言の笹舟 web小説レビューサイト

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NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 114

「…………くっ、何故こんなことに?」

 期待に満ちた視線に囲まれながら、うずまきナルトはうめいた。
 時は、昼休みになったばかり。
 場所は、アカデミーの裏庭にある一本杉の下。
 とくに変哲のない、ただ目印にはなるから待ち合わせ場所になっただけのところ。なのにナルトが到着したときには――隠れているつもりなのだろうが――十数人の女子がいたのだ。ナルトとてうめきたくなる。
 ついそのまま立ち去ろうとしてしまうが、

「あっ、ナルトくん。ど、どうしたの……?」






 待ち合わせ相手に見つかってしまっては断念するしかなかった。
 いつものようにややどもりながらヒナタに挨拶されてしまっては、無視できるほどナルトも非道ではない。というか、この監視下では下手するとすぐ女子に総スカンを喰らう――それだけはするなとシカマルから釘をさされていた。
 あの最近はツッコミ疲れもしていてなおさらめんどくさそーにしているシカマルがかなり真剣になっていたこともあり、またタマモからも忠告されていたため、あの謎の会にはナルトも警戒しているのだ。

「いや。それより早いな、食事をとってからと言ったはずだが……」

 誤魔化しながら、ナルトは尋ねた。
 今日の午前は教室の授業ばっかりだったから、修業の開始は午後になってからということになっていた。それで、いつもナルトが弁当を食べている所でもある待ち合わせ場所だから午前が終わってすぐに訪れたのに――もうヒナタ+αが待ち構えていたら驚くだろう。

「く、くノ一クラスは終わるの早かったから……」

「そうか。だが、まだ修業には時間はあるが?」

「そ、その、天気が良かったから……」

 ちらっと、ヒナタは手に持っていたものを掲げてみせる。一段だけど古風なお重。あまり食べそうにはみえないヒナタの弁当なのだろう。 突き抜けるような快晴だから、ちょっと外に出て食べようと思うのは不自然ではないのだが……

「で、そのココロは?」

 周囲が怪しすぎる。

「皆が……そ……その…………」

 露骨に視線をさまよわせながら、躊躇するヒナタ。もう〈ナルトの身分違いな恋を応援する会〉改め〈崖っぷちの高嶺の花会〉に一緒に弁当食べてこいと言われたのは明白なのだが、こうも見守られているとバラせないのだろう。

「もういい。尋ねたオレが悪かった」

「ううん。私こそ、ごめんね……」

 互いに謝ると、もう弁当を広げるしかなかった二人。
 けっこう女子らの権力は馬鹿にできない、そんな教訓のある出来事であった。


 ヒナタの弁当の中身は、古風といっていいような落ち着いた家庭料理が詰められたものだった。造形に凝られた見た目も美しい、もう一種の作品といえる出来栄え。それだけに冷めていても美味しそうだった。
 対して、ナルトの弁当は――

「ね、ねぇ、ナルト君……それって……?」

「ん。ただのヒグラシウズラの揚げ卵だが? 今朝、森で取れたばかりだから鮮度はいい」

「そ、それじゃなくって……そっちの、く、串のは? う、ウナギだよね……?」

 震える声音のままヒナタが指差したのは、ナルトの弁当箱の二段あるうちの下に収められている物体。縄のような形をしたそれは折り重ねるように曲げながら木の棒に貫かれている。
 それを、

「ごく普通の蛇の串焼きだが……ん、食べたいのか?」

 ナルトは持つと、すっと差し出したりして。

「はぅ……」

 蛇の焼死体を直視したヒナタは気絶したりして。
 そしてゴソゴソっと、茂みやら、土中や、木の上からくノ一忍者が沸いたりして。

『あんたは女の子に何するのよ!』

 彼女らは怒鳴り付けた勢いのまま、ホルスターから抜き出した手裏剣を――投げた。
 それを躱そうとしたナルトだったが、倒れたヒナタに当たることに気付いてしまい、動きを止めてしまったとさ。




「それは……お前が悪いだろ。女ってのは、ゲテモノ嫌いなのが多いんだ。まぁ、飛び道具はやりすぎだろーけどな」

 放課後、ナルトにあったことを聞かされたシカマルはぼやいた。
 なんかナルトにはどうしようもない〈崖っぷちの高嶺の花会〉の出現もあり、その対策会議を当事者二人とオバカトリオで開催することになった。その前に、ナルトは昼の騒ぎを説明していたのだった。
 ちなみに、チョウジはスナック菓子をむさぼって聞いていなかったが。

「だけど、よく当たらなかったよな」

「ん。ヒナタを抱えながら手裏剣を躱すのには苦労した」

 ナルトは無傷のまま言うが、普通は変わり身の術でもないと血だらけになっているはずだが……デタラメな身体能力である。
 けれど、逃げれば解決ということではないらしい。
 女子たちの噂を聞いてからやってきたいのが楽しげに、

