言の笹舟 web小説レビューサイト

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NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 113

 ナルトのクラス内の位置は微妙である。
 とくに人当たりは良くないため、落第生ということもありクラスメイトとの交友は少ない。なのに奈良・山中・秋道の仲良し三人組とは話しているため、孤立しているわけではない。だからこそ、なおさら微妙な立場となっているといえる。
 クラスメイトにしては、とりあえず言葉は通じるが話せない相手といった印象である。無表情のまま毒舌を吐くことがあるナルトに慣れるのは、けっこう難しいのだ。
 だからこそ会話が続かず、自然と敬遠されることになっていた。
 ――だが。

「こ、こんにちは……昨日はありがと、ナルトくん……」






 小声ながらも、そのナルトに挨拶をしたか弱い少女――ヒナタに講堂が騒めいた。
 表立った活動は確認できていないがファンクラブさえ存在するという、くノ一クラスの美少女――ここは忍者学校、この年齢になっても大人しい少女というのは希少価値が出てくる――ヒナタが、不良っぽいナルトに話し掛ける。
 それは事件と言っていい出来事だった。
 昨晩のテレビなどを語っていた雑談が静まり、講堂全体(とくに女子)が聞き耳をたてる。
 そんなことは気にせず、仲良し三人組の隣に座っていたナルトは振り返ると、

「ん――運動に適した服装をしてきたようだな。良い判断だ」

 胸元あたりを一瞥すると簡単に誉めた。ちなみに、ほとんどヒナタは昨日と変わらない格好をしているようにしか見えない。だが、

「え! わ、わかるの?」

 ヒナタが動揺するということは、見えないはずのところが違うらしい。感付いたのか、ナルトを押し寄せやってきたいのが小声でぼそぼそっと確かめると、ヒナタは恥ずかしそうにしながらもこっくりとうなずいた。
 なぜか、いのは視線を落とする溜め息をついた。けれど、その落ち込んだ理由が語られることはないだろう。
 あまり関わるべきではないと判断したシカマルが、気になっていたことをナルトに尋ねた。

「お前ら、挨拶するような仲だったか?」

 まぁシカマルだけでなく同級生全員が、ナルトとヒナタが会話するようなところを見たことがないのだから、当然といえば当然な疑問だ。
 質問されたナルトは、

「ん。師に挨拶するのは弟子の義務だ、不思議なところはないはずだが……」

 ごく自然に、当たり前に変なことを真顔で答える。

「いや、不思議すぎるだろーが。お前ら、いつから師弟関係になったんだよ?」

 シカマルの突っ込みに、同級生らがうんうんとうなずいた。いつのまにか、全員が何事かと見守ることになっている。

「昨日からだが? イルカに稽古相手になってやってくれと頼まれたからな、ついでに弟子にしといた」

「だから、ついでとかで弟子とかにするわけねぇだろうが……」

「ヒナタ。本当なの?」

 いのが確かめると、

「え、えぇ、そ、そうなのかな? ナルト君がいいなら、私は弟子でいいけど……」

 戸惑いながら同意するヒナタに、教室がより一層騒がしくなる。ちなみに、昨日のうちに弟子になるとかそういった会話がなされたという事実は一切ない。つまりナルトの独断。ヒナタも初耳だったけど承諾したということである。

「まぁ、いまさらお前が同い年の師匠になろうと驚かねーけどよ。どうだ、どうにかなりそうか?」

 ヒナタの総合成績は中の下といったところだ。頭こそ悪くないが、性格のためか実技関係では全滅に近いため才能なしというレッテルが張られている。だからこそ、シカマルは尋ねたのだが、

「骨を折る、などの言葉に頬が赤らめてたからな。その素質を開花させれば、立派な戦闘狂になれるだろう。今のヒナタに欠けてるのはメンタル面だからな。そうなれば丸く全てが解決する」

 予想外に、凶悪なコメントがきた。

「しねーよ! いや、しねーよな? そんなストレスとか抱え込んでたりしてねーよな……って、痛! あー、そんなことあるはずねぇだろ」

 徐々に自信を失っていったシカマルは、女ってわからねーからな、とかブツブツ呟いていたが、いのにどつかれ正気に戻った。
 教室中の視線に囲まれたヒナタは、必死にあせあせと弁明を行なうが――

