言の笹舟 web小説レビューサイト

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SKILL COLLECTOR【H×H 二次SS 現実トリップ】[05-助言 3-]



 ジャポンとアイジエン大陸の最西端を結んだ直線の中央にある海上。

 このポイントに、とある島があることは表向きには公表されてはいなかった。

 念を修行中の高弟や本能的にオーラを行使する魔獣などが押し込められた人工の秘境――幽玄島。

 ここに百の念能力を習得したという逸話を残すことになる"伝説のスキルコレクター"が生まれようとしていた。

 この物語は、念の秘密を解き明かさんとあがく一人のトリッパーの物語である。







「最初は、具現化系はどうして具現化せずに特殊能力を扱うことはできないんだろうか? っていう、思いつきだったんだよ」

 手を振って戦闘の一時中断を告げるとカジキは語り出した。
 ルッケルは己の念のルーツはどこにあるのだろうかと興味深そうに聞いている。

 二人の間隔はおよそ10メートル。
 普通に会話することはちょっと考えられない距離だった。

 とはいえ、互いに能力者――昔の武将のようによく通る声を持っていて、視覚・聴覚をオーラによって引き上げられるのだ。
 このくらいがちょうどいい。

 第一、今は試合中なのだ。相手の申し出てきたタイムを信じ、のこのこと相手の攻撃範囲に踏み入るなんてことはありえなかった。

 大学の一室における教授と最後席の生徒くらいの距離感のまま、カジキの臨時講座はスタートする。

「人間は自分にはできないことも道具を使って達成できる。
 自作できるようなちゃちぃ道具だってできることは一気に増える。
 それみたいに具現化というワンクッションを置くことは大事なのかもしれないけど……特殊能力は具現化系の範疇だっていうのに、単独ではまったく使えないってのは疑問だったんだ。
 ちょっとくらいの能力が使えたっておかしくはないって思わない?」

 カジキには、己の趣味を語る者特有の熱気が帯びていた。
 問いかけているようで、はやく続きを語りたいという本音がいまにも飛び出てしまいそうだった。

 ルッケルにとってもたいへん興味深い内容だったために問題にはなっていなかったが。
 彼の師匠のガジリンは単純バカどころかけっこう頭のいいほうに分類されるけど、実用性を重視する実践タイプなのだ。
 カジキのように研究者肌の人間から聞かされる念の世界というのも面白い、と、ルッケルは感じていた。

「まったく考えたことのなかったことですけど……そうですね。
 思い返してみると、これまでに出会ったことのある具現化系の能力者の中には特殊能力は使っているけど、具現化した本体のほうは持てあましている人もいらっしゃったような気がします。具現化しているほうの容量全てを特殊能力に割り振れるとしたら――いったいどうなってしまうのでしょうか」

「いや、その体現者こそ君じゃないか」

 呆れたようにつぶやくカジキにかぶりを振るルッケル。

「違いますよ。僕のは新たな精神エネルギーの具現化ですって――特殊能力じゃありません」

 少年はきっぱりと言い切った。
 カジキは困ったようにぽりぽりと頭をかいた。

「うーん、君はそういう認識なのか。
 ちょっと危ういかな……どっかの誰かに論破されたら能力損失しちゃいそうだ。
 そこまでいかなくたって自分のは変化系の能力だと勘違いしてパワーダウンすることだってありえそうな……」

 しばらくぶつぶつと悩んでいたカジキだったが勢いをつけるようにポンっと手を叩く。

「一番いいのは一から十まで説明することなんだけど……聞く気はある?」

「押忍ッ! ぜひお願いしたいです、カジキさん」

 かくしてかくして、コロシアムを舞台にカジキのレッスン講座が本格的に開かれることになったのだった。








「『具現化系はオーラを物質化させる』『物質化させたものには特殊能力を付与できる』――っていうのは、実は初心者向けの説明だっていうのは知ってた?」

「いえ、初耳です」

 放出系の男の質問に具現化系の少年は答える。
 ルッケルはけっして不勉強というわけではなかったのだが本当に聞いたことがない話だった。
 そもそも勉強しようにもしようがないのが念の世界である。

