言の笹舟 web小説レビューサイト

 ここでは私の趣味嗜好を基準にネット小説をご紹介させてもらってます。
人気小説・ランキング上位のもの・捜索依頼されているものなどを読んで、気に入ったもののみレビューします。
2013年はこのブログだけでなくやる夫スレでも頑張っていきますよー!



スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。




 

  



スキルコレクター【ハンターハンター 二次創作・男主人公】[06-助言 4-]



 ジャポンとアイジエン大陸の最西端を結んだ直線の中央にある海上。

 このポイントに、とある島があることは表向きには公表されてはいなかった。

 念を修行中の高弟や本能的にオーラを行使する魔獣などが押し込められた人工の秘境――幽玄島。

 ここに百の念能力を習得したという逸話を残すことになる"伝説のスキルコレクター"が生まれようとしていた。

 この物語は、念の秘密を解き明かさんとあがく一人のトリッパーの物語である。







 波瀬カジキには、『HUNTER×HUNTER』という漫画の知識が備わっている。

 どのようにこの漫画の世界を認識しているのか――どういう仮説を立てているのか、は、今語ることではないとして。
 重要なのは原作キャラの念能力を知っているということである。

 カジキはこの知識を研究と己の能力開発に活用している。
 彼の自論は、いつかアビーに語った『基本的にすべての応用技は個別能力を含めて基礎の上に成り立っている』というものなので、登場人物たちの個別能力を仮説を積み重ねながら分析していって、最終的にはどのような基礎によって構築されているのかを、ある程度説明できるようにしてしまったのだ。

 漫画という数少ない情報量の中からの逆算のため間違っている可能性のほうが高いが、似ていることをできるようになっただけで、カジキは満足している。

 その一つに、ナックルの『天上不知唯我独損(ハコワレ)』は含まれていた。
 ポットクリンを対象にくくりつける技法を、関連付け、と命名して、疑似的に再現できるようにしたのだ。
 オーラの移動のコントロールを、能力者の思念ではなく特定の対象の位置にシンクロさせるという手法である。

 カジキはこの関連付けに"円"と念弾を組み合わせてみた。
 結果生まれたのは、追跡サーチ弾と便宜上呼ばれることになる"絶"殺しだった。

 一度対象になってしまえば、カジキが念弾を維持できる範囲内にいるかぎりは常に位置を認識されることになるのだ。
 位置を知覚できるというのは念弾の特性である。

 この追跡サーチ弾、個別能力と呼べるほど洗練されていないため問題点はいくつか残っている。

 ぶっちゃけると"円"としてはほとんど機能していない。
 正確にいうと内部の情報を収集するという機能は残っているもののカジキ本人にその情報を伝達することができなく、データを蓄積しておくことすらできない。
 メモリを割かないようにされているための本末転倒さだった。

 さらにはカジキから百メートル以上離れると霧散するとか。
 時間経過と共に徐々に狭まっていって、三時間後には消滅するとか。
 自分以外の"円"を拒絶するイメージを強く持って"円"を展開できる実力者相手には塗りつぶされるとか。

 弱点だらけで、ナックルみたいに「無害ゆえに無敵!!」と言うことなんてとうていできっこない欠陥品だった。
 唯一の救いは、弱点の一番最後にあげた「"円"を拒絶するイメージ」とやらはそういう訓練をしていない念能力者にはできないということだろうか。まぁ、よっぽどの天才なら初チャレンジだろうと成功させてしまうけど。せっかく、オーラは非物質――物質のように空間を占有する性質は持っていないので、普通の念能力は素通りするために"円"を排除することはできないという発見を利用しているのに……。

 で、"絶"殺しと言われるようになった云われだが。
 これは、キサキと共にとにかく気配を隠すことがうまい暗殺者と対決したとき、この追跡サーチ弾によって楽勝だっという事実に由来する。一度関連付けてしまえば、カジキがその居場所を口にだして知らせるまでもなかった。"円"というとてつもなく目立つものを背負っているのだからキサキに見つけられないわけがない。
 ついでに変化系の技術を応用してカラフルな"円"にしていたし。