「そ、そ、それは、赤くなったのはナルトくんが胸を触ったからで……私、そんな変態じゃないよぉ……うぅ」

 その訂正が、さらなる爆弾発言になっていることに気付いていない。
 実は可愛い少女は戦闘狂でしたというより、よほどイメージしやすい構図にころりと民衆は騙された。

「ちょっ……ヒナタ!」

 ドドッっと、ハイエナのように女子たちが群がる。

「ねぇ、それ本当!? 付き合ってるの? そんなこともしてるの!?」

「ああー、ヒナタって胸大きい! 私なんかまだなのに……」

「どんな体勢で揉まれたの!?」

 怒涛の質問攻めに人酔いとなったヒナタはぐるんぐるんとした頭で、

「あ、あぅ、その、押し倒されながら……」

 さらに勘違いされそうなセリフをこぼし、ヒートアップした女子たちに隅っこで事情聴取されていた。きゃーきゃーと女子たちのテンションは暴走していて、居づらくなったのか男子が移動した――ナルトを取り囲むように。
 血走った目から涙を零しつつ、拳を振り上げた真面目で知られる少年が、

「よくも我らの心のオアシス、ヒナタちゃんを!!」

 とか叫んだりして。
 それが、引き金になった。
 懐から銀色のカードらしき物を取り出した少年たちが口々に、

「我ら〈ヒナタちゃんを愛でる会〉を差し置いて!」

「№001の俺に断ることなくっ!」

「それも師だと! どうせ訓練にかこつけ無理難題を命じるつもりなのであろう!」

「ヒナタちゃんを解放しろ! 田舎の母ちゃんが泣いているぞ!!」

 どうやら、噂のファンクラブは実在したらしい。
 しかも、相当熱狂的な。クナイやら警棒やらを構えたやつさえいる。

「おまえらの喚いていることはいまいちわからないが……」

 恋愛感情とかそれの亜種たるアイドル信仰などとはかなり縁遠いナルトは、心底わけわかないといった風だった。

「とぼけるな! 俺達のヒナタちゃんを奪ったお前は絶対に許せない!」

 嫉妬とは、どれだけ無駄に熱いのだろうか。でも、当事者たるヒナタに聞こえぬよう小声になっているとは情けない。
 しかし、狂乱といっていいぐらい熱が篭もっていることは確かだ。
 だが、

「寝言だな」

 ばっさりと斬り捨てる声に、一瞬、皆が動きを止めた。氷河に放り込まれた極寒の風に身がすくみ、凍ったように手足が動かない。騒ぎを傍観していたシカマルとチョウジも巻き添えに、なのに同じ部屋にいる女子たちに影響しない――いや、こちらから意識をそらす効力があるのか異変に気付かせない。
 広い講堂の半分を支配するのに、たった一言。
 分類上、それは幻術に含まれるだろうが――ナルトは印を使わない。ただ異質な気配を宿したチャクラを放出、霧のように漂わせ、そこに仮初めの異空間を作り出しただけである。

「人を所有できるのは夢の中だけだ。昼間際なのに、寝呆けたことをほざくな。いい加減にしろ、虫酸がはしる」

「お、お前が、ヒナタちゃんを寝取ったやつが偉そうに言うなっ!!」

 無表情ながら不機嫌さを隠そうともしないナルトの物言いに、というか異常なプレッシャーにとち狂ったやつが警棒で殴りかかるが――振り下ろすよりことなく、腹に減り込んだ爪先には倒れるしかなかった。
 授業にはない、手加減の余地皆無なカウンターに絶句する男子生徒ら。だが、もう破れかぶれとなった彼らは止まることができず、フクロにしろうと取り囲んだまま襲いかかるが、ナルトに有象無象がかなうはずがなく、

「ん」

 一文字呟くだけの時間のうちに返り討ちにされ、のされることになった。
 虚しい勝利を噛み締めたナルトだったが、

「あのな、ナルト――めんどくせーことは言いたくねぇけどな、責任だけはとれよな。もしものときは認知だけはしろよ、な」

「お前もか、奈良シカマル……」

 さすがに真顔なシカマルの言葉には、がっくりと肩を落としたとか。


 その後。
 死屍累々と積み重ねられた人の山は貧乏教師に見つかったが、なぜか事情を知らないはずの女子が積極的にナルトを弁明してくれたため問題にならなかった。
 どうやら女子たちの妄想では、ヒナタに一目惚れしたナルトがライバルをぶちのめしながら威勢のいい啖呵をきったことになったらしく、それは夢見がちな乙女心をくすぐり、ナルトの味方になってくれたらしい、勝手に。
 気の弱いヒナタは誤解を解けず、それどころか女子の想像した啖呵とやら――どれも歯の浮くようなセリフ――を聞かされ真っ赤になってしまい、ますます勘違いを増長させることに一役買ってしまっていた。
 こうして〈ヒナタちゃんを愛でる会〉は解散することになり、その後には〈ナルトの身分違いな恋を応援する会〉が結成されたという――当事者二人の知らぬうちに。
 ちなみに、ヒナタを除く女子全員が会員になったとか。




 
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