「まあこれは念学者の間くらいにしか語られていないことなんだけどね。だから知らなくとも無理はないよ」

 カジキはそうとだけフォローして進めていく。
 下手に事前知識はないほうが教えやすいのだから好都合だった。


 ――白紙に絵の具を塗りたくるのは気持ちいい。


「例えば、鋼鉄の剣のイメージ修行をして具現化できるようになったとしよう。
 でもそれは『鉄っぽいナニかでつくられた剣』なんだよ。
 細かく調べていったらイメージ修行に使った鋼鉄の剣とは別物だということはすぐにわかっちゃう」

「それは特殊能力を抜きにしてですか?」

 ルッケルはいまいち理解していないのか疑問符を浮かべながら質問する。

「うん、どういう特殊能力を付与しているかは関係ない。
 大前提的にそれは鋼鉄じゃないんだよ。能力を付与するとかそういう前に具現化されたのは鋼鉄ではなく、その人が鋼鉄と思い込んでいるものをオーラで『創造』しているんだ。だから根本的に構造が違ってきている。その人の認識に勘違いがあれば修正されることなくそのまま反映されることになるんだ」

「なんとなく、理解できるような感覚はありますけど――そうなのでしょうか?」

 カジキは、これは僕のやった試験じゃないんだけとね、前置きをして続けていく。

「ある念学者は、衣服を具現化している能力者に協力してもらって、その服のイメージの基になったものの繊維を聞き出して、その繊維を溶かせる科学薬品を用意したんだそうだ。見かけは水と変わらないそれを具現化したものにかけたんだけど――なんともならなかったそうだよ。だけど、同じ化学薬品に染料を混ぜて色を変え、普通の服にかけて溶けるのを見せたあと、具現化したものにかけたら」

「ど、どうなったのですか」

 同系統だけに気になったのかルッケルは先をうながし。

「件の能力者は素っ裸になったそうだよ。ちなみにたいそう美しい女性だったらしいけど、ね」

「いえ、オチはつけなくていいです」

 と――がっくりと肩を落とすことになるルッケルだった。

「僕がやったんじゃないと前置きしたくなる気持ちはわかっただろう?」

 カジキはひょうひょうと告げる。

 ルッケルは疲れたようにまぶたを二度三度と揉んだ。
 少年が気をとりなおせたのを見計らってカジキはまとめに入る。

「こんなに長々と喋ってけっきょく何を言いたいかというというと。
 具現化系の本質は、まったく新しい構造のものを『創造』することにあるってことだよ。その範疇にさえあるならば、具現化させれるのは物質に限ることなくエネルギーだって可能なんだ。まあ、それらを実証してみせた君にいまさら説明するのはヘンな話なんだけどさ――今後、君に別の能力者が『それって変化系の能力者なんじゃないか』と指摘されて、君がそれを否定できなかったら変化系の習得率と威力・精度が適応されるように変質してしまうから、そんなことないように講義させてもらったよ。
 間違いなく、その『道力』は君にぴったりの具現化系の能力なんだ」

 さらにカジキはエネルギーを具現化できる理由を述べていった。

・曰く、星が誕生するときエネルギーは物質になった。
・曰く、物質は消滅するとき膨大なエネルギーとなる。
・曰く、だったら物質とエネルギーは広域的には同一なものといえるのではないかと。

 ルッケルの心の中にカジキの言葉は一言一言染み込んでいき、過去に前例のない能力であるということに由来する不安を消し去っていった。それらは念能力に対する自信の土台になって、体にまとっているオーラ……否、『道力』の力強さと安定感がぐっと増していく。蒙を啓かれたことで、ルッケルの念はさらなる成長を遂げていた。

 その様子をふむふむと満足そうにカジキは眺めていた。
 認識の変化による念の発展は格好のサンプルだった。それに自分が導いたという事実は悪いものではない。
 悪くない悪くない。

「そして、具現化系の特殊能力というのは非物質部分をそう呼んでいるだけで、実際には本体との境界はないっていうのが定説なんだ」

 だから『具現化系はオーラを物質化させる』『物質化させたものには特殊能力を付与できる』は、『具現化系はオーラを物質と特殊能力にできる』っていうのが正しいんだ、と。

 調子にのってぺらぺらとカジキは喋っていった。
 彼はこういう生徒を大好きだった。

「カジキさん、ありがとうございます。自分の能力のことを改めて知ることができました。押忍っ!」

 心源流の礼をするルッケルにいいよいいよと手を振る。
 で。
 ところで、と、繋げた。

「その道力とやらのイメージ修行をするときどうやったんだい? 見たこともないエネルギーなんて難しかったでしょ」

「いえ、難しくはありませんでしたよ。
 僕の場合は、一番イメージに近いものとして『オーラ』の感覚がありましたから。"纏"を二十四時間維持しておくための修行の経験が生きてきましたし」

