言の笹舟 web小説レビューサイト

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人気小説・ランキング上位のもの・捜索依頼されているものなどを読んで、気に入ったもののみレビューします。
2013年はこのブログだけでなくやる夫スレでも頑張っていきますよー!



NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 105

 忍者学校――アカデミーには、一学年に通常クラスとくノ一クラスというような二つのクラスがある。合同授業は多いが、いつもというわけではなく、普段は朝のHRも別になっている。
 だけど今朝は、新学期ということもあり二クラスとも講堂に集められていた。
 まだ時間があり、ワイワイと皆話していたのだが……なぜか普段の活気が見る影もない三人組があった。
 シカマル、いの、チョウジである。


「なんか、夢みたいなのよねー。死にかけたっていうのに、傷っていったら擦り傷ぐらいだし……ナルトの居場所はわかんないし」

「僕、まだ持ち上げられるとき掴まれた爪痕残ってるんだけどなぁ」

 黄昏るようにぼんやりとしたいのにチョウジが手形の残る腹を見せようとしたが、見向きもされず、ただ殴られた。いつもだったら「レディにそんなもん見せるんじゃないわよ!」と張り飛ばされるのだが、ぽかり、とだけ。
 やはり、どこか元気なかった。
 チョウジ、いの、シカマル、空席の並びで順で座っているのだが。
 シカマルなど、ずっと考え込んでしまってぴくりとも反応しない。
 それだけ昨日のことは衝撃的なことだったのだろうか?
 なんせ猛獣に襲われて、死にかけたのだから。
 そうある経験ではない。






「ねぇ……あの後どうなったの? ボク、起きたら家で寝てたんだけど……ナルト君はどうしたの?」

 チョウジの言葉に、シカマルといのは昨日のことを思い出していった。


「ん。適度に生きている、大丈夫だな」

 尊い犠牲になったチョウジの様子を見ていたナルトが、そう告げた。微妙な言い回しが気になったりしたが、とりあえず幼馴染み二人は安心した。

 とまぁ、チョウジは良かったとして。

「ねぇ、ナルト……あんたは大丈夫なの? けっこう怪我してるじゃない」

 いのが心配するのも当然だった。

 ナルトの負傷はひどい。左手首はもげかけていて、骨ごと切り裂かれているという深いモノだった。左足もごっそり肉がえぐられている。それに爪の傷だから、傷口が三つ以上並んでいる――そうなると糸で縫ったとしてもさほど効果はなく、腐りおちる。

「別に、軽傷だ」

「そんなわけあるか! さっさと病院行くぞ!」

 真顔になってシカマルが怒鳴りつけるほど、ナルトは血塗れだった。
 チャクラの包帯があるからといって、本来立っていられるような身体ではない。戦闘が終わり冷静になってみると、その姿は見ていられないぐらい痛々しい。白いシャツには血糊がべったりとくっついていて、スボンも同様になっている。

「だから――オレにしては軽傷だ。一晩あれば治る」

「……!」

 微妙な含みに、シカマルが絶句する。彼は正確に言葉の裏を読み取ってしまった。これ以上の傷を負うことが日常茶飯事なのだと、ナルトが言うつもりじゃなかったことまで解ってしまった。
 押し黙ってしまったシカマルといのに、ナルトは怪我した左腕を掲げて見せた。

「…………(タマモ、油揚げ三食フルコース)」

〈承知――癒せばいいのじゃな?〉

 そんな脳内会話があり、瀕死の九尾を放り出したタマモが治療を開始した。瞬く間に焼けるような熱が発生し、骨が、血管が、肉が、皮膚が、治癒されていく。
 呆然と二人に観察されること二分、ちょっとした痕こそ残ったが完治した。左足の怪我も治っており、顔色こそ悪いが、怪我は消え去っている。おそらく、今のナルトを病院に連れていっても極度の栄養失調と貧血としか診断されないだろう。