「それで、今度はお姫さま抱っこしたって大騒ぎになってたわよ」

 と、笑いながら告げる。

「あぅ、そんな……お姫さま抱っこって…………(ブツブツ)」

「他にどうすれと……?」

 ヒナタは真っ赤になって呟きだし、ナルトはがっくりとうなだれる。倒れている相手を拾うのに手っ取りばやいのは、足を引きずったりしないかぎりお姫さま抱っこだ。そうしなければならない情況に追い込んでおきながら、それを話題にするとは。ナルトでなくても怒りを通り越して疲れる。

「まぁまぁ、あとヒナタに花束買うときはうちの店に――」

 からかい半分商売半分に売り込んだいのだったか、首に突き付けられた冷たい感触に言葉を止めた。
 抜くところさえ見せず、クナイを握り締めたナルトは無表情のまま、

「悪いな。最近、あまり余裕がない――ふと殺してしまいそうなぐらいには」

 物騒なことを漏らした。あまり人付き合いの経験がナルトには、ここ数日の出来事はちょっと慌ただしすぎたようだ。
 いのは慌ててジョークということにしたが、うっすらと冷汗をかいていたとか。


「で、どうするべきか。皆の意見を聞きたい」

 いのの汗が引き、ヒナタが正気に戻ったあたりを見計らってナルトが尋ねた。

「最初に言っておくが、七十五日を待つというのはナシだ」

「大体、そんくらいなときには定着しちまってるからな。手を打つなら今のうちだろーが、そんな嫌なのかよ?」

 いきなりシカマルが核心を尋ねた。気になるのか、ヒナタがじっとナルトの言葉を待つ。

「疲れる。それに、なによりも修業にならない」

 ナルトはきっぱりと断言したが、そこに恋仲に思われていることに関する感想はなかった。

「そういや、どうしてヒナタを弟子にしたんだ? ほぼ初対面のはずだったじゃねぇか?」

 さらに追求するシカマル。
 彼にしては、いつもいつも訳がわからないナルトだったか、どことなく人間嫌いだと思っていた。どんな相手との約束だろうと破ったりはしないが、それは平気で約束を破る人間への嫌悪感を裏返したもの。なのに、ときたまナルトは人助けなどシカマルの予想から外れたことをする。行動パターンが読めないから聞いておこうとを思った。

「手だな」

「……て? つーと五本の指があって手相やら指紋やらがある、その手かよ?」

「ん。そうだ」

 ナルトは無造作に、隣に座っていたヒナタの手を掴んでみせた。いきなりのことに慌てる少女をよそ目にすっと指を走らせ開かせる。
 それは、鍛えられた手だった。
 ただ傷に荒れているのではない、毎日毎日薬湯にひたし手当てをしているのに追い付かず、皮が厚くなり、大樹に打ち付けても傷つかなくなった掌。まだ幼い少女には似付かわしくないはずの、だけど違和感を感じないほどに身体に馴染んだ手だ。
 こうなるのにどれだけの月日を注ぎ込んだのか。

「これを、オレは気に入った。だから、イルカに頼まれたこと以上をするつもりになった――それだけだ」

 ナルトの体術は邪道の極みともいえるもの。九尾の生命力に頼りきり、さらには人の姑息さを追い求めた――だからこそ、真っ当に鍛錬する者が枯れようとしているのを見過ごせなかったのかもしれない。
 そっと握り締められがら言われて真っ赤になった少女がいたりするが、ナルトは構わず真顔のまま言い切った。もうフリーズしてしまったヒナタを残し、こそこそっといのとシカマルが集まる。

「ねぇ、あれって一目惚れしたってこと?」

「自覚はねぇだろーが言ってることはそれだな。けどな、恋愛の好きなのか人としての好きなのかはわかんねぇよ」

「でも、かなり好意的よね?」

「まぁな。あとは転び方しだいだな」

「で、参考になる意見はあるのかないのか?」

 ナルトに尋ねられ、小声で話していた二人は戻った。そして、しばらく思案すると考えを告げる。

「そうだな、ヒナタを強くするしかねーんじゃねぇか? なにより実績だろ」

「そうよねー、私のほうから言うのも限度あるし。しっかり弟子っていうことにしたら、今ほど暴走することはなくなると思うわよ?」

「めんどくせぇな。修業の邪魔をどうにかするには修業しないとならない……どうするよ?」

 シカマルの言う通り、強くするというだけでは問題の解決にならない。堂堂巡りだ。
 だが、ヒナタを見やったナルトは自信ある顔で、

「別に、強くするだけなら時間はかからない――それでいくか」

 言ったりするが、弱々しくヒナタは首を振る。

「えっ、そ、そんなの出来ないよ……」

 これまでの修業は効き目なしだった。
 だが、

「ん。最低限オレに柔拳叩きつけれるようになれば――そうだな、キバやサスケあたりに手加減つきで勝てるようになる。三日あれば」

 そう予想を述べたナルトは、すぐにヒナタに必殺拳を自分に向かって放てるようにする策を練ったとか。




 
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