言の笹舟 web小説レビューサイト

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NARUTO~閉ざされし、されど鍵ある扉~ 001

 そこに――戦い――があった。

 ちっぽけな存在、餌にすぎなかったはずなのに。

 ただの食事に留まらぬ、血が昂ぶり燃える〈死闘〉があった。

 いつ以来だろう。

 千度の冬を越える前だろうか?

 かつて妖狐の長に挑み、九日間に及ぶ術合戦をしたとき以来か。

 同族に恐れられ、他族は相手にならず。

 たまに美女に化けては国を滅ぼし、人の愚かさを嗤うだけ。

 くだらぬ。

 退屈な。

 心が枯れてしまいそうな。

 ただ喰らい、寝るだけの日々だった。

 なのに、あのとき。

 我の心は踊ってた。

 まだ世の理を知らぬ小狐のように、歓喜に震える尻尾が止まらぬて。

 ちっぽけな餌ごときに。

 いや。

 今ならば、認められるかもしれぬ。


 ああ、認めよう。

 我は――負けた。

 火影と名乗る、人の長に。

 我は――劣った。

 修練の果てにある、忍の術に。

 我は――屈した。

 死神を請い招いた、親の覚悟に。

 そして、我は封じられた。

 なにもない、人の子に。


 我は、狐よ。

 九尾の妖狐なり。

 我に敗北はあらず、教訓のみを得る。

 いずれ、我は手に入れる。

 我になく、人にある。

 勝敗を分けた〈何か〉を。

 さらなる高みを目指すため。


 さあ、宿主よ。

 まずは汝が手に入れろ。

 あの輝きを、我が見惚れた輝きを。

 そのためなら――

 欲するならば願うがよい。

 我は惜しむことなく、汝の手助けを!














 それは破格の申し出……なのかもしれなかった。
 相手は、里を滅ぼしかけた九尾の妖狐。その助力を得られるならば、一国を滅ぼすのは容易く、手段を選びさえすれば興すも乗っ取るも自在である。
 あまり信頼を置けないのは致命的だが、それを差し引いてなお魅力的な条件。男なら、間違いなく迷い――躊躇なく受けるやつもいるだろうが――悩んだあげく、半数以上は受け入れかねない呼び掛けだった。
 しかし当事者たる少年――ナルトは顔色一つ変えず、立ち尽くしたままでいた。

『どうした……宿主よ? 一言、我に命じるだけでいいぞ――力を寄越せ、とな』

 自信たっぷりな、どこからともなく響き渡る声がささやく。
 断られることはありえない、そう確信した響きがあった。忌ま忌ましい封印の影響があったため、ときたま垣間見ることしかできなかったが――あまり人に興味を抱かぬ九尾でさえ異常と感じたほど、少年の歩んだ人生は悲惨なものだったから。
 商店街を歩けば、憎しみの篭もった視線と言葉。裏道を通れば、殺意を宿した暴行と凶器。食べ物を買えば、悪意で盛られた虫けらと毒物。あげればきりがない――その凄惨で、救いなき日々は――生き残っていることが不思議なほどだった。
 だが、あるとき疑問は氷解した。
 いつものように少年が水浴び――どうやら趣味だけでなく、魚を獲り、身体を洗う、など実益を兼ねているらしい――をしようとしたとき、ちょうど九尾の意識が浮上した。乗っ取れるほどではないが、視覚を共有できるくらいに。
 少年が水面を見下ろすと、それは揺れながらも鏡になった。

 ……子供の躰だ。こんなものに封じられるとは、我ながら情けない。

 落ち込んだが、変わらずに目に飛び込んでくる光景は変わらなかった。そうしているうちに、ふと、とある一点に九尾の意識は吸い寄せられた。
 それは、硝子玉のように感情を映さない碧い目だった。

 ……なんという、目をするのだ。これほど暗い――いや、昏い闇を抱え込み、なぜ人の子が生きていられる? 違うな。昏いからこそ、生きていられるというのか。

 これだけの闇を内包しているなら、ちっぽけな害意など届きはしない。いかなる感情――それが負と呼ばれる類であろうと本能は生きる力に変換する、そのことを九尾は知っていた。だから、

 ……闇でこれならば、光をあてたときどんな輝きを魅せる? 面白い、あの男とは真逆だが、負けずも劣らない原石だ。いいだろう、我の力を貸してやる。

 そんなことを考えたのは、自然な成り行きだったのかもしれない。数千年ぶりの屈辱に向上心が復活していたため、いずれ封印を解いたあかつきには餌となり糧になる少年を育てようなどという発想が浮かんだのだから。
 それから九尾は力を蓄え、今宵ようやく少年の夢に現れることができるようになった。 力の増す満月の夜、眠りについた少年に話しかけたのだが――。


