは首をかしげ、反射的に握り締めたクナイをホルダーに戻した。もうちょっと寝起きが悪ければ、ついうっかり喉を掻き切っていたことだろう。幸い、ナルトは低血圧ではなかったが……危機一髪だ。
 そんなことに気付かず、必死にヒナタは言い訳を考えていた。なにもやましいことはしようとしてないのだから正直に話せばいいのだが、なぜか顔を真っ赤にして頭をグルグルと回転させる。

「そ、そそそのね、私も猫さん抱っこしてみたいなぁー、って……」

「そうか。ほいっ」

「わわわわわっ!」

 会心の言い訳だとほっと一息ついた瞬間、ナルトに茶色い猫を放られて、ヒナタは慌てまくった。放り返すわけにはいかず、熱いものでも持ったかのようにお手玉しているが、猫は楽しそうに浮かび上がっては着地している。

「落ち着け、ヒナタ。ただの猫だ」

「そ、そうだけど……ね、猫さんが……猫さんが……」

 ナルトが声をかけるけど、ヒナタのジャンパーにある二つの紐に興味を持った猫たちが群がってきて、しばらくヒナタは玩ばれることになったとさ。


 十分ほど経過した頃には、どうにかこうにかヒナタは解放されていた。

「こ、この猫さんたち、ナルトくんが飼っているの?」

「いや、野良だ。どうもオレは猫に好かれる体質らしい」

 喋りながら、ナルトは一匹の喉を撫でてやった。気持ちよさげに猫は目を細める。これで、初対面な警戒心が強いはずの野良猫だというのだから、なんかフェロモンでも出しているのかもしれない。
 そんなナルトの近くだからなのか、猫たちは呑気にヒナタが見つけてきた猫じゃらしで遊んでいる。早朝訓練なんか忘れる勢いでヒナタも楽しそうだったが、

「ところで、明日にはサスケ戦だからな」

「えっ……? あっ、あぅあぅ……」

 いきなり現実を突き付けられて、またもや絶句した。動きを止めた瞬間、ジャンバーの紐にこれまた猫たちが飛び掛かってきたことはあえて説明しない。ただ、七匹もいると猫とて驚異だったと記しておこう。
 ちなみに、ナルトは柔拳の応用により猫には無害なノミ退治を触るだけでできるらしい。




 ちょっとしたゴタゴタはあったが、ヒナタの案内により二人は訓練場の一つにやってきていた。他の使用者は幸運なことにいなかった。
 そうして、久しぶりの練習は始まった――その方法とは、変わったものだった。
 杖にちょうどいい大きさの枝。それで地面に拳大ほどの円を描いたヒナタは、枝をその中央に突き立てる。

「ん。やってみろ」

「……はい」

 監督していたナルトにうながされ、かるく深呼吸するとヒナタはすっと枝から手を離した。そして、触れないようにしながらも両手で挟むような仕草をする。
 当然、支えのない枝は倒れていくが――不意に跳ね、傾きが止まる。
 見えない壁にぶつかったような反応だったが、それを成したのはヒナタの掌から放出されたチャクラだった。その両手からの放出量を少しずつ調整していき、斜めになっていた枝をどこから見ても直角になるように立てていく。
 それに成功すると、ほっとヒナタは一息ついた。

「安定させるのは早くなったな」

「う、うん。練習はしていたから……」

 そんな会話があるように、この"棒を倒さない"練習法を教えたのはナルトである。まともに組み手にならず、どうしようもないから一人で特訓できる方法を考案して伝えておいたのだ。
 これは、地味で地道な修業を好むヒナタを考慮しているだけはあり、派手さはないが"放出"が鍛えられるため、効果的に柔拳を強化することになる。また"コントロール"を身につけなければすぐ倒してしまうため、これが出来れば手加減も上手になるという。
 でも、これを思いつくのにナルトは三分しか使ってないけど――まぁいいか。
 これをヒナタは朝昼晩の習慣となっている訓練のとき、それぞれ二時間ずつこなしていた。最初のうちは倒れてばかりだったけど、観戦中にやったときは余波の突風がきても倒さず続けられるようになっていた。が、

「で、どこまで離れられるようになった――第二段階は?」

 ナルトの言うように、この手元でやるのは第一段階にすぎなかった。一週間前はまったくヒナタには無理だったが、どうなっているのか。

「や、やってみるね……」

 ヒナタはうなずくと一歩下がり、また一歩後ろに踏み出す。
 当然、両手ではさむようには出来なくなるが……棒は倒れない。ややヒナタ側に倒れかかってきてはいるが、ヒナタが掌を押し出す動作によって支えられる。そうして倒れかかったまま安定し、ちょっと風が吹いたぐらいでは動かなくなった。
 ナルトに見守られながら、ゆっくりとヒナタは後退していく。三歩目あたりから枝が揺れるようになっていき、五歩目からはなにかに叩かれているのがわかるほど踊るようになる。ちょうどいい力を当てれなくて、慌てて放出量を増やしたり減らしたりしているということなのだが……、