 個人戦のときはもちろん集団戦のときにも役立つのがこの追跡サーチ弾である。
 これで個別能力じゃないというのだから――放出系なら練習すればできるようになる技術だというのだから驚きだ。




 しかし、何故にこの見晴らしのいいコロシアムの中にて、ルッケルに使ったのかというと。
 弱点を補う技術を見つけたからである。




「まあ、このままじゃ居場所くらいしかわからないんだけど――僕の"円"と合わせれば、ごく普通の"円"と変わらない調査能力を得るんだ」

 カジキはそういうとルッケルの方のはそのままに自分を中心としている"円"を張りなおした。
 そして、右手の上に念弾を浮かべると「求めよ」という言葉と共に撃ちだす。

 ここでおかしなことがおこった。

 普通の場合は、念弾は己の"円"と干渉し合うことはなく素通りすることになるのだ。
 なのに"円"と外との境目に辿りついた念弾はそのまま"円"を伸びしながら突き進んでいったのだった。

 先ほどと違って、"円"の中にカジキがいることは間違いない。
 なのに風船が中から棒に突かれているのかのごとく、半球上だった"円"は変形、念弾の放たれた方向――ルッケルの方へと変形していっている。

「しまった!」

 ルッケルは避けようとしていたのだが……直撃は楽に避けられたものの、彼を中心に半径10メートルにわたって広がっている"円"に触れさせないようにするのは難しく、"円"の端っこと接触させてしまった。

 "円"と引き延ばされてきた"円"がぶつかりあい、混ざる。

「連結完了、調査を開始と――ダメだよ、こんなにあっさりと捕まったら。操作系相手だったら即敗北だよ」

 水あめを割り箸でぐるぐると回して引き離したときにできる、二本の割り箸を繋ぐ細い橋。
 それっぽいのが二人の"円"の間にできてしまっていた。

 これで二つと"円"は繋がって、孤立しているために届いていなかった情報がカジキに流れ込むようになった。
 ルッケルはどのように動いているのか、オーラをどのくらい纏っているのか、そして、道力をどのように纏っているのか。

 細かい解析をできているわけではないとはいえ十二分だった。
 調べられることなどいくらでもある。




「じゃあ精査させてもらうよ。まずは念弾」

 カジキはそういうと拳大の念弾をいくつか作成すると、てきとうな方向にばらまいた。

 ルッケルはでたらめな向きに飛来していく念弾に疑問符を浮かべ。

 カーブしだしたことに気付き、あわてて逃げだした。
 十分道力によってガードできる範囲内ではあるが、こうも立て続けに怪しいことをされると避けたくなってくるのが人の常である。

 しかし、すべての念弾はルッケルの逃げた方向へ弧を描き追ってくる。

「その念弾は"円"にマークされている間はどこまでも追いかけていくから頑張って」

 カジキはその様子をのんびりと眺めながらも実はせわしく情報を処理していた。
 個別能力にしていないデメリットはここにも出ていて、せっかく送られてきている"円"の情報もリアルタイムに処理していかないと無駄になってしまうのだ。だから、念弾を思考制御するのではなく送られてくる位置情報をそのまま追わせている。故に――

「だったらこういうのはどうですか!」

 と、ルッケルは叫びながら観客席のほうに駆け寄ると仕切りとなっている壁の直前で急転回した。

「あっ、そっちに行くと――」

 カジキの呼びかけは間に合うことなく。

 カーブ程度じゃ曲がり切れなかった念弾の半数は壁に激突し、残ったうちのさらなる半数は観客席のほうに飛び込み、たまたまそこにいたガジリンに撃ち落とされた。
 そうしなければキサキ・ガジリン・エレナたちの座っている場所に降り注ぐことになっていたためカジキはその手助けを抗議しなかったが、巻き込む形になったルッケルの顔は青ざめている。彼には転進する直前はっきりと見えたのだ。わざわざこっちに逃げてくるとはいい度胸だ、あとでたっぷりと稽古をつけてやると語っている己の師匠の顔が。