「へぇ……そうやるんだぁ。
 面白そうだけど、まぁ、今は試合を優先しないとダメだね。
 君の道力をもっとよく見てみたいし。やっぱ、能力を調べている瞬間が一番楽しいし――じゃあ、ヤろうか」

 試合中だった、と、つぶやいたカジキは本来の目的を思い出したのか、オーラがはちきれんばかりに沸き起こった。

「押忍っ!」

 応じるように、レッスン講座中変わることなく一定だったルッケルの道力がさらに膨れ上がった。
 これまでとは違う、ビデオに映っているときと変わらない笑みを少年は見たのだ。
 さきほどまでの道力でも攻撃は防御できていたがそこにあぐらをかいていると危ないと本能的に悟っていた。

「忠告しておくけど、ここから先はいつもの試合と変わりなくいくからね。
 念を解説することはあるけど、そっちに意識を集中しているところを不意打ちするのだって、僕のスタイルの一つなんだから油断しないように」

 改めて言われるまでもなくコロシアムに満ちる空気が違っていた。
 殺伐とした、血の臭いがかおってくるくるかのような濃密度の闘争の予感に占められる。

「肝に銘じておきます」

「怪我だけはしないようにね。させるけど」


 ――瞬間。


 ぐわんと広がるカジキの気配にルッケルは弾けるようにバックステップを踏んだ。大幅に距離をとる。
 なんらかの個別能力の発動を警戒したのだった。

 カジキの体から膨れ上がったオーラは約10メートルほど……ルッケルのいた位置までを覆い尽くしてしまっている。
 半球状に展開されたオーラは念の応用技としては有名なものだった。
 もちろん、ルッケルだって知っている。
 
「ただの"円"なんだからそんなにオドオドしなくたっていいよ。
 しかし、君はやっぱ守勢型みたいだね。ときには思い切りよく攻勢に転ずることだって大事だよ。まぁ好き好きの領分ではあるんだけど……」

 カジキはにやっと笑って、ただし、と付け加える。

「今この瞬間は悪手となったよ。第一、そんなに離れたって――――逃げられないし」

 オーラがうごめく。
 カジキの"円"は生きているかのように震えていた。
 前後左右に数十センチずつゆらめき。

「追尾せよ」

 そして、カジキの号令と共に襲いかかった。
 ルッケルはまるで壁が迫ってくるような恐怖を味わいながら逃げようとするが。
 
「無理無理。"円"の広さに念弾の速度と操作能力を付け加えたんだから」

 という言葉通りの厄介さで追いかけてくる念弾型の"円"にはどうしようもなく捕えられてしまう。

 しかし、ゼリーに飲み込まれたような光景とは裏腹にルッケルには何も起こっていなかった。
 道力に覆われているルッケル自身はもちろんのこと、道力自体が減らされるというでもなくて、ほんとうになにもない。

 そのままルッケル自身の"円"のように定着してしまう。

「くっ、離れられないっ!」

 ルッケルの悲鳴が上がった。"円"はルッケルを中心に置いた状態をキープするようで、一歩横に動けば同じく一歩分横にズレている。何の能力かはわからないものの内部に居続ける。そのストレスに、パニックになったルッケルはコロシアムを縦横無尽に駆け巡るが……まったく遅れることなく"円"はついてきていた。

「無駄だよ、すでにその遠隔操作型"円"は君と関連付けてある。どんなにスピードをあげようと振りきることできない。無害ゆえにしつこく君を追うよ」

 スピードキングにだって無理だったんだからとカジキはつぶやいた。

 ルッケルは壁を走りながら絶叫する。

「なんなのですかコレは!」

「なにってごく普通の"円"だよ。――君の道力の秘密を丸裸にしてくれる」

 そのときのカジキの笑みは漫画に出てくる悪役のものだった。






【具現化された品ってなにか名称ありましたっけ? 自分で考えると『念具』とかのセンスないものになるので、原作に設定あると助かるのに……】




 
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