「ヒナタ?」

 ナルトは呼びかけたが反応しない――いや、聞こえていないのだヒナタには。どれだけ集中しているのか。いつのまにやら白眼時の目付きになっている。今は、千里眼や経絡系を見る能力が必要なときではないのに。
 つまり、

「洞察眼のためだけに使っているのか、白眼を?」

 ナルトの疑問に答えず、だけど証明するようにヒナタは枝を動かした。ゆらりゆらりとしていた枝だったが、まるで地面に突き刺さったかのようにピタリと直立するようになった。
 おそらく、今のヒナタには全てが見えているのだろう。枝の重心、風の流れ、地面の凹凸、または自分自身のチャクラさえも――それらを多角的な視点から判断し、枝を倒さない未来を選びとる。本来の視覚と聴覚を切り捨て、白眼の超感覚にのみ専念しているからこそ可能な神業。

「…………」

 また一歩、ヒナタは下がった。
 さらに二歩動くが、まったく枝は揺るがない。
 けれど、地面にぽたりぽたりと尋常ではない汗が落ちていく。血継限界たる白眼だけでも消費するのに、これほど"放出"を続けているのだから体力の浪費は激しいはずだ。
 チャクラの"放出"とは、つまり垂れ流しているということだ。だからこそ、技としては回転なり一点集中などメリハリをつけて"放出"しなければ使いものにならないのだが、これは持続力たる"スタミナ"の特訓でもあるのだからこれでいい。
 それに、少しでも疲れないようにするには、ピンポイントにチャクラを当てなければならない。そのため、これまた"コントロール"の訓練にもなるというわけだ。
 実はもっとも楽なのは枝そのものにチャクラを宿らせて操るということなのだが、これはナルトに禁じられている。チャクラを"放出"したときの副産物である衝撃波だけで枝を立てていなければならないのだ。
 それが、この第二段階の修業なのだが――ややしてヒナタは十歩目になると、それが限界なのか足を止めた。

「ほぅ」

 その進歩に、ナルトは感心のため息をもらした。一週間前は、一歩離れたところからでも十秒しか出来ていなかったのに、これでは雲泥の差だ。この地味な一人でやる修業法はやっぱり成功だったのかもしれない。
 ふと、ほんとうにこれがヒナタの限界なのか、ナルトは試してみたくなった。
 さりげなくホーチから指弾用の鉄球を取り出すと、ヒナタに気付かれないように指で弾く。それほどスピードは出してないが、それでも命中すればかなりの衝撃を与えられるはずだ。
 ヒナタは集中しきっていて、放物線で飛んでいく鉄球に反応しない。

「ん?」

 なのに、それまで途切れることのなかったチャクラの放出が止まる。そして、ヒナタの方向に倒れていく枝のてっぺんに鉄球が当たり、弾かれたところを再び放出されたチャクラが押し支えた。
 ナルトにとっては満足のいく結果なのだが――なんとなく悔しい。

「ん」

 さらに、もう一度ナルトは指弾で妨害するが、これはなんとヒナタのチャクラで軌道をそらされてしまった。

「……、……、ん」

 大人げなく(まぁ、子供なのだが)ナルトが怒涛の三連撃を放つが――当たらない。チャクラの風に流されてしまい、どうしても飛び道具は外れてしまう。それに、ナルトの位置のほうがヒナタより枝から離れているということも影響しているのだろう。
 そんな事情に関係なく、ナルトは弟子に負けてしまったことに落ち込んだ。無表情のままではあるが、ある程度親しくなればはっきりとわかる程度には。けれど、珍しく気落ちしているときに限って――、

「ナルトくん、どうしたの……?」

 とっくに正気に戻っていたヒナタに見られてしまう。

「いや、どうもしない」

「そんなに私の下手だった? ごめんね、羽虫かなんか五匹くらいきたので集中切れちゃって……」

「いや、よくやった――あれだけ出来れば充分だ。しかし、羽虫か……」

 おそらくヒナタに悪意はない。ただ集中しすぎて記憶があいまいになっているだけなのだろうが――ナルトくんの指弾って虫が飛んでるようなスピードだね、と言われたも同然なナルトのショックは大きくて、

「訓練再開は午後一時、集合場所はここ。しっかり疲れを癒しておけ、組み手をやる――オレは一度帰る」

 連絡事項だけ済ませて、ふて寝するのに帰ってしまった。

「えっ、…………ナルトくん、どうしたのかな?」

 こうしてまた食事に誘う機会を逸した少女がいたとか。




 
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