 そんな風に動揺したのが悪かったのか。

 ルッケルの逃走方向から向かってきていた一発にぶつかったのを皮切りに残った念弾すべてが命中する。
 まさに泣きっ面に蜂だった。

 しかし。
 ルッケルを覆う道力はこのくらいの威力では貫かれない。
 結局のところは、ルッケルの恐れていたヘンな効果も付与されていなく無傷のまま終わった。

 だが……カジキは独り満足そうにうなづいていた。

「なるほどなるほど。そうなっているわけなのか――」

 コメカミをつんつんと人差し指でつつくきながらぶつぶつと言っていた。
 独り言を呟きながら検証を進めていっているのだ。

「くっ」

 その様子には流石にいらっとしたのか、ルッケルはダッシュをかまし、道力をたっぷりと乗せたタックルを仕掛けた。
 が。
 追跡サーチ弾によって、その予備動作を見抜いていたカジキは軽やかにジャンプして回避。
 そして、念弾を足場にほっという掛け声と共に地面へと着地する。
 空中という無防備なところに長く居たくないがための、滞空時間を減らす小技だった。

 カジキは降り立つと、足裏を通り過ぎていったルッケルへなごやかに話しかけた。

「ルッケル君。ちょっとこの手見てみな」

「? なんですか……?」

 ルッケルによく見えるように開かれている右手には何もない。
 パーのかたちになっているのだから何も掴まれていないし掌に何かが書き込まれているわけじゃない。

 というのを確認したのを見てとったカジキは告げる。


「僕の具現化系を見せてあげるよ」


 放出系が、対極側にある具現化系の能力を使ってみせると宣言した。
 ありえない――ルッケルはそう思った。

 この場合、習得率はさほどの問題ではない。普通だったら苦手系統の能力はランクを下げれば使うことは可能とはいえ、しかし、放出系が具現化系を扱うことだけはありえないのだ。
 何故なら、40パーセントにダウンするのは習得率だけではなく威力・精度もそうなのだから。
 具現する瞬間というのは精密なオーラコントロールを必要とする。
 なのに、たかが四割の精度でいったいなにを具現化できるというのだろうか。

 疑惑の表情を浮かべるルッケルへにやりとした笑みを浮かべるとカジキは掌に意識を集中させた。
 するとそこに小さな渦ができる。
 茶こけた、なにか細かい粒状のものが螺旋状に渦巻いていた。

 ルッケルの視力はその正体を看破した。

「砂、ですか?」

「そうだよ。こういうふうに目潰しとして使うんだよ」

「なっ!?」

 ――言うなり、顔めがけてその砂をぶちまけるカジキ。極悪だった。
 道力によって砂自体は目に入らなかったものの。
 視界を塞がれた一瞬の間にカジキの姿はどこにも見えなくなってしまっていた。

 ルッケルは注意深くあたりを見回すが"絶"を使っているのかまったく感じられなかった。そして、ルッケルは実戦レベルの"円"を使えていなかった。当然ながら、カジキに張り付けられている"円"はルッケルに情報をもたらすことはない。と、そこまで考えたときにルッケルは"円"と"円"を繋いでいる橋を追えばいいんじゃないのかということに気付いた。

 見えにくい"円"を"凝"で調べていく。が、よっぽど巧妙な"隠"をされているのかどちらの方向へ繋がっているのか確認できない。
 しかし、うっすらとした輝きに"円"が消されていないことだけはわかった。

 ルッケルはさらにオーラを目に集めようとして……

 背後からぶん殴られた。"硬"で。 

「でも、痛くありませんよっ!」

 おそらくずっと自分の死角に潜んでいたのであろうカジキにルッケルは裏拳を叩き込む。
 鈍い衝撃音が鳴り響いた。

 けど、カジキは慣れたもので"硬"によるガードをしながら自ら後ろに跳ぶことで衝撃を逃してしまう。
 そのまま講座のときと同じく、10メートルほどの距離まで離れていく。












