言の笹舟 web小説レビューサイト

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SKILL COLLECTOR【HUNTER×HUNTER 二次創作】[01-講座-]



 ジャポンとアイジエン大陸の最西端を結んだ直線の中央にある海上。

 このポイントに、とある島があることは表向きには公表されてはいなかった。

 念を修行中の高弟や本能的にオーラを行使する魔獣などが押し込められた人工の秘境――幽玄島。

 ここに百の念能力を習得したという逸話を残すことになる"伝説のスキルコレクター"が生まれようとしていた。

 この物語は、念の秘密を解き明かさんとあがく一人のトリッパーの物語である。







 財産の一つにその人の技能というものがある。
 技とは盗むもの――盗まれたからといって文句は言えないからこそ、神経質に守るべき至宝。
 その技法をもって命の取りあいをすることがある武芸者ならなおさらである。

 なのだったが。
 ときにそんなことをまったく考えない人というのはいるもので。

「カジキ兄さーん、師匠が『グワー』としか教えてくんないから放出系のコツをへるぷみー!」

「……いや、だからさ、そういうのは心源流の兄弟子に教えてもらいなよ。他流派の僕なんかじゃなくってさ」

 兄さんと呼ばれた男はそう呼んだ少女とはまったく似ておらず、血の繋がりがあるとは思えなかった。
 男のほうは、短い黒髪に黒縁眼鏡、学生みたいなワイシャツとズボンの組み合わせというジャポンのハイスクールにいそうな容姿をしている。
 対して、少女のほうはブロンドのおさげにそばかすだらけのものの愛嬌のある顔つきをしていて、フードつきのダボダボセーターを着ている……服装はおいといて、根本的に、人種からして違っている二人のように見受けられる。片親程度の類似点すら見つけることのできない、そんな二人だったが親しそうだった。

「『修行あるのみ』なんてのを指導といったら体育教師なんていう職業はいらなくなるんですよー。アビーは、アビーは、もっと手ごたえを感じられる助言を切望しているのですぅ」

「だからといってなぁ、なにかあるごとにこっちこられると『我らの愛らしい妹弟子をとるでないわ!』って漢泣きされるんだよ、僕が」

 とてつもなく嫌なものを思い出してしまったのか、男は顔をしかめている。
 少女はそんな表情を気にすることなく、木の根元に座り込んでいる男の腕を揺らしながらオネダリを続けていた。
 人種の差なのかはたまた実際に年齢が離れていないのか、男とほとんど身長は変わらない、十分に発育している娘がそんなことやっていると腕が胸に触れていくわけで。
 どんなに眼鏡をかけてインテリぶっていようが思春期の男に抵抗できるはずもなく。

「……はぁ、わかったからわかったからその手を離してよ、アビー」

 カジキは顔に昇ってきた血を隠せるうちに降参するしかなかった。
 アビーというらしい少女はにぱーと笑みを浮かべる。
 その天真爛漫さは狙って女のもう一つの武器を使ったわけではなさそうだったが、だからこそ男を気まずくさせる純粋さだった。

 罪悪感を仕舞いこむようにカジキは読書中だった本を閉じた。

「で、今日はいったいどこがわかんないんだ?」

 かくしてこうして、もはやいつものことになったカジキのレッスン講座が始まるのだった。










「えーっとさ、僕がちょっと誤解しているかもしんないから聞いておくんだけどさ、いいかい?」

「なんでしょうか、カジキ兄さん。ずいずいお聞きくださいよ」

 二人がいるのはカジキの家の庭だった。カジキが念の師匠と暮らしているけっこう大きな一軒家である。
 さきほどとは微妙に移動していて外から見えにくい場所になっている。
 いちおうは技術の流失を心配しているらしいが……あんなに甘くては無意味だろうに。

