言の笹舟 web小説レビューサイト

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NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 116

 そこは、ちょうど円形のような広場のようなところだった。
 日向家の者には解放されている、縄の巻かれた丸太などの器具が置かれた数ある訓練施設の一つ。近所迷惑にならないよう音を吸い込む林の中にあるため、真夜中に秘密特訓しようとうるさくならないという優れた立地条件にある静かな場所だった。
 だが、今日はいつもと違った。
 右手を掲げた少年とその右腕に向かって掌打を繰り出した和服の成人男性。一度の激突音の後、互いに動きを止める。
 それは一種異様な光景であり、目撃したヒナタは小さく悲鳴をあげた。
 口を開いたのは、ナルトが先だった。

「いきなり熱烈な歓迎だな……客人の右腕を砕きにくるのが、日向の流儀か? さすがは名家、庶民には理解できぬしきたりがあるらしい。それを一般的には野蛮な振る舞いと言うが、ここでは伝統的なご立派な行いなのだろう。閉鎖的な家によく見られる傾向だ、これが悪しき慣習というものか――貴重な経験をありがとう、ご老体」






 同世代と話すときとはうってかわった、雄弁かつ皮肉げな語りであった。
 まだしもイルカと話しているときは親しみがあるが、ヒアシにはそんなもの欠片もなかった。
 斬り捨てるような毒舌を吐くと、今だに押しつけられていた掌の力を利用してナルトは後ろに跳んだ。ヒアシはいきなりのことにも動じず、黙って下がるのを見届けた。

「ち、父上……ナルトくん……」

 言葉を躱すこともなく、いきなり激突した二人の師にヒナタは何も言えなくなってしまった。まえに腕を構え、唇に指を当てたまま、呆然と黙り込む。
 そうなったヒナタに構うことなく、ヒアシはナルトを見下ろした。

「私は、殺すつもりだったのだが……まぁいい、ヒナタを拐かしどこに連れていこうとしたかは知らぬが、日向に手出しすることがどういうことなのか身をもって知るがいい」

 まぁ、門番をスルーした侵入者とヒナタが人気ないところに一緒にいたら、ヒアシが勘違いするのも無理ないだろう。子供の姿に化け、白眼所持者――ヒナタを操り、他国に連れていく。そういったことが容易に想像できるほど、血継限界とは欲され血を呼ぶ呪われた血筋なのだ。
 血継限界とは、血族にのみ伝えられる特殊能力である。その一族になら目覚める可能性はあるが、受け継がれる保障はない。その保有者数と反比例するように強力な能力であることが多く、つねに他国からときには自国の者からも狙われている。
 警戒して、しすぎることはないのだが――
 いきなり頭蓋骨破裂させるような攻撃はやり過ぎだろ、ヒアシ?
 まぁ、それを平然と受けとめたナルトもナルトだけど。
 ともかく、誘拐犯だと誤解したままヒアシは構えをとった。

「ん。かかった……」

 ふと、ナルトがほくそ笑んだ。

「ヒナタ、下がっていろ。予定変更だ、あれに付き合わせる」

「な、ナルトくん、父上相手は無茶だよ……」

「無茶だから意味がある。あいつの攻撃に耐えれると証明すれば、遠慮なく組手できるようになるな? ああ、安心しろ――」

 殺気立った木ノ葉有数の実力者に睨まれながら、ナルトはそこで区切る。一拍置いてヒナタが落ち着くのを待って、

「ヒナタの親父を殺しはしない――オレが、手加減するからな」

 そんなことをヒアシに聞こえるように言ったりして。

「戯言を……」

 それでカッとするほど日向家当主は大人げなくはないが、半殺しにして尋問から、八割殺しにして拷問ぐらいには、ランクアップをとげたかもしれない。
 まだなにか目で訴えているヒナタを離れた茂みのほうに行かせると、改めて、二人は対峙した。
 ヒアシは、左手を突き出すような独特の構えをとっている。威風堂々とした隙のない、年季を感じさせるどっしりとした構え。
 千年を越える大樹を思わせる安定感、それほどの巨体ではないのに大きく見せる威圧感。木陰にいるヒナタのように、たいていの者はまず勝ち目がないと悟る。だが、ナルトにはいつもの無表情で怖じ気の色はない。
 ゆらりと、ナルトは身体を揺らす。

「うずまきナルト、参る」

「なっ、まさか九――っく」

「破!」

 忌み名にヒアシが思わず九尾と口走りそうになり、ここにいる娘と掟を思い出して言葉を詰まらせた瞬間――ナルトは獣じみた瞬発力を見せ、間合いをゼロにした。ヒアシの懐に飛び込むような形で、爆発的な踏み込みとともに拳を突き出す。
 ネジにもやったが、言葉で動揺を誘ってから攻撃を仕掛けるのはナルトの十八番だ。木ノ葉の者は、九尾の器たるナルトの言動に神経を尖らす。だからこそ、それを利用した戦い方を幼いときから編み出してきたのだ。
 それはデタラメな身体能力と合わさり、つねに先制攻撃を成功させる要因になってきた。
 だけど今回ばかりは、

「その程度、日向には届かぬ」

 呆気なくヒアシの大きな左手で受け止められた。
 どれほど力を込めた一撃だろうと、拳を振り切る前に止められては威力半減だ。造作もなく動きを止められ、ナルトの動きが一瞬止まる。が、

「まだ、だ」

 瞬時に技を切り替えたナルトは、電光石火の膝蹴りに移った。掴まれた右腕をもぎはなす動作さえ利用し、なおかつ小柄という利点を生かし、躊躇うことなく金的を潰しにかかる――が、ゾっと、全身を襲った悪寒にナルト無理矢理飛び退いた。