 ルッケルは追いかけることができなかった。
 脳裏に、師匠に言われた言葉が蘇っていたのだった。

『二十歳やそこらの中じゃ一番巧いんじゃねーか?
 致命的にパワー不足なんだがよ、上手にやりくりして見事に有効活用していやがる。
 それに相手の技を無力化する技術に長けていんな――クリーンヒットを一発も貰っていねぇだろそのビデオでも。
 戦いの流れを握る見本にすんならこいつにしとけよ、ルッケル』

 道力は接近戦と防御に優れた性能を発揮する能力。
 だから、この二つの分野においてスペック的にカジキを上回っているのは確実なのだった。
 このことはすべての攻撃を無効にできていることから明白だ。

 なのに――ルッケルはいまだにカジキへ有効打を与えられていない。
 最初のうちはよかった。
 自分の防御はどこまで通用するのかというテストという名目が残っていたのだから。

 しかし、試合を進めていっているうちに焦りは募っていった。
 カウンターにはさらにカウンターを合わせられ、タックルはかわされ、ようやくの反撃は受け止められる。

 実際に攻撃したものだけではない。
 他にももっと仕掛けようとしてはいるのだが……目線やちょっとした仕草によってことごとく『起こり』の部分で潰されてしまっている。
 相手にされていないほどの技量差。

「君の道力、だいだいのことはわかってきたよ」

 だからこそ――自信満々にそう告げるカジキが、にくたらしく思えてきたルッケルだった。






「君は移動をするとき、脚力を強化するのにオーラを使っていた。
 さらには"凝"をしてオーラを見ようとしたとき、目に集まったのはオーラだった。
 つまり、逆にいうとこれらの用途には道力は使っていないということ――使えないんだね?」

 それは確認という体裁をとっているもののもはや断定だった。
 カジキは追跡サーチ弾からいったい何を読み取ったというのだろうか。
 確信を込められた言葉は並べられていく。

「ここからは推測を過分に含むことになるのだけど――
 おそらく、道力は攻防力などのごく狭い範囲内の使い方しかできない。
 自己治癒力の強化などには使えない」

「ここは、ギグッ、とでも言うべきでしょうか」

 ルッケルはぎこちない返答をしてしまうほど動揺してしまっていた。
 まるで記憶を読みとられているかのように言い当てられていく。
 もはやカジキへの尊敬の念は畏敬へ――そして、純粋なる畏れとなりつつあった。

 さらにさらにさらに。
 カジキは楽しげにべらべらと述べていく。

「目潰しのあとの"隠"と"硬"の一撃。
 あれには君はまったく反応できていなかった……なのに道力は勝手に集い、万全の防御を行った。
 これはいちいち"流"をしなくちゃならないオーラでは考えられないことだよ。
 では、道力は自動的に"流"を行うような性質を持っているのだろうか?
 違うだろうな。そのぐらいの能力だったらいくらかのダメージは通っていたハズ。

 逆に考えると"流"をしない、必要としない、そういう性質ということになる。

 つまり、道力は必要になったとき必要になった個所へタイムラグなく集中する性質を持っていることになる。

 いやぁ~想像するのはとても面白いよ」




 ――殺せと。




 能力者の本能はこれ以上を喋らせるなとささやいていた。
 これは、オーラによって別の精神エネルギーと具現化するというカジキのアイディアとは関係のない部分。
 師のガジリンとのワンツーマン体制だからこそつくりあげることをできた能力。

 知られてはならない。
 あいつは一言一句をこちらの反応をうかがいながら言の葉にしていくことで急速に近づいてきている。
 能力の核心へ。
 どすどすと土足のまま踏み込んできている。

 ……頭じゃわかっているのだ。
 カジキは、ガジリンとキサキの交した約束によってルッケルの能力を口外すれば命を奪われる運命にあることはわかっているのだ。
 世の中にはその約束が守られているのかどうかをチェックできる能力者がいて。
 約束を破ったのなら、カジキを始末する方法などいくらでもあって。
 だからこそ約束は守られるのだということは。