 が。

「いらない」

『なっ、なにが不満だ? コントロールなら心配せずとも……』

「話はそれだけか? なら、オレは眠る」

 ナルトはつれなかった。


『ふっ……』

「……」

 九尾の声に、仁王立ちのまま眠りについた、ナルトの寝息。
 直後、波打つように空間が震えた。
 それは次第に激しくなっていき――。

『ふざっけるなぁ!』

 怒りの咆哮に、夢が耐えきれなくなり、パラパラと崩壊していく。
 せっかく節約し貯蓄した九尾のチャクラが、破壊の力になって暴れ狂う。
 そのぐらい、プライド高い九尾には許しがたい態度だったらしい。

『我は九尾の妖狐だっ! 妖狐の長だっ! キサマに拒否権はない! 黙って、我に従っておれ! 人の子が、我に嘗めた口をきくでないわっ!!』

 わめき散らす謎の声――九尾を、目を開いたナルトが冷ややかに見据えていた。姿見えずとも、これだけ暴れると核ぐらいはわかってくる。
 力の本流は直撃こそしていないもの、その余波は服をはためかせ髪をかき乱している。しかし、それでもナルトは無表情のまま昏い目で見ているだけで、なにもしない。

『力を受け入れろ! なーに、ちょっと力加減間違えて、周囲の者を殺すだけの殺人ドールになるかもしれんがな! ははは、我の言うことを聞かぬ人の子が悪いのだ!!』

 なんというか。
 交渉とか、説得とか、契約とか。当初の予定など忘れ、狂ったように吠える九尾は哀れだった。
 そんなことしてナルトが殺されたら自分も滅ぶとか。そもそも封印されていては強制力ないから悪魔っぽく堕落を誘ったとか。そういったことは頭に残っていそうになく、なんかもう重度のジャンキーっぽい。
 世界の崩壊を加速させる、甲高い喚き声は聞けたものではなく。
 さすがに目障りになったのか、ナルトが動きだした。


「オレは、眠ると言った」

 初期の声変わりを終えたばかりのナルトは、普段より低く重い声で。

「邪魔するなら、罰する」

 静かに、宣告した。


「ははは、我を罰するだと!? 身のほど知らずが、身の程を知れ! 人の子ごときがつけあがるな!! 封じた張本人以外が、なにをできる!? はーはっは」

 確かに、狂ったが九尾の言い分ももっともだ。九尾側からならプレッシャーをかけるぐらいは可能だが、逆に、ナルトから九尾にできるのは漏れだしたチャクラを封印式を利用して吸収するぐらい。あとは、死ぬぞ、と脅かすくらいだろうか。
 しかし、それは普段の話。
 いつもとは違い、九尾からチャクラを消費してナルトの精神に入り込んできている。
 つまり――

「ここはオレの夢、なんでもあり」

『…………!』

 気付いていなかったのか。九尾の動揺は気配でバレバレだった。誤魔化すように、透明な尾にて大地を薙ぎ払おうとするが、どれだけ傷つけられようと地形は元通りになっていく。ナルトの言う通り、不可能はないのかもしれない。
 ――精神世界、恐るべき。

「それに、オレに出来ぬというなら、おまえの天敵を呼ぶまで」

『天敵? 天敵だと――はー、はっは、笑わせてくれる。妖狐に天敵などおらぬわ、食物連鎖の頂点にたつのが妖狐よ!』

 これは事実だ。妖魔に生態系がどうこうというのは畑違い。けれど、これも現実世界での話。
 ここは夢。だからナルトが一言、

「蚤の刑」

 と告げるなり、虚空から黒い霧のようなものが湧きだした。それは、地を這うように流れていき、核のあった付近に集まっていく。暴風のような力に幾度も阻まれるが、その度に際限なく増えていき、徐々に見えない九尾にとりついた個体も増えていく。




 一分後。

『ギャァァァァァァァァァァァ!』

「…………」

 尻尾を踏ん付けられた猫より悲痛な断末魔が響いていたが、耳栓をイメージし具現化させて寝付いたナルトには届かなかったという。




 うずまきナルト、十一歳。
 昏い闇の申し子ながら、里に復讐するほどの興味も抱かぬ子供なり。
 これ、どういう物語になるか。
 いまだ作者にもわからず。
 先行きは一寸先の闇にある。




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