「これがオレの体質だ――詳しくは聞くな。掟により他言は禁じられている」

 説明を求めようと口を開こうとしたが、そのいのより早くナルトは追求を封じた。そう言われたら、秘術を伝える名家出身の二人が尋ねられるはずがない。

「じゃあ、大丈夫なの?」

「すげぇ術ほど反動あるだろーが、平気なのかよ?」

 それだけ聞くに留めた。

「ん、血が足りないだけだ。食って、寝る。それだけすれば明日には元通りだ」

 いつもどおりの無表情でナルトは答えた。
 そこに嘘はなさそうだから、ようやく二人は安心できた。気が抜けたのか、へなっと座り込んだ。


「もうオレは帰るからな。疲れた」

 唐突に、そんなことをナルトは言い出した。言い分をわからなくもないが、さっさと帰ろうとされると唖然としてしまうわけで。

「連絡先ぐらい教えていきなさいよ! 会いにいけなくなるじゃない。あんたねぇ、チョウジと今度遊ぶって約束したの忘れんじゃないわよ」

 いのが食ってかかるが、

「じゃあ、婆さんにシカマル――またな」

 と、ひねくれたスルーをされてしまった。

「……!」

「じゃあな、ナルト。二度目だけどよー、またな」

 怒りのあまり硬直したいのをさておき、シカマルと挨拶をすませたナルトは消え――瞬身の術とか使用した気配ないのに、幽霊のごとく消えたのだ――、後には、ぐったりしたチョウジとシカマルに八つ当りしようとする鬼と犠牲者だけが残された。
 あたりは静かだったが、森は目茶苦茶だった。周辺一帯の木々は高いところからへし折られ、大地には深い穴が穿たれ、凄いことになっていた。この倒れる音があったから三人が駆け付けることができたのだが、百本単位の木々が薙ぎ倒されたとは、デタラメなレベルの差を思い知らされる。
 どれだけ王虎と――その王虎から逃げれていたナルトの身体能力が、常識から外れていたのかがよくわかる。ナルトが猫族の習性を利用した機転を思いつかなければ、こんな五体満足であるはずがなかったのだ。
 ふとシカマルは思った。

「って、こっからチョウジ担いでいかねぇとなんねーのか?」

 いのは絶対に手伝ってくれねぇよな、と達観した予測をした少年がいたとさ。




「まぁ、結局そのあと駆け付けてきた特別上忍に運んでもらったんだけどな」

 大樹が倒れる音は、けっこう離れたところに届いたらしい。たまたま任務帰りの忍者が様子見に訪れ、後始末をやってもらうことになり、家に帰ったらとっくに報告がいっていて殴られたり泣かれたりがあったのだが。
 ――誰に、聞いても。
 うずまきナルトのことはわからなかった。
 たいてい曖昧に誤魔化され、シカマルは親父に聞いたりしたが、

「そんなこと考えてる暇あったら学校行きやがれ!」

 と、朝食も食わぬうちに家から放り出された。
 そんなありえねぇ朝の出来事で空腹に悩み、思考に没頭することで逃避していたりしたシカマルだったが、脳味噌だって動かせばカロリー消費することを思い知ったり、

「なんだか……不思議とナルトが隣にいるような気すんだよなぁ」

 隣の空席を見て、そんなこと思ったり。

「あんたナルトと気合ってたものねぇ~。生意気なぐらいに」

 二人揃ってバカにされたことを思い出して、いのがペンを折ったりしたが。
 そんなことに構わず、チャイムは鳴った。
 ちょうどに先生――イルカが入ってきて、恒例の挨拶があったが――今日はいつもと違ったイベンドが残っていた。

「あー、今日からうちのクラスに新しい仲間が一人増える」

 ……何人か、そんなこと話していた生徒がいたっけな。

 イルカは言葉を濁していたが、つまり落第生がいたということだ。卒業できなかった生徒が、一つ下のクラスに混ぜられる。滅多にあることではないが、ひじょうにわかりやすいことだ。
 紹介されるはずの落第生が入ってくる、そう思われる前のドアに、皆の視線が集中した。

「あ~、もういるぞ、そこに」

 困ったように頬をかきながらイルカが指差したのは、シカマルの隣にある席。だけど、そこには――

 いない。

 イルカの指差したとこあたりに何組もの視線がさまよっているが、その落第生とやらは見当らない。

 いや――居た。

 集中すると見えないのに、諦めた瞬間だけ見える。そんな不可思議な現象に驚いた生徒たちが騒めきだした。居るとわかったら、ますます見えなくなるという怪奇があることに皆が気付いた。

「ねぇ、シカマル。ボクだけかなぁ、ナルト君がいたように見えるのは」

「……チョウジ、幻覚じゃなさそうだぜ。視点をずらすと見えるけどな、ありゃナルトだ。ったく、親父のやろー知ってやがったな」

 いのはぐったりと倒れ、後ろにいた桜色の髪をした少女になにか言われていたりした。
 そんな騒ついた教室を静めるのに、イルカはそこにチョークを投げ付けた。
 ナルトは、それをうつぶせになったまま指先だけで軌道をそらした。それが頭に子犬をのっけた少年にぶつかったりしたが、それは置いておくとして、それでようやくナルトの姿が見えるようになった。
 むごむごと動きだした少年の第一声が、

「…………」

 なくて、そのまま再び眠ったりするのがナルトらしかった。
 ある意味インパクトある登場に、教室はうるさいぐらい騒めいたが。
 そこに疲れたような、それでも満面な笑みを見せた三人があったとさ。