 アビーによるいかに師匠は教えるのが下手なのかというグチっぽい説明のあとにカジキは手をあげて質問した。
 彼にはどうしても納得のいかないてんがあったのだった。

「うん、それなんだけどさ……強化系同士ってその『グワー』とか『ガツン』『ていやッ』で全部理解しあえるもんじゃないの?」

 真顔のまま彼は問いかけた。
 強化系はきっとパワフル語で通じ合っているものだとカジキは信じていたのだ。

「脳筋の単純バカと、理論より本能に従っているだけの不思議系少女を一緒にしないでください! アビー憤慨ですぅ!」

 いかにも今わたしは自分の常識を疑いかけているところですという顔をした、逆に言えば、今までそんなものだと思ってましたという感じのカジキにアビーの怒りが爆発する。

「なんですかそれは! いままでアビーをあの筋肉親父と同列視していたんですか、それは酷過ぎますぅー! とってもとってもアビーのラブリーなハートは傷つきましたから、慰謝料に徳丸屋の特製プリンを要求するのですよぉ!」

「あー、うん、わるかった、僕がわるかった。流石に漫画の影響を受け過ぎていたみたいだね。あと勝手に僕の名前でツケにするのは今さらじゃないか」

「謝罪の心とおごってくれる寛容さは別物なんですぅー。それにこの島にほぼ軟禁状態かつバイトする気力がなくなるくらい修行漬けのアビーと、たまに島を出ていっては大金を稼いでくるカジキ兄さんとの間に生じる、水は低きに流れる的な自然の摂理を指摘するのはとてつもないダブーなんですよ? そこんとこわかっているのですかー?」

「ごめん、なに言われているのかさっぱりだよ」

「これだから男ってのは……まったくぅ」

 一方的に押されまくったカジキはプリンを奢ることを約束させられることになった。
 これが、難関と呼ばれるハンター試験を突破したものかその同程度の試練を乗り越えた者にのみ伝授される念の、さらなる応用技の、その授業前の日常だから驚きである。

 かといって、授業内容はてきとうかというとそういうわけではなかった。

「ホースみたいにオーラの通路があるならそのまま外に出すってのは理解できますよ?
 けど、オーラって、血の流れと一緒にイメージするわりにはもっと融通がきくじゃないですか。
 こういう風に一点に押しとどめることがでますしぃ」

 と、アビーはオーラを拳に集めてみている。

 それは心源流においては"凝"と呼ばれる四大行の応用技だった。
 彼女くらいの年齢からこのようなこのまま殴りつければ大木すら倒せる"凝"をできるのは才能のある証だろう。
 流れるようにすっと体にまとっていたオーラを一か所に集中させる様子は日ごろの鍛錬を伺わせるものがあった。
 こういうことをできるように指導できるのならば決してわるい師匠ではなさそうだった。
 おそらく、新しい段階のことを教えるには言葉が足りないタイプなのだろう。

 強化系の人間は強化系の使い方を身につけるときまったく苦労をしない分、隣の系統を修行するとき、最初のきっかけを掴めなければ苦労することがある。
 ただそれだけのことだった。
 具現化系などはその才能を開花させるまでに長期間かかってしまう分、その間不安になって何度も理論を確認することになる。それが適切なイメージトレーニングになっていて、意外と次に別系統を修行するときにはすんなりいくというのだから、どんな系統にもメリット・デメリットはあるってことなのだろう。

 うまく理解させられることができれば強化系はあっさり壁を乗り越えてしまうものらしいが……

 そういった知識はカジキにもあったのでどう教えたものかと悩んだ。

「うーん、念の系統はほとんどは"概念""顕現""流転"の三つで説明できるっいう検証中の自説は人に教えるもんじゃないしな」

「カジキ兄さんは思いつくまま喋ってくれればいいよぉ……考えて込んでくれた時の発言のほうがわかりにくいもん」

「それはけっこうショックな言葉なんだけどな。まぁそういうなら」

 地味に落ち込みながらもそれをできるだ出さないようにカジキは言葉を続けていく。
 アビーは普段の活発な様子とはちがってめずらしく真剣に聞こうとしていた。
 こういった素直さは強化系の美徳だろう。

「その拳に"凝"をするとき、アビーはどういったことを考えている?」

 精神集中を解いたためにオーラが霧散している、可愛らしい殴りダコのある小さな手を見据えながらカジキは問いかけた。

「『殴ってやる』って思っていますけど……」

「うん、それは『殴る』という概念をオーラが強化している状態だから強化系にぴったしの技法なんだ。
 放出系はこの概念の増大にさらに流転の操作が加わってくる。
 つまりは『殴る』という気持ちを肉体の動作と連動させることなく動かさないとならないんだ」