 けれど。
 けれど。
 けれど。

「なるほど。オーラによって具現化しているだけに10のオーラから100の道力を作れるみたいな理不尽はないみたいだ。せいぜい、自分の個別能力への思い入れによって1.5~2倍にするのが限度。一度に具現化していられる量はAOP(顕在オーラ量)の影響を受けていそうだね。ああ、そうか…………

 戦闘時にはオーラを六倍から十倍消費するっていう法則は君に当てはまらないんだ。
 いや、それじゃ目分量とはいえあまりに計算が合わない。

 となると――プラス、その道力の維持にかかるオーラ量は通常の"堅"と比べると六分の一以下に抑えられているんだ。これでぴったりと計算が合う」

 殺さないととルッケルの理性は弾けとんだ。
 同時に、いくつかの段階ごとに分けて一定量を維持するようコントロールしてきた道力はマックスに跳ね上がる。
 リミッターはいらなかった。


 次の言葉を発するまでに仕留めると決まった。
 どこかでなにかがカチリと鳴った。


 全力全開で。


 瞬発力を高めるために道力以外のすべてのオーラは脚部へ集中させ。





 いざ、






 ――いいことを教えよう。






 一言だ。

 たったの一言で。

 じりじりと隙をうかがっていたルッケルの動きは制止させられた。完全に。


 能力の詳細を知られることで発生するリスク、と、カジキに助言されることで得られるリターン。

 強制的に二つを天秤に乗せられて――計量させられる。
 そういう悪魔のごときささやきだったのだ。

「君の『道力』は従来の36倍以上という驚異の継戦能力を誇っている。
 けど、そのメリットを得ると同時にできてしまったデメリットには気づいているのかな?

 その顔――そう、その顔だ。

 わかっていない者特有の表情だよ。ルッケルくん」

 では……そのときのカジキの表情はいったいどう表現すればいいのか。

 科学者――? 
 否。
 
 マッドサイエンティスト――?
 否。

 深遠の覗いているかのごとき真っ黒い瞳は。
 違った。 
 違っている。

 根本的かつ次元的に違ってきているそういう虚無さなのだ。

 悪魔の果実だと。

 恐いと。

 ルッケル少年はがたがたと震えていた。










「なんで戦闘中は通常の六倍以上のオーラを消費してしまうのだと思う?」

「…………………………"凝""流""堅"などの応用技を使うからだと教わりました」

「けど、それらの応用技を練習しているときにはそんな六倍のオーラなんて使っていないんだ。
 そりゃ、もちろん"纏"に比べると消費は増えるけどね」

 だから僕はまったく新しい説を唱えているとカジキは言った。
 ルッケルは聞くしかなかった。

「"周"をすると、オーラは能力者の無意識の望みに沿った属性に染まっていく。例えば、このナイフに――」

「……!」

 カジキは右手をくるりとひるがえすとその手中に短剣を出現させる。
 ルッケルには突如現れたようにしか見えなかった。

 これは手品っぽくやってはいるけど、たんに暗器を取り出しただけのことで具現化ではない。
 まぁ能力者の動体視力にすら捕えさせない超スピードは凄いものの「手品」の範疇にあることは間違いない。

 が、ついさきほど砂の具現を見せつけられたルッケルにはどのように映ったのだろうか。
 普通の物質と具現化されたオーラは目に"凝"をしたって見わけがつかないのだ。
 事実を誤認させられるのは当然の成り行きだった。

 カジキは具現化系の能力を扱うことができる、という誤解は、苦手系統をここまでできるのなら得意の放出系はどこまでできるのかという評価の情報修正を生み、さらなるプレッシャーとなってルッケルに襲いかかった。そして、そういう実力者の言葉だからこそ自然と信憑性はまし、カジキの解説に耳を傾けることになっていく。
 
「――このナイフにオーラを注ぎ込んだとき、オーラは能力者の『よく斬れるようになれ』という無意識の願いに応えて『斬る』という概念に染まることになる」

 カジキの体を覆っていた"纏"のオーラはナイフに流れていって、刃がてらりと妖しい輝きをみせる。
 まったく無駄のない見事な"周"だった。
 ぞっとするほど余分のない刃。
 