「誰であろうと、日向に刃向かうことは許さん」


"日向流柔拳法奥義・八卦掌回天"


 ――それは、まさに旋風だった。

 暴風のごときチャクラが土砂ごと諸共を巻き上げ、木っ端微塵に粉砕する。雲なき竜巻。龍の尾に薙ぎ払われたかのように、周辺一帯が破片となって飛び散った。
 かなり離れた場所にいたのに巻き込まんとする奔流に、ヒナタは木陰に隠れるしかなかった。すぐに白眼であたりを確かめるが、一瞬見逃したナルトの姿は見当らない。出来たてのクレーター中央に佇む父上と薙ぎ倒された木々しか見えず、ヒナタの心を絶望が覆った。

「そ、そんな……」

 傷だらけになって倒れているはずの探しに、ヒナタは安全な木陰から飛び出した。まだ使いこなせているわけでは白眼で、倒壊した木々の一本ずつを透視していく。意識を失ったナルトが押し潰されていないか、悪いイメージを振り払いながら一本また一本と確かめていくが……いない。

「――くん、ナルトくん……どこなの!?」

 半狂乱になって名を叫ぶヒナタ。
 その我が子に、ヒアシはゆっくりと掌を向けた――無言のまま。
 そして。
 気迫篭もった視線に睨まれたヒナタの頭上から、

「……どこにもいってないが? オレを見失うな、ヒナタ」

 声が、降った。

 スっと、猫のように音もなく。
 ヒナタを抱き締められるほど、すぐ後ろに。
 軽やかに、ナルトは降り立った。

 飛び退いたことによる、わずかな猶予。
 その時間を、ナルトはチャクラの盾を作り出すことに費やした。チャクラの奔流の直撃を防ぎ、なおかつ帆のようにして推進力に変えるために。その結果、ナルトは凧のごとく空高く舞い上がっていった。
 それは、絵巻物にあるような大昔の忍者の常套手段。
 上昇したため攻撃範囲からは逃れられ、また八卦掌回天の影響を受けたのは一瞬だから盾にかかる負担も少ない。あとの着地ぐらい、ナルトほどになれば造作もないことだった。
 そうやって傷ひとつなく天空から生還したのだが、

「――生きてる……ナルトくんが、生きてる……!」

「ヒナタ、泣くな――あれごときの攻撃は効かないと言ったはずだ。ああ、だから泣きやめ」

 滂沱たる涙には、困った。
 どうしていいかわからず、おろおろと戸惑う。振り返ったヒナタを抱き締めるような甲斐性もなく、ただ抱きつかれて泣かれるままでいるナルト。

「悪かった」

「お願いだから、もういなくならないで!」

「わかった。見える範囲内で戦い、完勝する――だから、心配するな」

 ぽんぽんとヒナタの肩をたたきながら、ナルトは約束した。




 ややして、ヒナタが落ち着いてまた木陰に隠れるまでを傍観してくれたヒアシに、

「あれが、絶対防御――八卦掌回天か?」

 クレーターを生み出すほどの奥義を受けてなお、震えることのない、不思議と響く声でナルトは問うた。

「いかにも。これは日向宗家にのみ伝わる奥義……答えよ、なぜ知っておる?」

 疑惑が、ヒアシの声音を厳しくする。
 ただ絶対防御というだけなら、言葉は違えど日向にはあると木ノ葉の忍に知れ渡っている。だが、その名までを知るものは日向一族か上忍あたりに限られる。それなのに知っているとなれば、当主として追求せねばならない。

「ん。クギだったか……とにかく日向っぽいやつをぶちのめしたとき、一楽に食いにいったらテウチが色々と教えてくれてな――」

「テウチか、それでは致し方あるまい……(クギ? 知らぬが、どうでもよかろう)」

 知らぬ名と旧知の名に、ヒアシの顔が微妙に歪む。懐かしがっているのかもしれないが、実の子にも不機嫌になったようにしか見えなかった。会話の間とてたゆむことのない闘気を浴びては、ヒナタがそうとしか見えないのも当然かもしれなかったが。
 それを見据えたまま、不敵な無表情でナルトは言葉を続けた。

「――オレは、絶対・無敵・最強といった言葉が嫌いだ。だからか、その絶対らしい八卦掌回天の防御法と破り方を思いついてしまってな。どうせだから、ついでに試してみたのだが異論はないな?」

「面白い、そのふざけた口を聞けぬようにしてやろう――八卦掌回天でな」


 ヒアシとて、馬鹿ではない。

 もう九尾の器――ナルトが、娘をさらっていこうとしたのではないことぐらいわかっている。

 娘になんらかの幻術なり洗脳なり暗示などがあれば、経絡系に現れる"歪み"をヒアシの白眼が見つけだせたはずだ。ナルトに抱きついている間、ただ複雑な心境で見守っているだけでなく、徹底的に時間かけて操られているかどうか調査していたのだから。
 脅したり、騙して、連れていこうとしていないことは二人の会話でわかる。
 自分の過ち、誤解だったことは素直に認められる。
 そうであれば、妖狐が封じられた赤子には――恩はあっても――恨みはない。
 当主という立場にあるが、だからこそ謝罪するぐらいの潔さはヒアシにはある。
 だが、ナルトが自分との戦いを――どういう理由によるものかはわからないが――望んでいるというのならば、決着をつけてから、それから詫びることにする。ヒアシ自身、九尾の器となった赤子がどういう風に育ったのか、この目と拳で見極めたいという気持ちがないわけでもないのだから。

 ……日向の歴史が生んだ奥義、八卦掌回天――破れるものなら破ってみよ!

 そう、ヒアシは意気込んだとか。




 
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