「うーん……まだよくわからないなよぉ」

 首をかしげているアビーにほのぼのしながらも説明は続けられる。

「そうだね。例えば、ぶん殴りたいくらいむかむかする人がいるとして、その人にボールをぶつけたらすっとするよね?」

 ボールに見立てたのか足元の石を拾いながらカジキはいい、アビーもまたその動作を真似た。

「ということは『殴りたい』という気持ちを投石に使うことができるってわけだ」

 さきほどのアビーのようにすっと拳にオーラを集めると、石にそのオーラを込め、手首を返した動作だけで投げつける。
 それは十歩ほど離れたところにある木にゆっくりと放物線を描いていき。
 ――樹皮が弾け飛んだ。
 かんしゃく玉が破裂したような音と共に木の表面がズタズタになってしまっていた。
 これでは石も粉々に砕け散ってしまったことだろう。

 別にカジキは投げるときの腕力を強化したわけではない。
 実際にスピード的には、時速30kmも出ていない超スローな投石だった。

 では何故なのかというとやっぱりオーラの破壊力だった。
 石にオーラを込められたのは"周"と呼ばれる技法であった。
 だが、普通は手を離すと維持できなくなる"周"を四散させなかったのは放出系に属している技能だった。
 この一連の動作をスムーズにやってみせるあたりカジキは念の手ほどきを受けている練習生の域を超えているのは間違いなかった。

「えーっと、あれ、れれ、うまくいかないですぅ」

「いやいやけっこういいよ、その感じ、その感じ。最初のうちはオーラ多めにやっていっていいよ」

「んーっと……こ、こうかな?」

 一方のアビーは石に込めるというところで手間取ったようだったが、五分ほどやっていたらコツを掴めたらしく、ぎこちなくも形になった。
 そして、木に向けてゆっくりと放ってみた。

「あー、あっ……やったぁ、できた!」

 アビーのやってみたそれはカジキほどではなかったものの確かに樹皮を穿った。小さな痕跡が残る。
 あまりに嬉しかったのか、歓喜のままにアビーはカジキに飛びついた。

「カジキ兄さん、できたよできたよあんなにできなかったのにできちゃったよぉ!!」

「あー、揺らすなこするなマーキングするな。
 まぁそれができるようになったらあとは回数こなせば威力のほうもマシになってくるな。で、」

 慎ましい日本人に囲まれて育ってきたカジキには毒すぎる攻撃だった。
 汗の匂いとともにシャンプーかなにかの香りが飛んでくるのは凶悪だったのだ。

 抱きついてくるブロンド娘をもぎはなしながらカジキは手を掲げる。
 そこにふわっと光輝く光球が――念弾が生まれた。

「さらに慣れてくると石を介することなく『殴りたい』という意思を直接投げつけることができるようになるんだ」

 そういうとカジキはフレミングの法則からさらに中指を折り曲げ、人差し指の方向に念弾を撃ち出した。
 樹にさきほどの投石と変わらない程度の傷が刻まれる。
 わぁーっと素直に手を叩いて喜ぶアビーに気をよくしたのか、カジキは、ナイフを取り出してその刀身にオーラを込め始める。

「さらにさらに慣れてきて、このくらいじゃ満足でなくなってきたらこんなテクもある」

「おぉーーー! 凄いですぅ! やっぱ教えてもらうのはカジキ兄さんに限ります!」

 空中を二三度斬りつける動作をしただけでその切っ先から刃状のオーラが飛来し、木の枝を斬り落して行った。
 もうアビーはきらきらと眼を輝かせていた。
 こう美少女に褒められると調子にのってしまうのは男のわるいところで。
 次にカジキが取り出したのはライターだった。

 まずは普通に火が点けられ、そこにオーラが注ぎ込まれる。
 ライターは内部に収められたオイルのすべてを吹き出したかのように盛大に燃え、それが球状に変化する。

「こんな漫画に出てくるみたいなファイヤーボールだって"周"を習熟していけば作れるようになるし、強化系だって、この火球を撃ち出すくらいの放出系技能を身につけるのは不可能じゃない。まぁ、自分の個別能力を見つける前にやっていると変な癖ついてしまうかもしんないけど――戦闘時、自分を発火能力者だと偽ることができるってのは反則的に役立つよ」

 実際には、オーラを"纏"っている念能力者を焼き殺せるどころか火傷させることすら難しい火力に過ぎなかったりする。
 制約と誓約によるサポートを受けていない小技ならそんなものである。