「けど、この『斬る』という概念に染まったオーラを"纏"しているほうに戻そうとしたってうまくいかなんだ。
 絶対にできないというわけじゃないけど、瞑想なみの精神集中をできている状態じゃないと厳しく――戦闘中には無理すぎる。だから」

 ――いらなくなったら捨てなくちゃならないんだ。

 と、カジキはナイフを振った。

 講座に集中するルッケルの意識の合間を縫うかのようなタイミングで、刃状のオーラは放たれ。
 頬の皮一枚切り裂くコースで飛来していった念の刃はルッケルの道力に阻まれ、消失した。

 とはいえ、人一人の首を刎ねるには十分な威力の持った斬撃だったわけで。

 なのにカジキは何事もなかったように続けていく。
 ルッケルは一言とて抗議を漏らさない。

「このように使わなかった分のオーラは放棄しなくちゃならない。じゃないとAOP(顕在オーラ量)の容量を圧迫することになるからね。だから、これはPOP(潜在オーラ量)にはまったく優しくない、贅沢な使い方なんだよ……
 そして、この特定の概念に染まったオーラは再利用しにくいという現象は"周"だけに起きるわけじゃないんだ。
 能力発動の準備中に潰された場合、発動させたときとほとんど変わらないくらい疲労するのはこれが原因だったりする。

 で、この現象は戦闘中のオーラにとくに顕著に現れる」

 ――君の能力のデメリットはここだよ。
 ――ここがなくなっているんだ。

 と、告げるカジキにルッケルはごくりと唾を呑みこんだのだった。
 流石に喉が枯れてきたのかカジキはしばし「あー、うー」と発声練習をしたあとに続きを述べた。

「生存本能ってやつなんだろうね。能力者は反射的にオーラの性質を次々に切り替えていく。殴られそうになったら衝撃に強いオーラに、腕を掴まれそうになったら関節技に強いオーラに、燃やされそうになったら耐火性能の高いオーラに――というようにね。これは攻撃をされる直前にだけじゃなく、向き合っているとき、次蹴ってきそうだなっ、って思い浮かべてしまっただけで反射的に切り替わってしまうんだ。だから、命の危険性のある戦闘時には急激にオーラを消費していくことになる。

 けど、君の念能力はその反射の部分をオミットして省エネを追求したものだ。

 そのことはメリットを生んだけど、同時にデメリットもつくってしまったんじゃないかな」

 ――君の防御は性質の異なる同時・連続攻撃に弱い。
 ――その道力だって、特定の攻撃に強い属性に切り替えることはできるだろうけど……反射的にはできていない。
 ――だから、性質の切り替えにまごついている瞬間こそ君の弱点っていうことになる。

 この念を開発したのはルッケルだ。
 なのに、カジキの説明には反論できる余地は残されていなかった。
 違和感はまったくない。

 本人すら知らなかった道力の一面を言い当てられ、そのことに間違いはないということだけは道力の使い手たるルッケルにはわかってしまっているのだ。
 
 大いに冷酷極まる分析だった。




 しかし。
 ああ、しかしだ。




「じゃあ今までのところを検証してみようか、実戦で」






 オペはまだまだ終わらない。






 名称 / 一掴みの砂(ミニマムサーブルス)

 主系統 / 具現化系

 効果 / てきとうに粒上の物質を具現化する能力。
     あまりに雑なイメージのため特殊効果を付与することは不可能。
     目潰しくらいにしか使えない。

 制約 / 能力を行使すると翌日以降、その量に応じた期間この能力を行使することができなくなる。
     1キログラムを具現するごとに十日間使えなくなる。

 メモ / 具現化系ってどういうものだろうという好奇心によって開発された念。
     主にハッタリに使われている。

 ○○ / 具現化系の精度に+0.2%のボーナス






【具現化している品と操作系の愛用品の名称を募集中! 元ネタを明記してもらえるなら何かの作品のもありで。このままでは両方「念具」になっちゃいそうです】




 
前へ目次次へ



関連記事


 

  



コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://kotonosasabune.blog45.fc2.com/tb.php/130-2aef254b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)






FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。