 始業式の前夜。
 とある部屋で、火の文字がある帽子の爺さんに一人の忍者が膝をついていた。

「以上、これで報告を終わります」

 その忍は、奈良、山中、秋道家の子供を家に送り届けた特別上忍だった。顔に火傷のような傷がある男の名は、並足ライドウといった。
 彼の報告には、うずまきナルトと王虎の戦闘が当初から含まれていた。つまり、子供が危険にあったというのに、観察だけに留まっていたということである。
 そんなライドウの報告を聞いていたのは、もちろん火影である。

「ライドウよ……なぜ、助太刀に入らなかった?」

 火影の問いに、ライドウは真面目に答えた。

「はっ。それは"うずまきナルト"がいたからです。私たち上忍以下には、彼にたいする介入は許可されていません」

 教科書から切り取ってきたような台詞に、火影は満足しなかった。

「じゃから、子供の命を危険にさらしたというのか?」

「どのような形であれ、前例を生むことは危険だと私は判断しました。あれに封じられた"九尾"を憎む者は多いです。彼らに行動する言い訳を与えることは、里の滅亡に関わる大事になりかねません!」

 責めるような火影に、ライドウは退くことなく返した。

 彼の危惧は正しい。

 九尾に家族を殺され、その恨みだけを糧に生きている者は、堪え忍ぶ者という意味がある忍者にさえ多い。その器たるうずまきナルトが里人を襲ったように見せ掛ける工作をなし、だから殺すしかなかったと、そう弁明する。そんな夢物語を実行しかねない者は、かなりの数にのぼる。

「うむ。そういうこともあるかもしれぬな……」

 里の危機、そう言われると火影も黙るしかなかった。多が危険になる可能性があるならば小を切り捨てるよう、そう命じるのが長の役目なのだから。
 ごほん、と咳払いして火影は話題は変えた。

「のう、ライドウよ。王虎にナルトが敗れると……万が一にも思ったか?」

「それは、九尾の封印を解かずにでしょうか。どちらにしろ、否、としか申し上げられません」

 直立不動のまま、ライドウは答えた。
 火影はその返答を疑問に思わなかったが、興味を持った。

「詳しく、そう思った訳を聞かせてくれんかの?」

 火影の要求に、しばらくライドウは黙考してまとめた考えを述べた。

「まず、九尾の封印が解かれた場合――これは純粋なチャクラ量から勝負になりません。また"うずまきナルト"と王虎だけの闘いだったならば、初手にて王虎を殺せていたはずです」

「報告によれば、戦闘は長引き、三名の支援により撃退に成功したとあったが……どういうことじゃ。矛盾しておらぬか?」

「はっ。私が"うずまきナルト"のイレギュラーになりました」

「どういうことじゃ?」

「私が到着したときに、"うずまきナルト"は強力無比な術を放っていました。結果外れましたが、私の気配に王虎が反応しなければ、確実に命中していたはずです。それは、間違いなく致命傷を与えていたことでしょう」

 ある任務を言いつけられていたライドウだったが、森に見慣れぬ痕跡を見付け、それを追跡していた。追い付いたときには、ちょうどナルトが起爆符を投げ、木を登っていったとこだった。

「それは、どういう術じゃった?」

 かつては教授と呼ばれた天才忍者が興味津々と尋ねる。年甲斐もなく、血が騒ぐらしい。ぽっくり逝かねばよいのだが……血圧が心配だ。

「印を必要としない、ただのクナイ投擲術でした。ですが、全身を活性化させる、膨大なチャクラをクナイに込める、投げるときに回転させる、この三段階の動作により威力を高めたものだと思われます。
 おそらく、まだ連続発動は難しいのでしょう。それ一度きりでしたが、はっきりと術の痕跡は残っております。そのクナイに命中した地面から、土くれが螺旋状に飛び散り、王虎一体が収まる大きな穴が空きました」

 投げた瞬間、ナルトは外したと察したのだろう。さらに多くのクナイを取り出し放ったが、チャクラは込められなかったから威力が足りず、王虎には通じなかった。
 ふむ、と火影が溜め息をついた。

「全盛期の儂とて、印を組まずには無理じゃな。力任せじゃが、それだけに成長の余地が残っておる。空恐ろしい才能じゃ――いや、これがじゅねれーしょんじゃっぷというやつかの……」

「……はぁ(ジェネレーションギャップのことか?)」

 どう答えればいいのかライドウはわからず、曖昧にうなづくだけだった。
 そんな生真面目な若い特別上忍を眺めながら、

「新しい風が、木ノ葉に吹こうとしているのかもしれぬな」

 火影は、そう呟いたとか。




 
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