 けど、変化系だと思っていた相手がバリバリの強化系だった場合は二割以上の誤算が乗じて、接近戦のさいに適切な攻防力の移動ができなくなって、ボコボコされてしまうためにかなり有効な手の一つだった。カジキは基本的にこういった小技を駆使してトリッキーな戦い方をするタイプのため、相手の強さを勘違いした人間がどれだけ脆いのかよくわかっている。
 実際に個別能力を誤認させることで、当時の力量ではまったくかなわなかったAクラスの賞金首から生き延びたこともある。

 そういった経験を積んできたうえでカジキは自信を持って後輩に告げる。

「基本的にすべての応用技は個別能力を含めて基礎の上に成り立っているのだから、基礎を学べば、こういう手品をできるようになる。そして、自分を発火能力者だと信じ込ませることができれば、自分本来の能力を発揮しやすくなる」

「了解ですぅ! ――ところでカジキ兄さんは熱くないんですかぁ?」

 話している際中ずっと燃やし続けられているため、二人はほんのりと赤く染まっている。
 アビーはそろそろ熱気が伝わってきてつらくなってきていた。
 が、カジキは一番近い距離にいるのに平然としている。

「ああ、"纏"の応用には熱を遮断する効果のあるものがあるんだよ。まぁ、"堅"を一時間以上できるようになったら教えてあげるよ」

 応用技は基礎ができなきゃ意味がないからねと――当初乗り気じゃなかったくせにカジキは次回を約束していた。
 こういう説明することが大好きな人種なのだろう。

 そして、カジキは火球をそのまま消すのもなんだとこれまでさんざん痛みつけられてきた樹にぶつけた。
 それはほとんど無意識の行動だった。
 アビーが石にオーラを込める練習をしている間、十数回見本をみせてやったとき毎回ぶつけていたからこその反射。

 しかし、流石に放火となるとまずいわけで。

「あわわわ……カジキ兄さん、それはちょっとやりすぎですぅ」

「あっ、やっちゃった。まぁ燃え広がるようなことはなさそうだし、この季節ならまだ水分たっぷり含んでいるからどうにかなるよ」

 自分の放った火球はそんなに火力がないことを知っているためにそう呟いたカジキだったが。
 そんな彼の背後から声が響く。

「ほぅ、火事の心配すらしないとは余裕だな。カジキ」

「えっ……いやその、師匠。もちろん今から消火活動しようと思っていましたよ?」

 ぎぐぅという擬音が響きそうなほど固まったカジキがぎこちなくと振り返る。
 そこには黒のタンクトップにジーンズ、特注のベルドに刀を引っ提げた赤毛のポニーテールの美女が立っていた。
 彼女こそが年齢不詳のお師匠様ことキサキである。
 つまりは今居る庭の所有者だった。

「ところで、あの桜はわざわざ私の実家から運んでくるほど愛着のあるものだということをお前たちには知らせていなかったか?」

「えーっと初耳なんですが」

 その桜は全体的に煤けていたがなによりひどかったのは枝が斬り落とされてしまっていたことだろう。
 一閃ごとに数本落とされていたため、春になればたいそう立派な花を咲かせただろう大ぶりの枝は半減していた。
 地面にあった落ち葉は勢いよく燃えていてどれほどダメージを与えたのわかったものではない。

「私は弟子にもできる炎の強化すらできない不器用女だからな。
 唯一できる、斬るということだけは精一杯やろうと思っている――例えば桜の仇をざっくりぱらんとしたりな」

「いやあの師匠、擬音にしたってむしろ明快になって恐いんですけど?」

「――恐れおののけ。その音色のみが唯一の供養になる」

 かくして。
 手当てをすれば致命傷にならない程度の斬り口が量産されていくのをアビーはけたけた笑いながら眺めているのであった。
 幽玄島の常識は一味違うということがよくわかる風景である。










 たった一日で、放出系のコツを掴ますことができる。
 できるほうもできるほうだが、教えられるほうも教えられるほうだということをカジキは知らなかった。
 だから、この島の敏腕家庭教師になるという己の運命を知るよしもなかったのである。


【会長の百式観音は強化系だと思っている人は挙手してくださいな♪】




 
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